つづき
「はい、じゃあ脱ごうか!」
見るに見かねて、先生(プロカメラマン)が叫んだ。
モデルはさも当たり前のように、下着をがばっと脱ぎまた棒立ちになった。
「こりゃ、だめだな」
そう思ったかどうか知らないが、先生はこまかいポーズをつけ始めた。
モデルも人間だから、こちらから指示しないと身体的
に楽なポーズをとってしまう。
そうさせないために、先生がいる。
また先生は、ポーズといったら、足を開くことしかできない、
危ない子のストッパーの役割もあるのだ。
やっと撮ることができるようになったな、そんな感じでカメラを構えた。
先生がつけたポーズが決まるたび、カメラを構えるのだか、
いっこうに目線が・・・こない。
プロのモデルは一定の間隔でそれぞれのレンズを見てくれる。
しかし悲しいかな、アルバイトモデルはそんなことできないのであった。
壮絶な「目線くれ戦争」が始まった。
モデルに声をかけて目線をもらい、シャッターを切る。
モデルはミラーが跳ね上がったのを確認して他の人に移る。
その間約4~5秒。
その間に、フレーミング、ピント、露出を確認してシャッターを切らねばならないのだ。
その場でフィルムチェンジなどしようものなら、ブーイングである。
「そんなこと、後ろでやれ!」ってね。
みんな真剣である、にやにやしてる人など一人もいない。
みんな一瞬のチャンスをものにしようと必死である。
2、3回シャッターを切ったであろうか、後ろのほうから声がした。
「そろそろ、代わってもらえませんか?」
そうであった、いいポジションで撮りたいがため、私の後ろに
ならんでいるのだ。しかも大勢。
これは無視する雰囲気ではないな。
そう感じた私は「立ちまーす!」と言い、後ずさりした。
撮影会では前の人が立ち上がるときは、後ろで撮影してる人の
じゃまにならないように、声をかけることが暗黙の了解だ。
いろんな場所で「立ちまーす!」の声が響いていた。
一番後ろにならんで、もう一回いくか!
いや、30人もいるんだ、もし回りきれなかったらもったいない。
そんな貧乏根性丸出しで、私は次のモデルに移ることにした。
-- つづく --
*2015年 追記
モデルもベテランになってくると、カメラマンの腕前を瞬時に判断できます。
「こいつら、へただな」
と、思われると、勝手にポーズをし始めます。
しかたなく、我々はそれを撮ります。
これを業界用語で「撮らされている」と言います。
しかし、モデルが「ここで、撮って!」と無言で訴えているとき、
いいタイミングでシャッター音がすると、やがてモデルも乗ってきます。
それはそれで、いい写真になるときもあります。
素朴な疑問
Q:モデルは全部脱ぐの?どんなポーズもOK?
A:全部、脱ぎます。
基本、ポーズの要求には応じてくれますが、予めモデルは
「あまり過激な要求には応じないように」
と言われています。
またモデル本人がOKでも、マネージャー、関係者から
ストップがかかることもあります。
Q:個人的にモデルは雇えるの?
A:基本、アマチュアとはモデル事務所は契約しません。
しかし、活動が広く知られているようなグループには
例外的に契約することがあります。
ただし、ギャラ(事務所に支払う額)だけで10万円くらいします。
Q:よく写真雑誌に広告を出している、個人撮影はどうなの?
A:モデル事務所から指定されたスタジオで1時間単位で、撮影できます。
1対1の撮影です。
モデルはアルバイトなので、素人と素人の撮影会になります。
写真のクオリティはあまり望めません。
素人モデルは制約が多い(顔NG、ブログNG等)ことがあります。