緒方さんの『満州事変』は、原書房の出版ものを自衛官時代に読んだ。92歳でお亡くなりになり、思い起こして再読することとし一気呵成に読了した。読んだのは岩波現代文庫版である。文庫本なのに1,540円+10%消費税で高価である。


緒方さんが『満州事変』を書いた当時の1960年代はまだ、事変関係者が生存していた。原書房版の「あとがき」にも、文庫本の「まえがき」にも書かれているが、関東軍参謀の片倉衷(かたくら ただし)も生きており、緒方さんは、片倉から「満州事変機密政略日誌」の一部を隔週に借り受け、その際に片倉と質疑応答をしており、これは貴重な情報だっただろう。片倉は長寿で平成3年に93歳で没している。
しかし、片倉は関東軍参謀とは言え、一番の若輩者(大尉)で満州事変の計画の枢機には参画していない。あくまで板垣征四郎と、石原莞爾が、大正天皇の意思を継いだ大元帥閣下の承認のもとに計画し実行したもの。満州事変は、巷間言われている関東軍の独走ではない。陸軍中央と密に連絡・調整し事前に承諾を得て実行したのである。
板垣と石原と共に事変に深く関与した奉天特務機関の花谷は、昭和6年6月に開催された秘密会議に出席し、事変の実行を強く主張した。賛意を示したのは、参謀本部第2部長の建川美次少将、重藤千秋支那課長、橋本欣五郎・ロシア課長、永田鉄山・軍事課長らである。根本博・支那班長、東条英機・動員課長も準備不足を心配しながらも結局は賛同した。
8月に開催された会議は、軍司令官会議が開催された後に行われた。この会議には小磯国昭・軍務局長、関東軍司令官・本庄繁、関東軍参謀次長・二宮治重、関東軍高級参謀・板垣征四郎、朝鮮軍司令官・林銑十郎らが出席し、板垣が、満州で軍事行動に出る用意がある旨の発言をし、特に朝鮮軍に対しては援軍を求めた。それに対し林銑十郎朝鮮軍司令官は、関東軍の危機に際しては援助を惜しまぬとの決意を表明している。実際の事変勃発の際、林は一個旅団を関東軍支援に派遣しようする。朝鮮軍の越境である。
さて、これら一連の軍中央における事変実行の根回しを行った結果、24サンチ砲2門が奉天に移送されている。奉天城攻略の為である。中国側は、分解され密かに移送され、警戒厳重な謎の荷物の存在を察知している。
緒方さんは、このように満州事変が軍中央と調整されて実行されたことを明瞭に示したことで政治学者としての地位を確実なものとした。
さて、緒方さんが亡くなってから丸善など大手書店には、『満州事変 政策の形成過程』の文庫本が平積みにされている。軍事関係の古本を扱う神保町の文華堂では4,500円するが、今でも十分に読む価値のある書籍だと思います。
緒方さんが『満州事変』を書いた当時の1960年代はまだ、事変関係者が生存していた。原書房版の「あとがき」にも、文庫本の「まえがき」にも書かれているが、関東軍参謀の片倉衷(かたくら ただし)も生きており、緒方さんは、片倉から「満州事変機密政略日誌」の一部を隔週に借り受け、その際に片倉と質疑応答をしており、これは貴重な情報だっただろう。片倉は長寿で平成3年に93歳で没している。
しかし、片倉は関東軍参謀とは言え、一番の若輩者(大尉)で満州事変の計画の枢機には参画していない。あくまで板垣征四郎と、石原莞爾が、大正天皇の意思を継いだ大元帥閣下の承認のもとに計画し実行したもの。満州事変は、巷間言われている関東軍の独走ではない。陸軍中央と密に連絡・調整し事前に承諾を得て実行したのである。
板垣と石原と共に事変に深く関与した奉天特務機関の花谷は、昭和6年6月に開催された秘密会議に出席し、事変の実行を強く主張した。賛意を示したのは、参謀本部第2部長の建川美次少将、重藤千秋支那課長、橋本欣五郎・ロシア課長、永田鉄山・軍事課長らである。根本博・支那班長、東条英機・動員課長も準備不足を心配しながらも結局は賛同した。
8月に開催された会議は、軍司令官会議が開催された後に行われた。この会議には小磯国昭・軍務局長、関東軍司令官・本庄繁、関東軍参謀次長・二宮治重、関東軍高級参謀・板垣征四郎、朝鮮軍司令官・林銑十郎らが出席し、板垣が、満州で軍事行動に出る用意がある旨の発言をし、特に朝鮮軍に対しては援軍を求めた。それに対し林銑十郎朝鮮軍司令官は、関東軍の危機に際しては援助を惜しまぬとの決意を表明している。実際の事変勃発の際、林は一個旅団を関東軍支援に派遣しようする。朝鮮軍の越境である。
さて、これら一連の軍中央における事変実行の根回しを行った結果、24サンチ砲2門が奉天に移送されている。奉天城攻略の為である。中国側は、分解され密かに移送され、警戒厳重な謎の荷物の存在を察知している。
緒方さんは、このように満州事変が軍中央と調整されて実行されたことを明瞭に示したことで政治学者としての地位を確実なものとした。
さて、緒方さんが亡くなってから丸善など大手書店には、『満州事変 政策の形成過程』の文庫本が平積みにされている。軍事関係の古本を扱う神保町の文華堂では4,500円するが、今でも十分に読む価値のある書籍だと思います。