阿部ブログ

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磁力抵抗がゼロの発電機が発明されている

2011年06月07日 | 日記
磁力抵抗がゼロの発電機が発明された

6月1日の京都新聞によれば、発電機を回す時に生じる磁石の抵抗を大幅に軽減させる仕組みを発明したと報道している。
発明したのは、滋賀県草津市の平松啓司氏(72歳)。

事の発端は、自転車についている発電機の抵抗を少しでも軽くしようとした事がきっかけ。

平松氏は、発電機の永久磁石を円盤状に並べて相対させ、軸を回転させることで電気を発生させる方式を考案。しかし、磁石同士が引き合う力が働くため、回転が逆に重くなることが判明したが、これを4台以上の発電機を1本の軸でつなげ、各台の磁石の位置を軸から見て均等な角度でずらすことで、磁石が引き合う力を相殺させることを発案し、試作品で検証したところ発電機の数を増やす事で回転が軽くなることを確認した。

つまり磁力の抵抗を減少させる事に成功したのだ。

この成果を受け、平松氏は、京都大学の中村武恒准教授(電気工学)に相談し、同准教授が解析したところ、発電機を丁度8台並べると磁力の抵抗がほぼ「ゼロ」になることが分かった。
中村教授は、この平松氏の発見を2011年5月19日、つくば市で開かれた「春季低温工学・超電導学会」で発表した。
発表は「高温超電導電機子巻線を適用した永久磁石発電機のコギングトルク低減と発電特性改善に関する基礎検討(Fundamental study on cogging torque reduction and generation characteristics improvement of permanent magnet generator having HTS armature windings)」と言うタイトルで、これでは素人には発表の中味は想像つかないが、中村准教授らは、平松の出願特許に基づき,コギングトルクを低減する永久磁石発電機の検討を行い、所謂「磁力ゼロ抵抗発電機」の発電特性を解析し,コギングトルク低減だけでなく発電効率改善の可能性を見出したとしている。

この発表は、中村準教授の他、上原亜矢女氏(京大)、雨宮尚之氏(京大)、発明者の平松氏(E. エナジー)、松下誠一氏 (松下電機総合事業)である。
余談であるが、京都新聞によると企業からの引き合いもあるとあるが、単純に考えると松下総合事業の名前から、それはパナソニックであろうと推測してしまうが、調べて見ると正式名称は「松下電気総合事業有限会社」で、事業所は滋賀県栗東市手原3-10-3とある。

中村准教授によると、「磁力抵抗ゼロ発電機」は発生する電気の波形がぶれず発熱ロスが少ない事により制御装置や廃熱装置が不要になる可能性がるともしている。

また低速回転でも電気が効率的に取出しやすいなど利点が多い為、今後、普及が期待されている電気自動車やハイブリッドカーの発電機などへの導入も期待できそうだ。
ちなみに、この「磁力抵抗ゼロ発電機」は、国際特許の出願中(特願2003-557088)である。

※中村准教授は、平松氏の発明に関するテーマとは別に、以下のような発表を「春季低温工学・超伝導学会」で発表している。何やら面白そうな研究をされている先生ですね。一度、お話でもお聞きしたいものです。

(1)Bi系ならびにY系高温超電導導体の厚み方向熱拡散率に関する検討
■中村 武恒, 小山 友一, 山川 宏 (京大); 船木 一幸 (JAXA); 雨宮 尚之 (京大)
■内容:深宇宙探査を目標とする太陽風プラズマと高温超電導コイルが作るダイポール磁場の相互作用を利用した磁気プラズマセイルを研究しており、当該発表では、高温超電導コイル熱設計のためコイル材料としてのBi系とY系における厚み方向熱拡散率を数値解析している。

(2)高温超電導誘導/同期機の自律安定性に関する検討
■中村 武恒, 北野 紘生, 雨宮 尚之 (京大); 伊藤 佳孝 (イムラ材研)
■内容:輸送機器応用を指向した高温超電導誘導/同期回転機の研究開発を行なっており、高温超電導誘導/同期回転機における高温超電導かご形巻線の非線形特性の利用によって自律安定制御が可能なことを発見したとしている。