蔵書目録

明治・大正・昭和:音楽、演劇、舞踊、軍事、医学、教習、中共、文化大革命、目録:蓄音器、風琴、煙火、音譜、絵葉書

『ANNA PAVLOWA 上演舞踊劇 梗概 』 帝国劇場 (1922.9)

2020年07月02日 | バレエ 1 アンナ・パヴロワ 

   

 ANNA PAVLOWA 
 上演舞踊劇 梗概

  大正十一年九月十日より二十九日まで
      毎夜八時開演

      丸の内
    帝國劇場

 パヴロワ夫人について

 全世界に於ける唯一最大の舞踊のスターでありますアンナ・パウロワ夫人の東洋行は本當にワンダフルで御座います。パウロワ夫人は私の最も親しい友達、と申し上げますより寧ろ畏友として尊敬してゐる方なのです。どうぞ母國の皆さま、此の比類なき名手の藝術をお見逃しにならぬやう環は心よりお願ひ申上ます。さて私は、當ハワイのコンサートを了へてアメリカの各地を廻り、ベノスアイレス及びレオデヂヤネーロへ参ります、其後のことはアーテストの悲しさ一寸見當もつき兼ねますが、一日も早く蝶々の羽をなつかしい日本の土地で休ませて戴きたくて希て居りまする。しかし、私そのものであります鷲印レコードも御座いますことですから、帰りまするまで私吹込みの鷲印レコードを可愛がつて下さいませ。
  終りに、パウロワ舞踊会の成功と、日本の皆様の健康を祈ります。

     一九二二年八月十五日 ホノルヽにて 三浦環
                         しるす

 □注意 三浦環女史吹込の三十三間堂(柳)はアメリカからも最近註文が殺到してまゐりました。

〔口絵写真〕

 ・Snowflakes      六つの花
 ・Alexandre Volinine  アレキサンダア・ヴオリイニン氏 〔上の写真:左から2枚目〕
 ・Dying Swan     瀕死の白鳥 〔同 3枚目〕    
 ・Bacchanal      醼樂の人
 ・La Peri        仙女
 ・The Dragon Fly    蜻蛉 
 ・Snowflakes     六つの花
 ・Fauns        牧神
 ・A Mexican Dance   墨國舞踊、A Greek Dance 希臘舞踊
 ・Snowflakes     六つの花 〔三葉〕
 ・The Dragon Fly    蜻蛉、A Little Russian Dance 露國民謡、Californian Poppy カルフオルニアの罌粟
 ・Orpheus & others  オルフオイス其他

 ▲パヴロワ夫人露國舞踊劇 一座 〔技芸員 音楽指揮 等の人名表〕

  舞踊小品目録    

  パヴロワ夫人獨演舞踊

    瀕死の白鳥           ‥‥‥ サンサン     作曲
    ゼ、ドラゴン、フライ(蜻蛉)  ‥‥‥ クライスラー   作曲
    カルホルニヤの罌栗       ‥‥‥ チヤイコウスキー 作曲
    夜               ‥‥‥ ルービンスタイン 作曲
    ロンド             ‥‥‥ ベトーヴェン、クライスラー 作曲
    萎み行く薔薇          ‥‥‥ チヤイコウスキー 作曲
    舞踏              ‥‥‥ クライスラー   作曲

  パヴロワ女史 ヴオリニン氏 二人舞踊 

    悲調なるウオルツ        ‥‥‥ シベリウス    作曲
    ガヴオツト、パヴロワ      ‥‥‥ リンケ      作曲
    バツキヤナル          ‥‥‥ グラヅノフ    作曲
    ウオルツ、カプリス       ‥‥‥ ルービンスタイン 作曲
    クリスマス           ‥‥‥ チヤイコウスキー 作曲
    二人舞踊            ‥‥‥ 同上
    時の経過            ‥‥‥ ポンキエリ    作曲

  ヴオリニン獨演舞踊

    ピエロツト           ‥‥‥ ドウボルシヤツク 作曲
    シムバルの舞踊         ‥‥‥ グウノー     作曲
    弓と矢             ‥‥‥ チヤイコウスキー 作曲

  座員の舞踊

    勾牙利のラプソヂー       ‥‥‥ リスト      作曲
    マヅルカ            ‥‥‥ グリンカ     作曲
    オーベルタス          ‥‥‥ レワンドウスキー 作曲
    希臘舞踊            ‥‥‥ ブラームス    作曲
    ゴパク             ‥‥‥ セロフ      作曲
    幻影              ‥‥‥ ベルリオツ    作曲
    ピヂカトー           ‥‥‥ ドリゴ      作曲
    センチメンタルなウオルツ    ‥‥‥ シユーベルト   作曲
    音樂的な瞬間          ‥‥‥ 同上
    牧踊              ‥‥‥ シユトラウス   作曲
    ツアルダヅ(勾牙利舞踊)    ‥‥‥ グロツスマン   作曲
    三人舞踊            ‥‥‥ シユトラウス   作曲
    アニトラの舞踊         ‥‥‥ グリーク     作曲
    和蘭舞踊            ‥‥‥ 同上
    ミニユエツト          ‥‥‥ パダレウスキー  作曲
    シーン、ダンサント       ‥‥‥ ボツケリーニー  作曲
    アン、スールダン        ‥‥‥ テラム      作曲
    春の聲             ‥‥‥ シユトラウス   作曲
    火の鳥             ‥‥‥ チヤイコウスキー 作曲
    ボヘミヤ舞踊          ‥‥‥ ミンクス     作曲
    藍色のダニユーブ        ‥‥‥ シユトラウス   作曲

