はさみの世界・出張版

三国志(蜀漢中心)の創作小説のブログです。
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臥龍的陣 太陽の章 その68 安英の申し出

2023年02月22日 09時58分51秒 | 英華伝 臥龍的陣 太陽の章
「安英、おおよそでかまわぬ。村に集っている者の数は、どれほどになるであろう」
「隠し村には子供らが百人ほど集められて訓練を受けています。
老師たちを含めて、おとなの壷中は二十人ほど。
ですから、総勢で百二十人ほどです」
「百二十人か。それだけの人数の食糧をどうしている」
「用意しているのは、樊城の胡家でございましょう。わたしの親戚です」


そうか、と孔明は答えて、それからまた沈黙した。
花安英にとっては残酷な作戦が浮かんだのであるが、とてもではないが口にできない。
甘いとはわかっているが…さて、どうしたものか。


さらに考えていると、花安英が孔明に言った。
「胡家から村へ運ばれる輜重《しちょう》を襲いなさい。
兵糧を絶ち、飢えて弱った壷中を攻撃すれば、あるいは降伏させることが可能かもしれない」
「下策だな。時間がかかりすぎる」
「しかし、いっぺんに火で攻め込むよりは、あなたの求めるように、多くの子供たちを救うことができる。
子供と戦いたくないのでしょう。ならば、この策がいちばんです。
崔州平が納得するかどうかは別ですが」


兵糧攻めを崔州平が受け入れるのは、むずかしかろうと孔明は思った。
樊城の隠し村にひそむ敵のことが把握できていないうえに、こちらの兵力は五十あまり。
輜重をうまく襲ったとして、村の中にどれだけの備蓄があるかどうかでも変わってくる。


だめだ。
襄陽城の子供たちは、ほんの一部しか救えなかった。
ほかにも、助けを求めている子供たちはたくさんいるはずなのだ。
なにより、趙雲が囚われている状態で、悠長なことはしていられない。


「軍師、あとひとつ、わたくしの策がございますが」
そういって、安英はにっ、と不敵な笑みを孔明に向けた。
「なんだ」
「間道をこのまま抜けて、村の枯れ井戸へつづく間道から、村に入り込むのです。
村は狭い。しかも、いま村にいるのは子供が主です。
壷中の精鋭中の精鋭は、襄陽城であらかた死んでしまったか、潘季鵬と行動を共にして移動中かのどちらか。
手薄な村に入り込むのは容易でしょう」
「村に入り込んでどうする」
「樊城の隠し村には、毒や薬草などを集めた倉がございます。
そこに忍び込み、しびれ薬をぬすんで、飲み水に入れてしまうのです。
そしてみなの動きを封じたところで、村を占拠する。
わたしたちは陸路を抜けて村に向かっていますが、水路の潘季鵬は村へ迂回する道をとっているはず。
わたしたちの方が、一日は早く樊城に着きます。
そして、村を占拠したあと、なにも知らぬ潘季鵬たちがやってきたところを、迎撃するのです」


「なるほど、それならば時間も食わぬし、確実だ」
「毒ならば、必ず専用の倉においてありましょう。
よいしびれ薬がたくさんありますよ」
「薬については、わたしも多少、知識がある。
妻に教えてもらったからな。倉の位置を教えてくれ」
「いやです」
「安英、連れてくことはできぬ。足手まといだ。それとも、死にたいか」
「でも、あなたはわたしを連れて行かなくちゃならない。
でなければ、倉の位置はわからないのだから」


孔明は、闇になれた目に見える、強情な少年の眼差しをじっと見据えた。
この少年もまた、孔明と同様に、決着をつけに樊城に向かっているのだ。


根負けして、孔明は言った。
「わかった、わたしがおまえを倉へ連れて行く。
だが、期待するなよ。見ての通り、わたしは非力だ。
そなたを背負って敵に気づかれぬよう間道を行くのにも限度がある」
「ほかの者に頼めばよろしいでしょう。
なぜご自分でわたしを背負おうとされる」
「ほかの者では手に余るからだ」
「ふん、共倒れにならないよう、頼みますよ」
「善処しよう。それより、もうお休み。しばらくしたら、また出立だそうだから」
言いつつ、趙雲の自分に対する気持ちが、なんとなくわかったように感じた孔明であった。


つづく

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このところ冷え込む日々がつづいています。
気分が冬になりすぎてもいけないので(?)ひさびさに今日はセルフネイルをしています。
爪がきれいになっただけで、ちょっとテンション上がりますね。
今日も楽しく過ごします。みなさまも、どうぞよい一日をお過ごしください('ω')ノ


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