■玄奘三蔵
月支に入って十九年が間
百三十国の寺塔を見聞し
多くの論師に会い奉りて
八万聖教・十二部経の淵底を
習い極めし
其の中に二宗あり
法相宗、三論宗なり
此の宗の心は
「仏教は機に随うべし
一乗の機のためには
三乗方便、一乗真実なり
いわゆる法華経なり
三乗の機のためには
一乗方便、三乗真実
深密教、勝まん経等なり
天台智者は此の旨をわきまえず
■法蔵法師という者あり
法相宗に天台宗を教わる
前に天台の時責められし華厳経を取り出して一代聖教の中には
華厳経第一
法華経第二
涅槃経第三
と立てけり
■善無畏三蔵・金剛智三蔵・不空三蔵
大日経
金剛頂経
蘇悉地経
を持って渡り真言宗を立つ
此の宗、教に二種あり
一には釈迦の顕教・華厳、法華等
二には大日の密教・大日経なり
法華経は顕教の第一なり
此の経は大日の密教に対すれば
極理は少し同じけれども
事相の印契と真言とは見えず
三密相応せざれば不了義経
■已上法相・華厳・真言の三宗
一同に天台法華宗を破れども
天台大師程の智人が
法華宗の中になかりけるかの間
内内はゆわれ無き由は存じけれども
天台の如く公場にして論ぜなければ
人民皆仏法に迷いて
衆生の得道みな止どまりける
【法相・華厳・真言に天台法華宗が破られたのだが、当時天台法華宗に天台程の智人がいなくて、破られるいわれはないと知りながら、天台のように公に論じないから人民は迷う】
此れらは像法の後半五百年の
前二百余年が内なり