添乗員「みなし労働時間」裁判
東京高等裁判所の判決文報告その1
判決文全文はこちら(PDF)
http://www.toburoso.org/9.14hanketu.pdf
月14日東京高等裁判所判決(阪急トラベルサポート残業代請求事件)
判決文(要旨)報告その1
東京高等裁判所の判断
1、事業場外みなし労働時間(労基法38条の2)適用について
「パンフレット、最終日程表、指示書、添乗日報、ツアー初日の会社へのモーニングコール等の客観的な状況がある事から、<社会通念上、添乗業務は指示書による阪急交通社の指揮監督の下で行われるもので、控訴人は、阪急交通社の指示による行程を記録した添乗日報の記載を補充的に利用して、添乗員の労働時間を算定することが可能であると認められ、添乗業務は、その労働時間を算定し難い業務には当たらないと解するのが相当である>」
「<(会社は)添乗業務について航空機の機内、バス車内、列車車内、自由行動中の時間等、行程中には多くの非労働時間が含まれていることを根拠に、添乗業務が労働時間を算定し難いものであると主張するが、後記のとおり、国内旅行における乗り物による移動時間(ただし、フェリーでの船中泊がある場合を除く。)、自由行動等に非労働時間が含まれていると認めることはできない。>」
「<労基法32条の労働時間は、労働者が使用者(阪急交通社)の指揮命令下に置かれている時間をいい(最高裁平成12年3月9日判決)、添乗員が具体的業務を行うこととされていない時間であっても、それだけでは使用者の指揮命令から離脱しているということはできず、当該時間に労働からの解放が保障されていない場合には労基法上の労働時間に当たるというべきである。>」
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日本の全ての旅行業界、添乗員派遣業界は、添乗員に対して一日14時間、15時間もの超長時間労働を要求しながら、一方で添乗員の仕事は「事業場外みなし労働」だと強弁し、残業代支払いを拒み続けていました。また、雇用保険・健康保険・厚生年金への加入もなく、有給休暇や週一日の休日割増手当や夜10時以降の深夜労働への割増賃金すら払ってこなかったのです。
2007年、阪急トラベルサポートなど多くの添乗員が声をあげはじめ、ついに全国一般東京東部労組阪急トラベルサポート(HTS)支部を結成し闘いがスタートしました。
雇用保険、社会保険の加入、有給休暇の取得、週一休日の割増賃金、深夜労働手当の支給等々添乗員の労働条件は大きく改善されました。
しかし、全国の添乗員が切に求めていた超長時間労働からの解放、欺瞞的「みなし労働時間制」の中止については、労基署の勧告指導にも従わずに、ついに裁判で争われています。
今年、9月14日、東京高等裁判所は上に報告したように明々白々に会社の主張する「みなし労働時間」を真っ向から否定する判決を下しました。
東京高裁は「添乗員の労働時間を算定することが可能であると認められ、添乗業務は、その労働時間を算定し難い業務には当たらない」とはっきりと断定しています。
この判決がもたらす影響は想像以上に大きいものがあります。この判決文には、海外添乗員について指摘している箇所も何か所もあり、全国の国内添乗員は勿論、海外添乗員にも当然当てはまる内容です。
全ての旅行会社と添乗員派遣会社は、今までの添乗員に対する過酷な超長時間労働と残業代未払いを猛反省しなければなりません。
全ての添乗員の超長時間労働を改善すべきです。また残業代を全添乗員に支払うべきです。
(続く)
関東では組合で頑張ってるようですが、地方はまだまだ、会社のいいなりになってます。
地方でもなんとかならないもんでしょうかね?
フランスの労働法では、この事故は通勤災害でなく、労働災害になります。これまで、日本の旅行業に関してフランスでも、日本の労働慣行に準じて「みなし労働時間」による労働時間設定がなされていましたが、人一人の命が理不尽に奪われて、今年の夏、初めて「正確な労働時間管理」の重要さが問われ、フランス現地係員全体が「みなし労働時間」に疑問を抱くに至りました。
私達は2007年にこのサイトで紹介された「へとへとツアコン蜂起」「添乗員の1日あたり平均労働時間」等の記事を見て、2千年代に入って、添乗員の過重労働と平行して、私達現地係員の仕事減少、賃金を含む労働条件の劣悪化に至る理由を知りました。朝日新聞「へとへとツアコン蜂起」記事の中にもありましたが原因は「旅行商品の価格競争」。
ツアー不適切地域のホテル使用増加も然る事ながら、添乗員をはじめ旅行係員の人件費削減 全ては泥沼の価格競争にあると思います。旅行会社の労添乗員をはじめ旅行係り員全体の働時間管理義務は、すなわち旅行係り員の健康安全管理であり、係員の健康安全管理が無視されたツアーは、「ツアーに参加する日本の消費者の安全管理も確保されていない」と、いう事だと思います。
今回の貴重な判決を業界全体に有効に浸透させるのは、上記コメントの地方添乗員さんを含め私達自身の役割だと思います。