押し入れを整理していたら35年前の楽譜が出てきました。
「なんで、そんな古い汚い楽譜なんて処分しないの?」
と思われる方がいらっしゃると思いますが、楽譜って貴重なんですよ。
音楽をやられている方ならわかると思います。
当時からバンドスコアと呼ばれる吹奏楽用にアレンジされた
楽譜は割合簡単に入手できました。
しかし、私が使っていたクラシックのオーケストラ楽譜なんて
田舎の楽器店では買えませんでした。
クラシックのオーケストラ楽譜はほとんどが輸入品で
単価が高く、しかも音楽人口を考えると田舎の店には置けなかったのです。
ですから顧問の先生は仙台のヤマハ楽器まで買いに行ってました。
あと、捨てられないもう一つの理由。
けっこう、何度も使うんです。
会津という狭い地域の中で、バイオリン、チェロなどを弾いている人
は3桁いません。
ですから色々な楽団に応援にいくことになるのですが、
我々はアマチュアですからすべての曲を弾けるわけではありません。
難しい曲を消去法で省いていくと、大体どの楽団も演奏
できる曲は似てくるんですよね。
私の高校時代の顧問の音楽の先生は趣味で楽団を主宰していました。
昼間は学校で私たちを指導して、夜は仲間たちを指導してました。
練習している曲も大体同じです。
その楽団は一年に一度発表会をやっていたのですが、
そのメンバーだけではホールの後ろにまで音を届けられるような
ボリュームはなかったのです。
そこで教師という立場を利用して(笑)、我々生徒を応援に
行かせていたわけですよ。
高校生は車の運転はできませんから、汽車で喜多方市から会津若松市
までいって、そこから歩き・・・
会津若松駅から穴沢ホール(病院)までだよ・・・ひどくね?
着いたら自分の親と同年代の大人に気を使いながら演奏・・・
終わったら「ご苦労さま」とカレーライス一杯・・・いやはや。
しかも先生の奥様が作ったのでマズイとは言えず・・・いやいやうまかったですよ。
また、クラシック音楽の世界は音楽がメチャクチャ好きな熱血漢が多いのですが、
ハイソな方々が「たしなみ」として演奏してる場合もあるのです。
そのやんごとなき方々がたまに勘違いして入団されることがあるのですよ。
すると体育会系の松岡修造ばりの人の意見と、練習後のお茶会の自慢話がメイン
の人の意見のかみ合わないこと、かみ合わないこと。
大人の世界って大変だな、って思いました。
今となっては懐かしい思い出です。
ちなみにこれはベートーベンの「エグモント序曲」の
第一バイオリンのパート譜。
赤く汚く書き込みしてありますねぇ。
私たちはプロではありませんから、難しい弓の運びを省略したり、
指の番号を記入したり「ずる」をするわけです。
ですから聞く人が聞けば、
「あれっ、ここスラーじゃないよね?」
「A線指定なのにE線で弾いてる。」
てなことが分かっちゃうわけですよ。
もっともそのような指摘をされたことは一度もありませんが・・・
この書き込みと指揮者からの指示の書き込みを参考に演奏するわけです。
あっ、そうそうこの書き込みは練習の時見るんですよ。
実際の演奏会の時、見ながら演奏したら音楽になりません。
書き込みのとおり指と腕を動かすだけ・・・音楽に魂がはいりません。
このコピー湿式というんですよ。
若い人、わかりますか?
普通の白いコピーは「ゼロックス」と呼んでました。
湿っていて、現像液の酸っぱい匂いがしましたよね。
ちょっと保存状態が悪いと薄くなって見えなくなりました。
「ちょっとまて!著作権法違反だろそれ!」
たしかにそうですよね。
でも、当時の値段で3,000円くらいする楽譜を部員すべての
分そろえるのはどの学校もムリだったのです。
ですから当時は暗黙の了解というかたちで行われていました。
コピー楽譜でコンクールに出場しても何も言われませんでした。
当時は日本も知的財産の認識が甘かったのでしょう。
まぁ、でもならぬものはならぬ、ですよね。