阿部ブログ

日々思うこと

米シンクタンクによる国防予算削減案

2013年10月07日 | 雑感

10月以降、米連邦政府の機能停止が深刻化しているが、それは国防総省も一緒。
日本で誕生日(10月4日)を迎えたヘーゲル国防長官は、オバマ大統領が、「Pay Our Military Act」に署名したのを受けて Acting General Counselに、一時帰休になっているペンタゴンを中心とする文官職員の内、どの程度復帰させられるかを速やかに確定するよう指示を出している。その指示に対する回答は、速やかに国防長官に伝えられ、一時帰休になっている国防総省の文官35万の内、90%を10月7日から復帰させる事が可能との事で、速やかなる職場復帰が下命された。

今回の政府機能停止はともかくも、国防予算の強制削減の総計は10年間で約50兆円。毎年5兆円づつ削減するには何処をどれだけ削減するかが頭の痛い問題。しかし、これについては、今年5月29日に米4大シンクタンクが 「Strategic Choices and Management Review(SCRM)」を実施している。

SCRMを実施したシンクタンクは以下の通り。
(1)The American Enterprise Institute(AEI)
(2)The Center for a New American Security(CNAS)
(3)Center for Strategic and Budgetary Assessments(CSBA)
(4)Center for Strategic and International Studies(CSIS)

各シンクタンクは、国防費削減環境下にある国防戦略を立案し、国防総省のポートフォリオをリバランスする提案をCSBAのリバランスツールと方法論を使用して説明を実施。分析カテゴリーは、①UAV、②戦闘員/戦術航空機、③爆撃機、④海軍能力、⑤水上艦艇、⑥陸軍部隊、⑦陸軍戦闘兵器、⑧陸軍予備戦力、⑨宇宙とサイバー戦、⑩戦略兵器とミサイル防衛、⑪特殊作戦、⑫事前備蓄、⑬人件費(文官)、⑭研究開発の14分野。

個人的に一番良いと感じたのは、CSBAの案で、彼らは今後10年間の予算削減の目標について2つのシナリオ設定して分析。
A案は、52兆円の削減と、B案の24兆円削減で、A案では10年間均等削減、B案は前半は緩やかな削減過程を経て、後半に削減規模を大きくするシナリオ。またCSBAは、リバランスツール(Rebalancing Tool)を用意しており、650個の削減オプションを準備していた。

これに続くように、9月には、STIMSONセンターが、国防予算の予算削減案に関する報告書『STRATEGIC AGILITY:Strong National Defense for Today's Global and Fiscal Realities』を発表している。

以下をご覧頂ければ、一目瞭然、サイバー戦分野や先端技術への投資は削減せず、継続する事の重要性が示されており、納得感はある。
STIMSONセンターの報告書によれば、3つのカテゴリーで、年間5兆円の削減を行う算段だ。

(1)$22.4 billion in management reforms, achieveとして、
・文民職員の削減、司令部要員の削減、本土防衛機関の削減
・退役者補助や医療補助制度の改革
・不要な基地内スーパー等の廃止

(2)$21.4 billion in changes to force structureとして、
・長期戦争を想定した戦力の削減
・ICBM部隊の削減
・海空部隊、特殊部隊は維持
・サイバー戦分野については、投資拡大
・州軍や予備役による人的戦力の確保
・戦闘機部隊の一部を州軍や予備役へ移管

(3)$5.7 billion in reduced modernization costsとして、
・CONUS(Continental United States)つまり米本土のミサイル防衛部隊配備と新陸上車両を凍結
・F-35と戦略原潜の調達ペースをダウンさせること
・次期長距離爆撃機計画、イージス艦への投資は維持しつつ、先端技術への投資を重視

Summary of Recommendations Savings in FY15 (in billions)
(1)Management Reforms
1.Reduce Headquarters $4.5
2.Reduce Defense Agencies $1.0
3.Streamline Central Training $2.0
4.Extricate Uniformed Personnel from Non-Military Tasks $2.7
5.Reduce Civilian Employees $4.7
6.Reduce Contractors n/a
7.Reform Military Retirement $1.5
8.Reform Health Benefits $4.7
9.Stop Funding Commissaries and Post Exchanges $1.2
10.Reduce Infrastructure n/a
Subtotal, Management Reforms $22.4

(2)Force Structure
11.Reduce Army Force Structure $11.9
12.Reduce Marine Corps End-Strength $2.0
13.Shift Lower-End Air Force Fighters to Reserve Component $5.4
14.Do Not Retire Navy Cruisers -$0.1
15.Maintain Current Number of Aircraft Carriers $2.3
16.Increase Resources for Cyberwarfare -$1.2
17.Maintain Ready Special Operations Forces $0.0
18.Maintain Strategic Depth the Guard and Reserve Provide $0.7
19.Reduce Existing Nuclear Forces $0.4
Subtotal, Force Structure $21.4

(3)Modernization
20.Cancel GCV and JLTV $1.2
21.Slow F-35 Purchases $4.0
22.Continue the Long-Range Strike Bomber $0.0
23.Delay and Reduce Purchases of SSBN-X $1.2
24.Freeze GMD; Reprogram for Further Technology Development $0.0
25.Buy an Additional AEGIS Destroyer a Year -$1.6
26.Shift Resources from Post-Prototype to Earlier Research $0.0
27.Cut Minor Procurement  $0.9
Subtotal, Modernization $5.7

Total Savings $49.5
Savings needed in FY15 to Meet Sequester $47.7
Additional Savings Identified $1.8

報告書本体は37ページで概要記述の域を出ないが、そもそも無駄の多い国防予算のスリム化は、避けて通れない道で、今しっかりと無駄を削減する事が重要だろう。
しかし「Strategic Agility」は、米国の財政状況の厳しさを物語っている。もう長期戦は無理と言うか、やらないと言う事だ。