 〔役割、梗概等〕

  

 上の写真は、当時発行の「時事絵葉書」のもので、下の説明がある。舞踊劇「アマリラ」の扮装と思われる。

   九月十日來朝の露國舞踊家アンナパブロワ嬢は帝劇に於て初公演をなし大喝采を博した(中央)パ嬢   (No.12) 

 舞踊劇 アマリラ   一幕

        グラヅノフ、ドリゴ  作曲
        イワ゛ン、クルスチン 振附
        ヂョルヂ、バルビエ  背景、衣裳考案
        マリー、ミユール   衣裳製作

    役割

  伯爵           ‥‥‥ ワ゛ジンスキー氏
  伯爵夫人         ‥‥‥ プツオーヴ嬢
  アマリラ(ジプシーの娘) ‥‥‥ パヴロワ夫人
  其兄           ‥‥‥ アレキサンダー、ヴオリニン氏
  ジプシーの長       ‥‥‥ ザレウスキー氏
  貴族夫人         ‥‥‥ スチユアート嬢
                  コールス嬢
                  シエフヰールド嬢
                  フリード嬢
                  レーグ嬢
                  ダラインド嬢
  貴族           ‥‥‥ ピアノウスキー氏
                  オリヱ゛ロフ氏
                  ドモスラウスキー氏
                  ニコロフ氏
                  アルゲラノフ氏
  ジプシーの娘       ‥‥‥ グリフヰス嬢
                  パートレツト嬢
                  ロヂヤース嬢
                  ニコルス嬢

    梗概

 パヴロワ女史が尤 もつと も愛好する舞踊劇で、夙 つと に米國で上演したものである。音樂はドリゴ、ダルゴミスキー、グラヅノフの合作で、此三氏は何れも有名な作曲家で、其音樂は專門的に高級なばかりでなく、其樣式が、批評的な音樂家は勿論、、普通好樂家にも等しく喜ばれて居ります。
 眞の戀と僞の戀とを綴り合せた誠に可憫 かれん な舞踊劇で、ある伯爵が農夫に身を扮 やつ して、ジプシーの娘のアマリラの愛を求めて、其心を動 うごか し、其儘 そのまゝ どこかへ姿を隠して了 しま ふ。
 幕が開くと、右の伯爵と今度結婚しやうといふ伯爵夫人家の後庭園遊會の體 てい で、ジプシー少女の一團が餘興に雇はれ、踊り乍ら入つて來る、アマリラは其中の女王で、彼女は自分を棄てた當の男が其處に居るとは気附かなかつたが、骨牌 かるた で伯爵夫人と其情人 をとこ との運命を判じる時に成つて、初めてそれと悟るやうになる。
 アマリラがそれと知つた時、又伯爵が最早や知らぬ他人だと思へといふ振 ふり をして見せる時の光景は、悲痛を極める、彼女の心は張り裂けるやうで、曾てはその腕に抱 いだ かれたことのある男の花嫁を喜 よろこ ばす爲に、自分は雇はれて踊を踊らなければ成らぬのであるが、強気 けなげ にも心の苦しさをヂツト耐 こら へる、伯爵と伯爵夫人とは、そんな事を心にもかけず、他のジプシーの踊るのを面白さうに眺めて居る。
 遂にアマリラも踊り初める、無情な男の再び自分に還ることもあらうかと、かすかな望を繋 つな いで居る其感情は甚しく昂奮し、何うかして男を取り戻さうと、最後の決死的な努力と、半ば恐しい捨鉢とを以て踊り廻る、けれども伯爵の心は石のやうで、その肚の中では、伯爵夫人の壮麗な邸宅と、宏大な地所とが、頓 やが て自分の物になるといふ事を、慾張つた頭脳 あたま で描いてゐるばかりである。
 足取をきめて、如何にも勿體振つた風で、伯爵は伯爵夫人を腕に縋 すが らせ、庭園から出て行くと、アマリラの仲間達も、亦貰つた黄金 こがね をチヤラゝ云はせて、踊りながら其處を立ち去る、アマリラはひとり後に殘つて、ぼんやりと立つて居る。果して男は歸つて來るであらうか?少くともその言ひ分けに、切 せ めて哀れみの一と言は懸けに來るであらう、又それを吝 をし む程、無情であらう筈がないと思つ斯 か くするうちに男が歸つて來た、女は嬉しさに跳び立つて、手を擴げて駈け寄ると、男は冷 ひやゝ かに金の財布を差出すばかりである。茲に至つて、アマリラは初めて、男が自分を土塊 つちくれ とも思つては居らぬ事を覺 さと り、男の徐 しづか に歩み去つた後、庭の腰掛けの上へ踉蹌 よろめ き倒れ、此世の樂しみが永久に去つた人の如くに、気を失つて倒れて了 しま ふ。
 アマリラの事は、昔のジプシー民謡に據つて作したものである。
 
