阿部ブログ

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北極評議会が開催~北極圏での物流イノベーション~

2013年05月16日 | 日記
5月15日からスウェーデンのキルナで「北極評議会」が開催されている。北極評議会は、1996年9月のオタワ宣言より設立された国際組織で、参加国は北極海に面するロシア、カナダ、アメリカ、フィンランド、アイスランド、フィンランド、スウェーデン、それとグリーンランド自治とフェロー諸島を含むデンマーク。
北極評議会は、北極圏の氷の溶解が進む中での新たなルールづくりなどについて話し合うが、最大の焦点は、資源開発と北極海航路の2つだ。

北極圏航路について、例えば横浜港からオランダ・ロッテルダムまでは、スエズ運河を経由する為1万1200カイリだが、北海航路だと半分の6500カイリで済んでしまう。スエズ運河の航行料や、貴重な燃料も節約できるし圧倒的に経済性が良い。またスエズ運河やパナマ運河を通れない巨大タンカーなどの艦船についても北極海航路を通ると事ができるので、海運業界にとってのメリットは計り知れない。北極海航路が本格的に活用できるようになると、世界の海運業界全体で年間数十億ドルの経費削減になると試算されている。また不安定な中東・インド洋海域を通過しなくても良いし、狭いマラッカ海峡の通過も無しと言う事でよいことずくめだ。

今後、さらに北極圏のアイスキャップの後退が進むと、北極点域を超える航路も実現する可能性がある。具体的には、北米カナダのハドソン湾とロシアのムルマンスクが直結すると、北極アウトバーンが現出する。これは北米の高速道路網と鉄道網と直結する事で世界的な物流環境を大きく変貌させる。北米の港湾を起点として、太平洋からアフリカ、南米へのアクセス出来る。これはシェール革命並のイノベーションとなる。

この北極海シーレーンが重要性を増す中、各国は様々な動きを示している。特に過去ブログでも書いているが、ロシアの動きが顕著だ。
ロシアの北極域での防衛力強化 ~ロシア北極軍~
北極海におけるロシア海軍の動向と原子力発電プラント船
ロシアの北極圏での活動を財政的、技術的支援を行い、国益につなげる為にも、ロシアとの包括的な平和・経済条約の締結が必要だ。それもプーチン大統領の任期中に。しかしプーチンさんの健康が心配だ。

さて、北極航路を砕氷する能力を持つ艦船は、世界で262隻。しかし全世界で砕氷能力を有する船が、今後234隻が建造され運用されるようになるし、新たな形態の船舶が考案され、これまた船舶イノベーションが起こる可能性も否定出来ない。特にダブル・アクティング・タンカーなど砕氷船の先導が不要なタンカーなどは、北極圏での資源開発を促進させる事になるだろう。日本の海運業もそうだが、造船業界にとってもチャンスではないのか?

時間があれば、中国の北極政策と警戒するロシアの状況を書いてみたいと思っている。 

※ご参考まで。アメリカも頑張ってはいる。「最新の北極研究船「シクーリアック」が進水

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