私が生まれたのは二本松市ですが、それこそ東京と比べると本当の空が残ってはいますが、
車社会になって、昔のような空ではなくなってきています。会津に住むようになって、とくに
奥会津に出かけたときなどには、一面の星空に何度も魅了されたものです。そんな私がつい最
近、渡部潤一先生の『なぜ彗星は夜空に長い尾をひくのか』を一読して、あらためて夜空を見
上げるようになりました。
渡部先生は1960年に会津若松にお生まれになり、東京大学東京天文台の上席教授である
とともに、総合研究大学大学院教授の要職にあられます。渡部先生はその本の中で、小学6年
生のときに、1972年10月8日夜のジャコビニ流星群騒ぎの際しての想い出に触れてゐら
れる。小学生であった渡部先生は、小学校の校庭で、今か今かと待ち構えていたら、ついぞ現
れなかったという体験をしたという。そういえば私も若かった時代で、新聞で大きく報道され
たのを覚えています。
この本を手に取って感激したのは、何枚もの彗星の写真が掲載されていたことです。宇宙へ
の夢がどこまでも広がりました。彗星について渡部先生は「通常の恒星とは異なり、夜空に突
然に現れては、星座の間を日ごとに動いて行く。惑星のように規則性があるようには見えず、
まったく予測不可能であった」と述べておられます。だからこそ、吉兆の印として、古代の人
たちは考えたのでした。
天体としての彗星の運動が解明されるようになったのは、ニュートンによって「引力の法則
」が発見され、その法則を適用したのがエドモンド・ハレーで、周期彗星カタログ一番目のハ
レー彗星を発見したというのも、今回初めて知りました。今では「惑星や小惑星はすべてほと
んど円に近い軌道を描きながら、規則正しく太陽のまわりを回っており、惑星同士がお互いに
近づくことはないのに対し、彗星はほとんどが放物線や歪んだ細長い楕円の軌道を持ち、いく
つかの惑星軌道の間を横切って飛び回っている。その中には1994年のシュメーカー・レビ
ー第9彗星のように、惑星に衝突してしまうものさえあることがわかったきた」とも書いてお
られます。
私のような一天台の僧であればこそなおさら、仏法を理解する上でも、宇宙を眺めることで
多くの示唆を得ることができます。この度も渡部先生のこの本から多くの刺激を受けることが
できました。仏教では「輪廻の迷いから解脱すること」が説かれていますが、宇宙の根源の謎
を解き明かすことにも結びつくように思えてなりません。
合掌