第一回 帝国音楽学校演奏会
六月十四日(火)午後七時 於 神宮外苑 日本青年館
主催 帝国音楽学校
PROGRAMME
ーⅠー
1.CHORUS(合唱) … 全校生徒 指揮 小松平五郎教授
2.VIOLIN SOLO(ヴァイオリン独奏) … 本科二年 片山 アリス ピアノ伴奏 選科 片山淑子
(ヴァイオリン協奏曲) (ダヴイド作曲)
3.SOPRANO SOLO(ソプラノ独唱) … 小原威子助教授 ピアノ伴奏 江藤輝助教授
a. (あゝ、そはかの人か) (「椿姫」より)
b.(花より花に) (ヴエルデイ作曲)
4.PIANO SOLO(ピアノ独奏) … 江藤支那子助教授
(ロンド 作品十六番) (シヨパン作曲)
5.QUINTET(五重唱) … 卒業生 井上ケイ 本科三年 黒田多嘉子 〃 室井美津枝 ウマール教授門下生 森治 長崎康二
(オペラ「魔笛」より) (モーツアルト) 絃楽オーケストラ伴奏 指揮 菅原明朗教授
ーⅡー
6.a. DUET FOR VIOLIN AND PIANO(ヴァイオリンとピアノの二重奏) … モギレウスキー教授 ロイヒテンベルヒ教授
(古式による組曲) (マツクス・レガー作曲)
b. VIOLIN SOLO(ヴァイオリン独奏)… モギレウスキー教授 ピアノ伴奏 ロイヒテンベルヒ教授
(1)(「おゝ神よ與へ給へ」「テデウム」よりの祷り) (ヘンデル作曲)
(2)(ロンド) (モーツアルト作曲・クライスラー編)
ーⅢー
7.STRING ORCHESTRA(絃楽合奏) 指揮 モギレウスキー教授 鈴木鎭一教授外三十余名
a. (大協奏曲・第十番ニ短調) (ヘンデル作)
b. (悲しき旋律) (グリーク作曲)
8.PIANO SOLO(ピアノ独奏) … 屬澄江助教授
a. (演奏会用練習曲 第三番 嬰ニ長調)(リスト作曲)
b. (泉の傍にて) (リスト作曲)
9.VIOLIN SOLO(ヴァイオリン独奏) … 選科 諏訪根自子 ピアノ伴奏 ロイヒテンベルヒ教授
a. (アンダルテイアの物語) (サラサーテ作曲)
b. (ペルペツーム・モビレ) (リース作曲)
10. TENOR SOLO(テノール独唱) … 太田黒養二教授 ピアノ伴奏 江藤輝助教授
a. (悲しき歌) (デパルク作曲)
b. (私は鳥ですー「グリセリデイス」より)(マスネー作曲)
11. PIANO DUO(ピアノ二重奏) … 第一ピアノ 黒川いさ子講師 第二ピアノ 笈田光吉教授
(幻想曲) (ラハマニノフ作曲)
(ブリュートナー・ピアノ使用)
入学案内 帝国音楽学校 詳細ハ郵券封入照会ノコト
位置 新宿駅ヨリ小田原急行電鉄ニテ約十二分、中原駅下車
科別 予科(一年以内) 本科(三ヶ年) 研究科、聴講科、選科
科目 器楽部(ピアノ、オルガン、ヴァイオリン、セロ)。声楽部及作曲部
予科 中学、高等女学校第四学年修了者又ハ之ト同等以上ノ学力アルト認ムル者並ニ小学校教員免許状ヲ有スルモノハ予科ニ入学ヲ許可ス
前項ノ資格ナキ者ト雖モ試験ノ結果特ニ才能アリト認ムルトキハ入学ヲ許可スル事アルベシ
予科在学中本科ヘ編入サルベキ程度迄進ミタル者ハ定期進級試験ノ外ニ担任教授ノ推薦ニ依リ臨時試験ノ上本科ヘ編入ス
