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「アンナ・パウロワの白鳥」 小山内薫 (1922.10)

2012年03月25日 | バレエ 1 アンナ・パヴロワ 

 上の写真は、大正十一年十月一日発行の『演芸画報』 第九年 第十号 の口絵に掲載された。

  九月於帝国劇場公演◆舞踊◆瀕死の白鳥・記事参照   舞踊の天才アンナ・パヴロワ夫人の白鳥

 この号には、次の特集で3つの文がある。

  世界一の舞踊家アンナ・パヴロワ

  ・アンナ・パウロワの白鳥  小山内薫

 山田耕作が「名人パウロワ」と言つたのは当つてゐる。アンナ・パウロワは誠に名人である。一世紀に一人を期し難いほどの名人である。彼女のトオ・ダンスに至つては、全く天下無敵である。十年前に倫敦の寄席バレエスで、初めて舞台の上に彼女を見た時の驚異を、私はいまだに忘れる事が出来ない。併し、それは単に美の驚異であつた。印象は思ひの外稀薄で、もう今日では色の褪めた写真のやうになつてゐる。ニジンスキイの「フオオンの午後」や「ペトルシユカ」や「ダフニスとクロエ」などの印象の、いまだに強く鮮 あざや かなのとは比すべくもない。それはなぜか。アンナ・パヴロワは、形式の典雅に絶してはゐるが、霊の自由な飛躍に於いて、翼に力の足りぬところがあるからである。所詮パウロウの舞踊は修練を尽した、そして修練を超越した古典の舞踊である、型の舞踊である、或学派の舞踊である。
 サン・サアンの「白鳥」。これが彼女にとつては最も扱ひ好いものであつた。最も彼女の内に適したものであつた。実にこれには彼女の独自な力が現れてゐる。これは単に音楽の翻訳ではない。舞踊が音楽に働きかけ、音楽が舞踊に働きかけてゐる。ルビンスティンの「夜」になると、彼女はもう音楽に引きずられてゐる。エルヂのシムフォニィに一度手をつけたが、それは痛ましい失敗を見せた。
 彼女は天の成せる「名人」である。どんなむつかしい形式にもひるむ事のない「名人」である。併し、形式の奥に潜む奔放自在な霊の力に於いて、彼女は弱い。所詮、アンナ・パヴロワは「女」である。 (口絵参照)

  ・パヴロワ夫人の印象    永田龍雄

     

     アンナ・パウロワ           パウロアの「瀕死の白鳥」

  ・名人パヴロアの踊る第一夜 香夢生



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