261.蜘蛛の巣が破裂する索漠の想いばかり噴水
262.日暮れて幻獣は暴れもせず吠えもせず
263.降ったり止んだり九月の雨がもうそこ
BGM-A
「夜の副読本」
見あたらない夜の副読本を探す
味気なく白茶けた蛍光灯
飲み残した紅茶がカップの底を黒ずませている
追い払えない澱みのうちに
意識の扉をやや広げよう
沈んだものどもを観察しよう
とはいえど言われぬとも
季節は少し過ごしやすくなった
峠が見える峠の稜線だけが
地上は星空よりもぐっと暗い
ふと思い出す四十年も前のこと
籐椅子に腰掛けてのぞき見たあの肌の曲線
うなだれる癖はいつの間にか
薔薇を見上げる顔は上を見上げてはいても
けれども覗いているのは解けそうにない難題の凍てて震える
濁りでもなく澄んだ水ばかりでもなくもっと底を見たいと
潜り込んでは手を足を柔らかく捕われていく副読本の効用
BGM-A