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阿部ブログ

日々思うこと

ハエを利用した有機廃棄物処理と昆虫飼料の可能性〜栄養価の高い昆虫食と昆虫飼料に注目

2018年11月15日 | 雑感

九州・福岡に本社を置くムスカ(MUSKA)と言う会社が、ハエを利用して家畜糞や加工残渣から、栄養価の高い有機肥料と飼料を100%リサイクルすることに成功した。このイエバエは日本に広く分布し学術名をMusca Domesticaと言う。一般的にハエは、不潔で身近にいる典型的な害虫と思われているが、有機廃棄物問題と食糧増産問題を解決する有力な昆虫として注目を集めている。日本国内だけでも食品廃棄物は年間約2,900万トン以上出されるが、この食品廃棄部を餌にしてイエハエの幼虫を育て、成長過程で出る排泄物を再利用し、幼虫そのものと混ぜてこれを飼料とする。イエバエは、1週間で成長し、有機廃棄物を完全に分解し、排泄物をもたらす。成長したイエバエの幼虫とその排泄物そのものは、栄養価が非常に高く、同社によれば、イエバエの幼虫と排泄物を用いた養殖用飼料として普通の餌に混ぜて与えると、真鯛の場合、約40%の増体効果が確認され、家畜に与えると5%の餌摂取効果が得られると言う。また、病気に対する耐性も向上することが判明している。更に宮崎大学との共同研究の結果、イエバエの幼虫と排泄物による肥料を使って二十日大根を栽培したところ、一般の有機肥料を使った場合よりも身の締まりが良く、粒が揃っているという結果となり、また、一般栽培のものの糖度が通常2.0~2.5なのに対し、イエバエの肥料の場合は、4.0と2倍高いことが確認された。同社によれば農作物の肥料として利用すると1年以上完熟させた堆肥よりも収穫量を約15%引き上げることが可能としている。
人類は過去、家畜や人糞を農業肥料として広く利用してきた歴史があるが、ハエの幼虫とその排泄物も農業肥料や家畜・養殖等の飼料に適している。また、昆虫そのものを食糧とする昆虫食(Insect eating)は珍しくなく、ハチの子やイナゴなどは日本でも食されてきた。世界では約1,400種類の昆虫が食材として利用されていると言われる。このムスカのイエバエは、旧ソビエト連邦で45年にわたり1,100世代の選別交配によって生み出された、スーパーイエバエともいえる品種で、この特許を日本のアビオスが取得しイエバエ事業を立ち上げたが、2016年に分社化し、これが現在のムスカとなっている。
今後世界人口が100億人に達すると予測される中、食糧増産と生産性向上は至上命令であり、且つ地球環境に悪影響を及ぼさず持続可能であることが不可欠である。この観点から、ムスカのイエバエによる肥料・飼料生産は非常に魅力的で有効なものであると考えられ、同技術と関連企業等の動向には要注目である。

○主要参考文献(含むURL):
NUSUKA
https://musca.info/ 

ムスカイエバエとムスカシステムの解説アニメーション
https://www.youtube.com/watch?v=QvobbUwbhgY 

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