会津天王寺通信

ジャンルにこだわらず、僧侶として日々感じたことを綴ってみます。

住職30年勤続功労者として表彰されました 柴田聖寛

2022-10-31 08:21:13 | 天台宗

 

 令和4年度の天台宗功労者表彰式が去る10月25日午前11時から比叡山の延暦寺会館で開かれました。30年にわたって天王寺住職を勤め、布教に功労があったというので、大樹孝啓天台座主猊下が私に表彰状と記念品(袈裟)を手渡されときには、熱いものがこみあげてなりませんでした。住職30年勤続功労者は全国で56名。東北地方からは6人、福島県は私一人でした。
 ついで、大樹座主猊下からお言葉があり、阿部昌宏宗務総長からの挨拶があり、記念撮影が行われました。続いて水尾寂芳延暦寺執行の祝辞のあと祝宴が行われました。
 今年度は天台宗の住職を50年、30年と勤められた41人の方が出席されましたが、その一人として私も光栄に浴することができました。祝宴の場で水尾執行から「柴田さん。お若いですね」と声をかけられましたが、その一言で励まされて元気が出ました。私は75歳を迎えましたが、今後も日々精進を重ねていきたいと思っております。
 思い起こせば天王寺の住職になったのは、私が40代前半のときでした。中通り生まれで会津との結びつきはほとんどありませんでした。御仏の命じられるままに、単身で会津美里町に移り住んだのです。私は50代で結婚して家族を持ち今日にいたりました。何もない所から出発し、新寺建立と同じような苦労がありました。檀信徒の皆さんのご支援のおかげで、門構えや庭を整備しました。とくに庭に関しては、山形県の鳥海山の石の寄進を受けて、寺院らしい雰囲気になりました。
 住職としてのお勤め以外に、天王寺が会津三十三観音霊場の二十八番札所の高田観音であることから、私は会津三十三観音霊場についての本を過去に出版するとともに、伝教大師最澄様と論争をした法相宗の僧徳一が、会津の慧日寺にいたということを知り、私なりに研鑽を深めております。また、布教活動の一つとして、会津天王寺通信のブログをアップしています。
 できれば私は、これから20年住職を勤めさせていただき、住職50年勤続功労者として、比叡山に招かれるのが夢です。日々精進に努めたいと思っておりますので、皆様のご指導とご支援のほど、何卒よろしくお願いいたします。

           合掌

 

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アジア人の原郷としての中国へのあこがれ 柴田聖寛

2022-10-23 11:33:03 | 読書

 私は団塊の世代に属しますが、好きな詩人に谷川雁(がん)がいます。今では知る人も少なくなってしまいましたが、私の若い頃には、谷川雁と吉本隆明が双璧でした。なぜ私が谷川に惹かれたかと言えば、アジア人の原郷としての「東洋の村」としての中国へのあこがれがあったからです。
 私が一天台宗の僧侶として、中国を訪問したのは、伝教大師最澄や、慈覚大師円仁の足跡を訪ねるとともに、同じアジアの同胞である中国の人たちと、親しくお付き合いをしたかったからです。訪中の回数は、三十代後半から現在まで100回を超えますが、そうした心境になったのは、谷川の『原点が存在する』を読んでいたからです。
 先の戦争での日本の軍国主義を支えていたものは、「大地から引き離された」農民の意識でした。谷川は、戦後の日本の進歩主義が怠惰であったことで「かつての軍国主義の裂け目から、それ(農民)を土台として咲かせることに失敗した」というのを問題にしたのです。
「民衆の歪められた夢」を本当の夢に近づけるために、谷川がこだわったのは「法三章(法律を簡素化する)の自治、平和な桃源郷、安息の浄土」でした。谷川はそのアジアの精神を詩人としての言葉にまとめています。
「日本の民衆が永きにわたってあこがれ、民衆自身が分けもっている乳色の素肌の光…それは下級の村落共同体から流れ出し、今日の大地をなお蔽っている規模の小さな連帯の感情ではありますまいか。この東洋の村の思想こそこの世の壁の幾重を通して貧しい私のなかに流れ入った光の本体ではありますまいか。そして西行が一本の杖にすがり、芭蕉が『その貫通するものは一なり』と叫んで求めていった無名大衆への愛はわれしれずこの遠い源流へ向かっていたのではありますまいか」
 日本と中国との間には、国家間の利害の対立はあったとしても、民衆レベルでの固い絆は、何物にも代えがたいものがあります。アジアは一つ、王道の精神というスローガンを、今こそ噛みしめるときではないでしょうか。日本と中国は、手を携えてアジアの平和の花を咲かせなくてはならないのです。

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