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添乗員「偽装みなし労働」の是非を問う残業代請求裁判第1・2陣訴訟の証人尋問

2010年05月13日 13時13分08秒 | 添乗員・旅行業界

(上の写真=5/1メーデーでデモ行進するHTS支部添乗員ら)

添乗員「偽装みなし労働」の是非を問う残業代請求裁判第1・2陣訴訟の証人尋問

 1日15時間、16時間という超長時間労働の原因である「偽装みなし労働時間制」撤廃を求める東部労組阪急トラベルサポート(HTS)支部の残業代請求<1・2陣>裁判の支部側添乗員3名と会社側の細野課長の計4名の証人尋問が、5月12日に東京地裁606法廷で行われました。午前10時30分から午後5時すぎまで丸一日かけての集中尋問でした。多くの支援が傍聴にかけつけてくださいました。

  前日には同「偽装みなし労働時間制」第3陣訴訟の完全勝利判決もあり、今まで旅行業界が行ってきた「添乗業務は事業場外みなし労働=労働時間にかかわらず、残業代は支払わなくてよい」という主張が根本から覆りつつあります。

  今回の<1・2陣訴訟>では、支部側添乗員3人(江口さん、大島さん、塩田さん)が証言にたちました。
  3人は、1、経歴・勤務歴。2、添乗員業務の実態。3、労働時間の管理・把握が可能であること。4、労働時間の算定の根拠。5、始業・終業時間の確認方法等々を具体的資料をもとに立証しました。

  3人はそれぞれ、「パンフレット」「添乗マニュアル」「アイテナリィ」「指示書」「業務日報」「携帯電話の貸与」「モーニングコール」等の客観的事実や資料を提示しつつ
○いかに添乗員の仕事が超長時間労働であるか。
○飛行機機内・バス内・列車内でも拘束されている。機内やバス内では「労働から解放されている」とは到底言えない。
○「海外添乗マニュアル」にもバス内では寝るな、ドライバーへ注意と書いてある。
○添乗員には実際の休憩時間などない。
○旅行日程や行程を添乗員だけの判断で変更することなどできない。
○(細野課長が添乗員だけの判断で旅程を変更できると証言したことについて)有り得ない。特にイタリアでは違法ガイドは許されていないから、翌日のガイドの手配など考えるとできない。
○会社が添乗員の労働時間を管理・把握することは絶対に可能である。
○国内ツアーについて、昨日「東京地裁11部が労働時間管理は可能」との判決がでたが、海外ツアーも全く同じである。
○携帯電話で連絡・報告・指示を受けていることは国内・海外同様。
○マニュアル・アイテナリィ・最終日程表等で業務指示を受けていることも国内・海外同じ。
○場所の確認もGPS機能のある携帯電話を支給すれば簡単にできる。
○労働基準監督署も二度の是正勧告で、国内も海外も労働時間管理はできる。みなし労働適用はだめとしている。
等々を証言しました。

会社側伊藤弁護士のひんしゅくを買った反対尋問
 会社側伊藤弁護士の反対尋問は、「海外のバスの中で添乗員はそんなにしゃべる必要はないのでは」とか「機内で目をつぶっているとは眠っていることか」とか「ホテル帰着後の各部屋への電話確認は一部屋何分かかるか」など傍聴席からの失笑を買うものでした。

  呆れたのは、支部組合員を誹謗する匿名の添乗員(なんと卑劣な方でしょう)からの手紙と田中元支店長宛てに届いたメール(田中元支店長のアドレスを知っている者)を証拠として提出し、「あなたは誰かに恨まれているのか」「このメールによるとあなたは機内でゲームをしていた」等の質問をしてきました。匿名の手紙やメールが裁判でのまともな証拠になどなる訳がありません。傍聴席は会社の余りにも品性下劣・卑怯卑劣なやり方にざわめきました。しかし、すかさず裁判長は伊藤弁護士に向かって中止させたのです。

