■山稼ぎする人々
★猟師
山がどれほど広くとも、獣の通る道筋は限られており、その道筋の中で猟師が罠をしかけるポイントはさらに絞られてくる★炭焼き
炭焼きが山を買うときは、山を丸ごと購入するわけではない。立木を買うにすぎない。立木の樹齢、樹種、搬出の手間などが炭の価格を決定していく
山稼ぎをする人々の行動線や価値観に即して山を見ていくことを学ぼう。山と、どのように関わるかによって山の見え方がまったく違ってくる
■佐渡の外海府の村の山には三種類の境が引かれていた
★一つは各農家の所有山。その山境は代々家ごとに伝承されていた。
★一つは夏場は山中に牛を放牧する。耕地を牛から守るため、山腹に個々の所有を無視して柵を走らせ、そこから上手を放牧地とした。これは季節的なものだ
★一つはやがて世代が新しくなり、若い世代は放牧の柵から上を村の共有地として役場に登記した
形の上では【三種の境感覚】が成立した
■日常では【境】は明確に見てとれないが、ある状況、条件のもとに一斉に姿をあらわしてくる。山の権利はそうした一面を持っている。山間には次元の違う境や領域がいくつも存在している。時や状況に応じてしかそれらは現れてこないが、それだけにその規制力は強く、根の深い慣習として継承されてきた。それが人の行動に即して山を見ていかねばならない理由となる。なお、こうした分野については田口洋美のマタギについての著作を推薦しておきたい