「倖あれと友が掌に実むらさき」 石田あき子
ムラサキシキブといえば京都の嵯峨野の正覚寺が有名ですが、晩秋の会津路の私どもの会津天王寺でも、たわわに紫色の実を付け今が見頃です。名前の由来については「ムラサキシキミ」と呼ばれていたからだといわれます。「シキミ」とは実がたくさんなるということを意味しますから、見たそのままを植物の名にしたのです。
石田あき子は俳人石田波郷の妻で、夫の闘病を支えながら、子育てをし、自らも句集「見舞籠」世に出したのでした。悪戦苦闘している彼女の姿を見た友人が、励まそうとして、そっとムラサキシキブの実を差し出したのだと思います。そんなほのぼのとした光景が目の前をよぎってなりません。