葉上照澄大阿闍梨の足跡を辿って聖地エルサレムにて平和を祈る旅の4日目の6月14日午前10時半から私たちは元イスラエル国首長ラビで、ホロコースト生存者、テルアビブ首長ラビイスラエル賞受賞者のハラブ・イスラエル・メイル・ラウ師と面談しました。
イスラエルはユダヤ人が中心の国で、ナチスの迫害を受けた人たちがつくりあげたのでした。ラウ師はユダヤ教の偉大な指導者であり、通訳の方を通じてでしたが、感銘深くお話をお聞きしました。イスラエルという国家が難しい環境にあることを認めつつ、仏教徒が中心の私たちに向かって「争いのない世界にするために是非とも協力して欲しい」と訴えられたのでした。私はお土産に会津の赤べこをラウ師にお渡ししました。「牛は仏教では聖なるもの」とされていますから、そのことも話題になりました。
帰国後、私はイスラエル・メイル・ラウ著の『ホロコーストから生還した少年の物語 深淵よりラビ・ラウ回想録』(滝川義人訳)を一気に読破しました。ナチスの迫害によって両親も家も一切失いながらも、イスラエル国の主席ラビにまでなられたのは、いかなる環境にあっても、それにめげない宗教的な信念があられたからだと思います。
ユダヤ人のためにユダヤ教の責任者として逃げ隠れもしなかった父、集会所であるシナゴーグでふるいにかけられ、二度と会うことがなかった次兄、男子に比べれば女子供は生存のチャンスが少ないと理解して、列車の区分けのときに長兄の方へ押しやった母。その三人はナチスの犠牲になったのでした。生き残りとしては最年少の8歳でした。ラウ師は長兄や色々の人の助けで、ホロコーストから生還することができたのでした。
訳者の滝川氏によれば「深淵」というのは、詩篇130編1、2の「深い淵の底から、主よ、あなたを呼びます。主よ、この声を聞きとって下さい。嘆き祈る私の声に耳を傾けて下さい」に由来するそうです。ラウ師が人格者であるのは、ホロコーストという極限を生き抜いたからではないでしょうか。今回お会いしてみて人格者の上の人格者であることに感銘を覚えました。
今回の旅行では、イスラエル国首長ラビのハラブ・ダビット・ラウ師、ダニエル・シュペルベル師とも面会することができましたが、ラウ師同様に世界平和の必要性を説いておられました。 合掌
写真 (上)赤べこを手にしたハラブ・イスラエル・メイル・ラウ師
(下)ハラブ・イスラエル・メイル・ラウ師との記念撮影