  匿名者からの一組合員を誹謗する手紙やメールを平気で裁判所への証拠として提出し、それをもとに反対尋問をしてくるこういう会社は今後ますます社会からのひんしゅくを買うことに何故気がつかないのでしょう。

会社側の細野課長証言と反対尋問
 細野課長は、「添乗マニュアル」「アイテナリィ」「指示書」はあくまで「アドバイス」であり、その通りやる必要はない。ツアー中は、添乗員の自由裁量は大幅に認められている。また、添乗員は飛行機内でも特にすることはない。バス内でもお客に断れば添乗員が寝てても問題はない。ホテル到着後も実際お客の各部屋の訪問をやっている添乗員は少ない。ツアー中に阪急交通社に連絡をとることはそんなにない。

 国内日帰りツアーは、三田労基署から何度も指摘されたので、処分されるのではと、いたしかたなく自己申告で支払っている。

 労働時間の自己申告は信用できない。過大・過小に申告する添乗員がいる。正直者が損をする。だから自己申告では労働時間の管理・算定はできない。みなし労働を適用すべきである。
という趣旨の証言をくりかえしました。

  しかし、組合側弁護士からの下の反対尋問
○みなし労働に賛成しているサービス連合の2組ですらビラの中で、「連日11時間。大変危険だ」「朝5時・6時の出発」「13時間600キロ」「疲労困ぱい」等添乗員の長時間労働を指摘し、過酷な実態を自ら認めているではないか。
○就業条件明示書に「時間外勤務なし」と記載されていること。
○就業規則に「みなし労働」の規定がないこと。
○むしろ就業規則には、週40時間制とか時間外や休日労働割増賃金について記載があること。
○1時間の休憩は与えているというが、何時のどこでとれと指示しているのか。「仕事から離れられる」ことを保障しているのか。
○あらかじめ12時間を超えるツアーを企画しているではないか。
○バンフレットにホテル着24時。朝5時30分出発と記載。「8時から20時まで」の枠を最初から超えているではないか。
等の反対尋問には細野課長はほとんどまともな反論はできませんでした。

  裁判長も細野課長に対して、
○就業規則には日曜が休日とあるがツアー中実際は守られているのか。
○就業条件明示書「8時から20時まで」と記載しているが、それ以外の時間は働かなくてもいいのか。
○「休日勤務なし」とはどういうことか。
○「みなし労働時間制度」そのものへの概念を以前から認識していたか。
○アイテナリィ通りやるのが原則なのではないか。
等の厳しい質問がありましたが、細野課長はまともには答えられませんでした。

 裁判の今後の進行は、いよいよ最終段階に入りました。今後とも皆様のご支援・ご声援をお願い申しあげます。

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10 コメント

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Unknown (Unknown)
2010-05-13 16:12:15
マ、マニュアルはアドバイスだったんですかっ!!驚きの発言!

飛行機に乗ったらすぐにグースカ。お客さんに声かけられても無視。バスに乗って人数数えたらすぐにグースカ。トイレ休憩の3秒前に起きるか。列車に乗ってグースカ、グースカ。。。

あと、自己申告だと正直者が損をするって理論は解せない。正直者が損をしてはいけない、だから残業代は払いませんってことですか?
ずっと正直に働いてきたのにな。
返信する
Unknown (Unknown)
2010-05-14 00:33:11
添乗前に自宅で行う準備、資料作成などに多くの時間を費やします(特に新しいディスティネーションや久しぶりの時)。
文房具、OA機器などにもコストがかかります。
時々むなしくなります。
返信する
Unknown (Unknown)
2010-05-14 15:27:36
逆じゃないでしょうか?正直者が損をしないように、会社が管理するようにしたらいいのでは?ここでも、会社は何もする気がないように?聞こえます。それに、正直でないものを優遇してきたような歴史もあったんではないですか...この会社のやり方...
返信する
Unknown (Unknown)
2010-05-14 16:39:16
正直者だけが損をしないように、みんな平等に損をさせてあげるってこと。
すごい理屈ですね。
労基署にも従わなかった阪急だから、法にも背くつもりでしょう。もうすっかりわかってしまった阪急さんの習性が。
きっと控訴しますね。
返信する
Unknown (Unknown)
2010-05-15 06:56:55
法律に背いて、どこまで行けるんでしょうか??急に興味が湧いてきました。一旅行者です。時々、このブログ覗いていましたが。
返信する
伊藤弁護士の無知さ加減に驚かされた (Unknown)
2010-05-15 11:20:13
ブログ「憂う!旅・添乗・人」より
http://intouch.blog56.fc2.com/

