よく分かる 住まいづくり・・(檀建築コンサルタント)

私達の考える住まいは、住まいづくりの原価を探り、無駄のない資金で、遊び心のある家を作る事。

引き返せない弱さ-3

2010-01-28 09:45:00 | とりとめもなく

 引き返せる強さを持った人もいるが、それはたまたま引き返す価値を見つけ出せた人なのかも知れない。
弱さは人間誰しも持ってはいるが、強いといわれる人の多くが、誰かが後押しをしてくれ、引き返せる勇気をもらう場合が多いのかも知れない。

信じる者こそ救われる・・と言うが、悪く解釈すれば、ここまで来たからには知らないほうが精神的衛生上いいかも知れない。・・という場合もある。
長年建築の仕事をやっていると、知り合いから「友達が昨年新築したので、一度プロの目で出来具合を見て欲しい」と頼まれる場合があるが、こちらとしては、出来上がってしまって観たところで後の祭りなのに・・と思いながら、気が進まないが友達の要望とあれば仕方がなく、承諾しなければならない。

建て主は、出来上がった喜びと、少しの不安を持ちながら案内し、「3000万円で出来ました、高くはないでしょうか?」と聞かれて返す言葉が見つからない。
「良いんじゃないですか・・・。」としか言えない。
「この内容で3000万円は高いでしょう!」と言ったところで施工業者からお金が返ってくる訳でもなく、その言葉で建て主に精神的負担を掛ける事にもなりかねない。

床は集成材で仕上げられ、壁はビニ-ルクロスだらけで、造作材は、シ-トを貼った物で納められ、自然素材は何処にも見当たらない。
自然素材を使っているから高級な家とは言い切れないが、クロスやシ-ト貼り造作材は低価格で、ビニクロスの普及品を使えば一㎡700円で貼ることが出来、これほど安い仕上げ材は他には見当たらない。

窓ガラスはシングルで、仕様書を見れば、断熱材も50㎜のグラスウ-ル、屋根はカラ-ベストで外壁はサイディング貼り。
どうしてこの家が3000万円もするのだろう?・・・と不思議に思えるほど理解に苦しむ。

「知らぬが仏」・・・建ててしまったら振り替えらない方が良いのかも知れない。
「3000万円もかけたのだから良い家に違いない」と思わせるのが親切なのかも知れないと思える時がある。