3月27日に京都大学で「自然再生 それって人にできること?」という「八雲ケ原湿原の再生」をテーマにした梅原徹さんの講演が行われました。これはその概要です。
比良山スキー場は1962年開設時に八雲ヶ原湿原の北半分を埋め立てたが、2004年経済的理由で廃止するにあたり原状回復が必要になった。
八雲ケ原は谷湿原、現在の八雲ヶ原はかつての南部湿原、アゼスゲ、ミミカキグサ、モウセンゴケ、ヤチスギラン、コバノトンボソウ少し乾いた土地にはレンゲツツジ、イヌツゲが見られる。一部にはジュンサイーヒツジグサ群落がある。かつては八雲池より北側に北部湿原があった。東側は花崗岩層で雪解け時の土砂の流入が多い。
自然再生の手順は①1947年米軍空中写真を使用して湿原範囲を決める。②山崎氏「八雲ヶ原水苔湿原について」(1933)、中井氏の資料(1977)を参照し、復元目標を決める。③湿原範囲の試掘で埋立土量と深さを推定する。
目標種としては、開放水面はアブラガヤやスゲを主に。湿原内はミズゴケが多く、乾いた周囲はヤマドリゼンマイ、より乾いたところはイヌツゲ、レンゲツツジ低木林。イメージとしては今の八雲池の周囲とした。
試掘したところ一番下に黒い泥炭層。これがかつての湿原の地層。その上の第2層は埋め立て層。一番上の層は雪解けで流入した土砂の層の3層。泥炭内の埋土種子を発芽させたところアブラガヤ、イグサなどの湿原の先駆的植物が多かった。
2006年秋に当時の地表面を表に出す工事をした。掘ると水がすぐに出て、南半分はすぐ池に。1年後2007年水面にはまだ何もないが、陸地部分には2種類の群落が出現。①イ、アブラガヤ、ミヤマシラスゲ、アゼスゲなどの群落。風散布の種類ではないのでこれらは埋土種子からのものと思われる。先駆的かつ低層湿原型の植物が多い。ほかコウガイゼキショウ。
②コヌカグサ、アキメヒシバ、アリノトウグサ、イトテンツキ、オオバコ、コナスビ、タチツボスミレなどの湿原とあまり関係のない種類の群落 これは北の端の削りすぎた部分。
スキー場は植被しないが廃止後どんどん回復している。湿原周囲には土砂をふせぐ柵をつくりゲレンデのススキを刈ってきて並べた。今後はこのまま放置する予定。自然に任せる。