「わたしは、一部分であるが傍聴させてもらった。 前日は、派遣添乗員(東部労組)側の全面勝訴だった。とはいえ、当日の法廷内は、緊張感がみなぎっていた。
 わたしは初めて傍聴した。その印象は、東部労組のブログに何度も登場してくる阪急トラベルサポート側の伊藤弁護士の無知さ加減に驚かされたことだ。裁判の手法上、わざとあのような無知さ加減を押し出しているのかもしれないが、それにしても、この人は、はたしてパックツアーというものに参加したことがあるのだろうか?とくに、阪急トラピックスのツアーに一般的なお客様として参加したことがあるのか?という大きな疑念がわいた。
 あと、もうひとつ、このような法廷をふくめ、多くの主戦場で戦っておられるこの派遣添乗員たちの心労は、ほんとうに大変なものだろうということだ。弁論術に長けた弁護士を相手にするには、ただ正直に真実を話すだけではけっして勝利は勝ち取れない気がしてくる。言葉の揚げ足取りのように、添乗員同士の正誤性のみを細かくついてくる弁護士に、コンピューターではない添乗員はどのように立ち向かえばいいのか?(コンピューターのように正確で無機質な人間は添乗員になれない=一番確かな方法は、伊藤弁護士に阪急トラピックスの添乗をしていただいたらどうだ)。


 伊藤弁護士は、添乗員の江口氏への反対尋問で以下のようなことばかり聞いていた。
添乗員の始業時間は集合時間の何分前なのか?終業時間は最終目的地到着後何分後なのか?とか、それが、誰々さんと5分間違うのはどうしてか?、それは会社から指示されているのか?ホテルのチェックインは何分かかるのか?部屋回りは何分かかるのか?食事時間は何分だ?・・・・・・・・傍聴しながら、なんでこんな茶番なことばかり聞くのだろうか!と不思議に思った。あなたの受けた司法試験とは違うんですよ!と言いたくなった。時間がきたらストップ!というわけにはいかないんですよ!と。出題を解けるまで帰れないのが添乗なんですよ!と。江口添乗員が何度も親切に応えていたように、その出題をもっとも早く解いた者の時間を敢えて選んで始業時間等と述べさせていただいているんですよ、と。だからこそ、江口氏は、あなたの「それでは個人としてはどこまでを添乗業務時間と考えるのですか?」という問いに、はっきりと、「24時間すべてです!」と応じたのではないですか!

伊藤弁護士のあせりは、傍聴席へ手に取るように伝わってきた。
その一発逆転を狙ったのか?国内添乗の始業時間を江口氏へ質問したときには力が入っていた。
「そういう時間は誰が決めているのですか?」
「わたしの経験から判断してます」と、江口氏が自分は海外添乗で採用になったので国内添乗のマニュアルはもらっていないのだ、と聞くやいなや、我が意を得たりと、「それはおかしいじゃないですか!自分で判断していいんですか!マニュアルがなければ、なぜ下さいと言わなかったのですか!」
マニュアルなしで添乗したことが、添乗員が、まるで、好き勝手に添乗をしている!とでも言う様子であった。」


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Unknown (一般人K)
2010-05-15 19:29:55
第1・2陣の証人尋問の傍聴に参加しました。

添乗員でも(阪急)社員でもない第3者の立場を活用し、
内容によっては組合員の方々を敵に回してでも原告側の問題点を
指摘する事もいとわない意思で傍聴し、今後の自分の為に役立てればと思っていました。

