日本国内企業において国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards、以下IFRS)への対応が注目を集めている。それは2007年8月に企業会計基準委員会が国際会計基準審議会(International Accounting Standards Board、以下IASB)と相互の会計基準についての全面共通化に合意し、今年6月までに日本基準と国際会計基準の違いを解消することを合意した、所謂「東京合意」による。既に先進的な企業においてもグループ/グローバルの連結経営の深化や、ガバナンスの強化が期待される経営ツールとしてのIFRSへの移行を決定している。
このIFRSについて武蔵大学の松島教授にその本質とは何かをヒアリングした。
松島教授曰く、IFRSの本質は世界共通の財務報告書と言う事ではなく、業務プロセス、取引データの透明性、公正性に関わる点にある。
グローバル化が進展する中、多様な事業を世界を舞台に展開する企業の場合には株主だけではなく、それぞれの国(税務当局など)への事業のアカウンタビリティが必要になるが、それをIFRSが担うものであるとの認識が重要。
つまりIFRSを単なる財務報告と捉えるのではなく、これに取引と言う観点を入れ、本社と連結決算対象会社全体の取引データも収集・集約する事により真のアカウンタビリティを確保する事、これが本質的なIFRS対応と言える。このようにして作成されたIFRSの連結財務情報を積極的に活用することが今後の企業経営には必要である。
またIFRSではPLからBSに重点が移っており、グループ企業全体の資産評価に取り組まなければならない。それとIFRS対応にはITを避けて通れないが、連結決算対象会社へのプライベート・クラウドサービス提供によって、効率的にIFRS情報(財務データと取引データ)が収集できるので必要なIT投資は行なうべきである。
松島教授へのヒアリングから、企業における次期会計システムあり姿がおぼろげながら見えてくる。つまりグループ/グローバル全体を包括した「会計トレーサビリティ」を可能するシステムで、IFRSで作成された連結財務情報からドリルダウンすると、連結子会社も含めた個々の取引データや資産データを取り出せる機能を実装するシステムを開発する事。
但し開発の前にはグループ全体の財務会計に関する業務プロセス全体の最適化が必須である。
このようにして開発されたシステムは、他社に一歩先んじる企業には相応しい財務会計システムとなるだろう。