比叡山から発する令和六年の言葉は「忠恕」と決まりました。年明けの去る1月1日に、延暦寺萬拝堂にて除幕式が執り行われ、水尾寂芳延暦寺執行より発表が行われました。
「忠」は中と心から、偏「恕」という漢字は如と心からそれぞれできています。それで「忠」は偏らない心を、また「恕」はしなやかな心を表現しています。「真心を尽くし努めると共に、やさしい心を思いやる気持ちで1年間を過ごして欲しい」という願いで選定されました。この書はこの1年間根本中堂と一隅を照らす会館前に掲げられるほか、「比叡山時報」表紙の題字下にも掲示されます。
私なりに「忠恕」という考えますと、今の時代に生きる一天台宗の僧として、伝教大師最澄様が説かれた教えを、どう実践するかだと思います。とくに、私は「臨終遺言合せて十箇条」のうちの「一、我生れてより以来、口に麤言(そごん)なく、手に笞罰(ちばつ)せず、今我が同法、童子を打たずんば、我がために大恩なり。努力せよ。努力せよ」という言葉が思い出されてなりません。
極端な行動に走らずに、完璧ではなくても、若い人たちの手本になるべく精進したいと思っています。人心が乱れ、人と人との争いが続いています。そうした場所からできるだけ離れるためにも、「忠恕」という言葉は、今の世にふさわしいと思います。
合掌