正直な感想。
一部(蟹江弁護士の反証での着目の仕方が自分の仕事柄)参考になった以外は
「被告側の粗が目立ちすぎてがっかりした」です。

(あくまで第3者である部外者視点での感想です。)

ここまで裁判を長引かせて、第3陣判決に対しては控訴の意思をメディアにて示している以上、
当方のような第3者を納得させる事項を提示してくるのかと思いきやそうでもない。
要点は既に書かれているので個人的な抜粋。
始業・就業時間についての反証。
最低時間を使って根拠を示したのに対し、特定の人の特定ツアーを取り出して
「同じ作業で時間が違うのは~」
静かにしてないといけない傍聴人でありながら不覚にも声に出して笑ってしまい
裁判長に注意を受けてしまいました。
「角度を変えて質問します。」と言いながら、目をつぶるのは眠っているかとか
一部屋電話するのに何分かかるかとか。
角度変えるどころか視点も論点も踏み外している。
匿名メールを証拠にした事も、こんなんどこぞの裁判ゲームの中でだって
恥ずかしくて証拠になんかしないと笑いをこらえて腹筋を痛めました。

被告側の証言については、言いたい事は反対尋問と裁判長の指摘・質問
にて挙げられておりますので割愛するとして。
それと、「残業代請求裁判」で「インタビューに答えただけで解雇扱いされた問題」の件を
証人尋問で取り上げた神経が納得いきません。
第3者から見れば「私(被告)は被害者です」的な下手な演出にしか取れませんでした。

100歩譲って仮に被告側の言い分が全て事実だとするなら、
私は客として阪急交通社が企画するツアーには安心して参加できないと思いました。
被告証人は添乗経験者との事ですが、この人が
「”今の”ツアー内容」で「”今の”旅行客が添乗員に求めるスキル」で
添乗業務をこなす事は確実に不可能と考えます。
でなければ、あんな証言はできない。

証人尋問中に書き留めたノートと記憶を頼りに書き綴り、
心無い人からは「第3者とか言いながら結局原告寄りじゃないか」という
指摘が来そうな感想になりましたが、

 「傍聴すればわかる」

それだけです。
今回の証人尋問と同等のレベルで第3陣の裁判が進行していたのならば
第3陣の判決は、私から見れば
 「極めて当たり前の判決。判決内容もこれでさえ”甘い”。」
と感じました。

今回は運良く休暇中だった事での傍聴で、次の機会は難しいと思いますが、
引き続き、第3者視点で裁判の行方を注目させて頂きます。


追記。
第3者視点で傍聴する旨を支援者代表(?)の方に示した上でも
当方を歓迎して下さった所に、正しい事をしているという強い意志を感じました。

返信する
Unknown (Unknown)
2010-05-16 19:16:19
これで国内の仕事の残業代は支払わねばならない事とはなったが、私は、みなしだから?残業代は要りません、にサインさせられている。これは、どうなるんでしょう?
返信する
↑の方へ (本部スタッフ)
2010-05-16 19:58:09
↑の方へ
労基法や裁判判決に違反・抵触する「協定」や「契約」は労働者がサインしたとしても無効となります。

しかし、会社は、違法状態を承知で「みなし労働時間制」を強行しつづけています(「労基署から何か処分されるのではと、いたしかたなく国内日帰りだけ時間管理にして残業代を払うようにした」と労基署からの処分を避けるためだけの手段を平気で行い、処分されないと知るや他の国内・海外宿泊は違法と知っていても堂々と無視)から、よけい悪質と言えます。
返信する
公的機関の「労働政策研究・研修機構」 (本部スタッフ)
2010-05-17 10:37:33
公的機関の「労働政策研究・研修機構」のメールマガジン
http://www.jil.go.jp/kokunai/mm/list/mm20100514.htm
の[判例命令]で
「添乗員にみなし労働不適用/残業代全額の支払いを命令」を取り上げています。
http://www.jil.go.jp/kokunai/mm/hanrei/20100514.htm
返信する

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