 舞踊  シヨピニアナ 一幕
 舞踊劇 コツペリア  一幕

        デリベ 作曲

    役割

  スワルニダ        ‥‥‥ ブッオーワ゛嬢
  フランツ         ‥‥‥ ピアノウスキー氏
  コツペリアス       ‥‥‥ ザレウスキー氏
  スワルニダの友達     ‥‥‥ グリフヰス嬢
                  バートレツト嬢
                  ロヂヤース嬢
                  イグネス嬢
  マヅルカ舞踏       ‥‥‥ 座員
  匈牙利民踊
  シームス、スレーヴス   ‥‥‥ ブッオーワ゛嬢
                  ピアノウスキー氏
                  スワルニダの友達
  幕間のギヤロツプ     ‥‥‥ ブッオーワ゛嬢
                   外 座員
     音樂指揮      ‥‥‥ セオドール、スタイアー氏

    梗概 

 ガリシアの國境のある美しい町に、機械人形を造つて居るコツペリアスと云ふ老人が住んで居た、世間からは彼の娘と思はれて居たコツペリアは實は精巧を極めた人形で、非常に嚴重に閉ぢ込めてあるので、その見分けがつかず隣人の好奇心は、ひどくそゝられた。毎朝コツペリアの姿は同じ態度で、同じ窓際に現はれ、而 そ して又見えなくなる、然し決して此不思議な住居 すまゐ の外へは出ぬ、何人も其聲を聞いた事がない、其美しさは多くの若い人の心を引き付け、一人ならず、二人三人もが、家 うち へ入らうとしたが、戸や格子がいつも嚴重に鎖 とざ されて居て、到底入る事が出來なかつた。
 つい近所に住むスワニルダと云ふ奇麗が娘は、自分の許嫁 いひなづけ であるフランツが、コツペリアの容色に對して、満更でもないやうに見えるのは、確かに気のある事に相違ないと考へ、疑ひ深くも窓の無言の姿を眺めては、其注意を引かうとしたが、それは無用な事で、コツペリアの眼はいつもの通り、頁 ページ を返さずに、持つて居る本を瞶 みつ めて居るばかりである、そこへ又他の窓の處へコツペリアス老人が出て來たので、スワルニダは急いで隠れて了 しま つた、而してその隠れたところから、フランツが家に近寄つて、コツペリアに挨拶すると、コツペリアは窓に現はれ、返禮するのを見た、コツペリアス老人は面白半分にフランツの此態度を眺めたが、スワルニダは大いに腹を立てゝ、若い戀人同志は喧嘩を始め、スワルニダは最早フランツを愛さなくなる。
 間もなく、ところ領主が此町へ鐘を寄進するについて其 その お祭が行はれ、町長はスハルニダに、此際殿様は數組の人々に對し、結婚を許し、同時に嫁入金をも下さる思召である事を話し、フランツと二人して早く、その旨を願ひ出たが宜しからうと言つて呉れる、然しスワルニダはさも忌々 いまゝ しげに、戀人の薄情を現はすやうな昔話をして、フランツに當て付けるので、フランツは怒つて其場を立去り、スワルニダは日が暮れるまで踊つてやらうとあとへ殘る。さて、騒ぎ家連中に別れを告げて立ち去らうとする時、圖 はか らずもコツペリアスが落として行つた鍵を見付け、これ幸ひと娘達を連れ、室内に入つて見ると、今迄娘だとばかり思つて居た、コツペリアが人形であるのを發見して吃驚 びつくり する。

 舞踊劇 六つの花   一幕
 舞踊劇 花の眼覺め  一幕
 舞踊劇 魔笛     一幕
 舞踊劇 秋の木の葉  一幕
 舞踊劇 波蘭土舞踊  一幕
 舞踊  メキシコ民謡 一幕
 舞踊劇 眠れる皇女  一幕
 舞踊劇 魔の池    一幕

 〔英文の梗概等〕

 大正十一年九月十日發行 (定價五拾銭)

  

 上の写真は、当時発行された時事絵葉書のもので,下の説明がある。

  九月来朝帝劇に開演すべき世界的名舞踊家アンナ、パブロバー嬢の素顔と有名なる十八番ペーテロの扮装 (No.9)



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