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創元推理文庫からカーの「蝋人形館の殺人」新訳版が出ました。
こんな話だったのかと新鮮な気持ちで読んでいます。
(ポケミス版を読んだときは、どんな話なのかさっぱり分からなくて…)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/6c/290f42d4d1dc4afc5bccbae754edab86.jpg)
雰囲気が横溝正史の『三つ首塔』を思わせるのは、
退廃したパリの夜が、戦後の混乱時となんだかダブるからか。
訳者がディー判事ものの和邇桃子さんで、
文体も乱歩や正史を思わせるのは、そのあたりの線を狙ったんでしょうかね。
後年手がける歴史もののプロトタイプみたいです。
バンコランはなんでもお見通しで、
情報収集能力、推理能力など神業としか思えません。
このあたりの性格設定が、プロット作りの邪魔になりはじめた、というのはうがちすぎか。
そこで、バンコランからマールを切り離して(つまり物語の先が見えなくなるように)
マール単独で潜入捜査させてみたら、これが意外に著者好みの展開につながった、という怪我の功名?
ワトソン役でカーの分身などと言われているジェフ・マール君は、
ケン・ブレイクなどの青年主人公役とはまったく反対の役柄で、
マール君が一人で夜のパリを歩いていたら、すぐに死体になっていそうなひ弱さが感じられます。
だいたい、セレブな区画に住んでいる(ギャランと同じ街)のに、
なにを生業としているかわかんないです。遊学してるんでしたっけ?(それはカー自身か)
愛人のシャロン・グレイとはどうなったのかなど、マール君にはいろいろ突っ込みたいところがあります。
反対にバンコランが犯罪者を狩る立場でありながら、平気で夜の街を闊歩できるのは、
パリのミルヴァートンたるエティエンヌ・ギャランと基本的に同じ人種であるからに違いありません。
マール君(とカー自身)からすると、バンコランは自分を庇護してくれる強い保護者という存在かもしれません。
バンコラン4部作のトリを飾るこの作品で男をあげたマール君は、
このあと親離れをするみたいに単身アメリカへ戻って殺人事件に遭遇しますが、
このときの探偵はバンコランではなく、頼りなさそうな青年パット・ロシターです(探偵としては有能ですが)。
この後マール君の登場する作品はありませんが、
もし活躍しているならば、ケン・ブレイクのようにひとり立ちした(大暴れできる?)男になっているでしょう。
ところで創元推理文庫「アンリ・バンコラン・シリーズ」と銘うってあるからには、
当然次は「新訳・四つの凶器」がラインナップにあがることを期待していいんですね?
さらに出来ればシリーズ外伝として「新訳・毒のたわむれ」も!
ちなみにこの順番で読むときは『絞首台の謎』の前に必ず『カー短編全集4/幽霊射手』を読むことをお勧めします。
『夜歩く』
『カー短編全集4/幽霊射手』(バンコランの事件簿)
『絞首台の謎』
『髑髏城』
『蝋人形館の殺人』
『毒のたわむれ』
『四つの兇器』(帯の惹句は『バンコラン最後の事件』なんちて)
※バンコランはフリーメイソンだったんですね。(創元版P137)
ポケミス版(妹尾アキ夫訳)だと「共済組合員」(ポケミス版P93)となっていて、
バンコランが生協に入っているような表現に笑ってしまいました。
「共済組合員」のほうのバンコランは「クックロビン音頭」を踊っていそうだなあ(ジェフ・マライヒと)。
クックロビン音頭
こんな話だったのかと新鮮な気持ちで読んでいます。
(ポケミス版を読んだときは、どんな話なのかさっぱり分からなくて…)
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雰囲気が横溝正史の『三つ首塔』を思わせるのは、
退廃したパリの夜が、戦後の混乱時となんだかダブるからか。
訳者がディー判事ものの和邇桃子さんで、
文体も乱歩や正史を思わせるのは、そのあたりの線を狙ったんでしょうかね。
後年手がける歴史もののプロトタイプみたいです。
バンコランはなんでもお見通しで、
情報収集能力、推理能力など神業としか思えません。
このあたりの性格設定が、プロット作りの邪魔になりはじめた、というのはうがちすぎか。
そこで、バンコランからマールを切り離して(つまり物語の先が見えなくなるように)
マール単独で潜入捜査させてみたら、これが意外に著者好みの展開につながった、という怪我の功名?
ワトソン役でカーの分身などと言われているジェフ・マール君は、
ケン・ブレイクなどの青年主人公役とはまったく反対の役柄で、
マール君が一人で夜のパリを歩いていたら、すぐに死体になっていそうなひ弱さが感じられます。
だいたい、セレブな区画に住んでいる(ギャランと同じ街)のに、
なにを生業としているかわかんないです。遊学してるんでしたっけ?(それはカー自身か)
愛人のシャロン・グレイとはどうなったのかなど、マール君にはいろいろ突っ込みたいところがあります。
反対にバンコランが犯罪者を狩る立場でありながら、平気で夜の街を闊歩できるのは、
パリのミルヴァートンたるエティエンヌ・ギャランと基本的に同じ人種であるからに違いありません。
マール君(とカー自身)からすると、バンコランは自分を庇護してくれる強い保護者という存在かもしれません。
バンコラン4部作のトリを飾るこの作品で男をあげたマール君は、
このあと親離れをするみたいに単身アメリカへ戻って殺人事件に遭遇しますが、
このときの探偵はバンコランではなく、頼りなさそうな青年パット・ロシターです(探偵としては有能ですが)。
この後マール君の登場する作品はありませんが、
もし活躍しているならば、ケン・ブレイクのようにひとり立ちした(大暴れできる?)男になっているでしょう。
ところで創元推理文庫「アンリ・バンコラン・シリーズ」と銘うってあるからには、
当然次は「新訳・四つの凶器」がラインナップにあがることを期待していいんですね?
さらに出来ればシリーズ外伝として「新訳・毒のたわむれ」も!
ちなみにこの順番で読むときは『絞首台の謎』の前に必ず『カー短編全集4/幽霊射手』を読むことをお勧めします。
『夜歩く』
『カー短編全集4/幽霊射手』(バンコランの事件簿)
『絞首台の謎』
『髑髏城』
『蝋人形館の殺人』
『毒のたわむれ』
『四つの兇器』(帯の惹句は『バンコラン最後の事件』なんちて)
※バンコランはフリーメイソンだったんですね。(創元版P137)
ポケミス版(妹尾アキ夫訳)だと「共済組合員」(ポケミス版P93)となっていて、
バンコランが生協に入っているような表現に笑ってしまいました。
「共済組合員」のほうのバンコランは「クックロビン音頭」を踊っていそうだなあ(ジェフ・マライヒと)。
クックロビン音頭
カーは小学校の図書館に「魔女の隠れ家」がありました。
何回か手に取ったんですが結局一回も最後まで読めなかったです。
恐かったという思いでしかないなー(笑)
表紙が今でも思い出せます。
「毎夜脇にはべる美女は違うほうがいい」なんて台詞があったので、きっとノーマルだと思います(笑)。
図書館にあったのはたぶん怖い表紙のあかね書房版ですね。
イラストが横山まさみちでしたよね。オットセイの(笑)。
怪談とミステリのバランスがよい佳作ですので、機会があればぜひ。