入学試験 受験科目ハピアノ、オルガン、ヴァイオリン、セロ、声楽ノ内任意ノモノ一ツ、曲目随意
毎年定時入学試験(四月)ノ外ニ臨時補欠試験アリ
選科 年限ナシ、資格ヲ問ハズ無試験随時入学ヲ許可ス。ピアノ、オルガン、ヴァイオリン、セロ、声楽ノ内一科目又ハ二科目ヲ修ム
本校特色
ヴァイオリンノ世界的巨匠モギレウスキー教授ヲ始メ内外専門大家ヲ聘シ人格陶冶ト相俟チテ芸術的教養アル真ノ音楽家養成ニ努ム
専門科目ハ個人教授ニシテ一回三十分乃至一時間ニ及ブ
試験ハ総テ全教授立会ノ上之ヲ行フ
独立セル作曲部アリ、作曲専攻ノモノヲ特ニ指導ス
本校教員
ヴァイオリン アレキサンダー、モギレウスキー
鈴木鎭一
鈴木章
セロ 鈴木二三雄
ピアノ ナデジダ、ロイヒテベルヒ
笈田光吉
朴啓星
江藤輝
江藤支那子
屬澄江
黒川いさ子
花井吉三郎
声楽 アルフレッド、ウマール
太田黒養二
(休職) 平間文壽
小原威子
辻輝子
作曲及和声学 菅原明朗
管絃楽合唱指揮 小松平五郎
音楽教育及教授法 田村虎藏
音楽史、英語 野村光一
音楽理論 服部正
オルガン、音楽理論 李志傳
芸術思想史、英語 西村鎭彦
伊太利語、歌劇論 下位英一
国語 金原省吾
独逸語 鈴木鎭一
美学 麻生義輝
倫理 武田豊四郎
女子寄宿舎監 小原威子
東京市外世田ヶ谷町中原(小田原急行電車中原駅下車)
帝国音楽学校
上の入学案内は、上の演奏会プログラムと一緒に入手したもの。
上の募集広告は、昭和六年一月一日発行の『月刊樂譜』一月号にあるもの。なお、同号には、下の文も 音楽學校だより にある。
帝音通信 河邊生
新綠の色すがすがしい郊外世田ヶ谷中原の地に育まれ行く帝音の姿、それは丁度麗かな春光を浴び日一日と成長して行く木々の若葉の感がある。
参月末の卒業式後から四月の新學期開始迄僅か貳週日程の間に帝音の姿は随分と健な成長を續けた、先づ外面に表はれた姿としてはこの四月に吾等は七拾名(受験者總數八十九名)の新しき若き未來ある弟妹達を迎へ得た事である、現今の樣な世想の中に新生以後僅か半歳の歴史しか持たぬ我等帝音が以上の成績を羸ち得た事は確かに他に比して誇り得る何物かを持ってゐたからである。
今春の入學試験に表はれた面白い現象は受験者總數の過半数が絃樂部志望者であった事である。隨って受験者の質も一段と向上し中には現在樂壇からその存在を驚異的の眼でもって見られてゐる拾貳才の少女提琴家諏訪根自子嬢を始め、某音樂学校卒業生等々枚擧する遑 いとま がない程である。
殊に前述の諏訪根自子嬢の受験振の美事さには受験場に立會はれた内外貮拾數名の諸教授方も感歎久しくせられた。
受験曲目はあの有名な
メンデルスゾーンの協奏曲!!!
同曲の終るやモギレウスキー教授は同嬢の才能を認められ破格にも特に豫科在學中より自ら進んで同教授擔任のクラスに編入され壹週貮回親しく教授される事になった。
又菅原教授も同嬢が帝音卒業の暁にはフランス留学の意志あるを聞かれ特に同嬢の爲に時間を割きフランス音樂に對する講義及音樂理論を、野村教授は音樂史をそれぞれ特志をもって教授される事になった。
〔以下省略〕