阿部ブログ

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シリアにおけるロシア軍の動向~クルド人民防衛隊を支援

2015年11月28日 | 雑感
ロシア軍は、シリアのバーシィル・アル=アサド国際空港=フマイミーン航空基地に最新鋭のS400防空ミサイル・システムを配備した。シリア沖合には、ロシア海軍の巡洋艦「モスクワ」が遊弋している。モスクワには、射程距離90kmの防空ミサイル・システムS300「フォルト」を搭載している。地上のS400を同じく、フマイミーン航空基地の防空任務に従事する。この航空基地には、最新鋭のSu-30×4機の他、Su-25×12機、Su-24×12機、Mi-24、Mi-17などヘリ部隊、それと海軍のヘリが展開している。沖合には、巡洋艦「モスクワ」の他、護衛艦「スメトリーヴイ」、ロケット艦「ミラーシュ」が展開し、タルツゥース港には海洋給油船「イワン・ブブノフ」や曳船Mや工作船が配備されている。ロシア軍は、このタルツゥース港から陸軍部隊と装備、武器弾薬など補給物資を陸揚げしている。所謂「シリア・エクスプレス」の揚陸艦が出入りしている。最近もT90×30両とT82の戦車を揚陸している。最後にロシアはS400配備以前から、防空システム「BUK」と「Pantsir」を、シリア国境沿いのイスラエル軍の防空システム「Iron dome」に対向するように配備している。ミサイルと対空機関砲の組み合わせで、敵機を撃墜する。シリアの防空システムを簡単に欺瞞するサイバー戦闘能力を持つイスラエル軍だが、国境近くにロシア軍の防空システムが展開する事態は、決して安閑としていられない。トルコとロシアのイザコザより、イスラエルとロシアが戦闘状態に陥ることを懸念する。イスラエルはゴラン高原のヘルモン山(ジャバル・アッ=シャイフ)監視所を強化し、情報収集中。因みに「Iron dome」はシリア国境沿いに2個中隊が配置されている。

※過去ブログ:「イスラエルの優れもの近接防空システム“アイアン・ドーム”

このようにロシア軍は着実にシリアにおける戦力を充実させており、トルコ軍による空軍機撃墜後は、シリア北部に展開するクルドの「人民防衛隊」(YPG)の支援を強化している。ロシアの支援を受け、YPG部隊は、反政府軍を蹴散らしユーフラテス川の西側まで進出しつつある。御存知のとおりトルコが敵視するクルド労働者党(PKK)のシリア側の武装組織がYPG。ロシア機撃墜を受け、トルコに対する報復を準備中のロシアは、外務次官でロシア中東担当大統領特別代表のミハイル・ボグダノフ氏が、パリでシリアのクルド政党「民主統一党」(PYD)の指導者サレフ・ムスリム・モハメド氏と面談しアサド政府軍とともに共闘する事を話し合ったようだ。「民主統一党」は、トルコのPKKのシリア版で2003年に結成。YPGの軍事部門が前述のYPG(人民防衛隊)である。

しかし、今回のトルコ軍の動きは明らかに過剰反応で異常だ。撃墜されたとの報に接したシリア駐屯のロシア軍は、直ちに救出の為にヘリを派遣しているが、この救出ヘリに対しても攻撃を仕掛けており、海軍歩兵部隊員1名が死亡している。この事態をプーチンは座視することはないだろう。ただ、ロシア機による空爆は、民間人の被害が甚大で心が痛む。

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