私もかつて叡山学院の一学生であっただけに、久しぶりに後輩たちの天台声明を堪能することができて、感慨ひとしおでした。「第4回平安千年の声明の調べ みほとけの音聲」は去る2月19日に京都府民ホールで開催されました。主催は叡山学院と種智院大学で、第1部は種智院大学の真言声明による「心経会」、第2部は叡山学院の天台声明による「四箇法要」がそれぞれ披露されました。
プログラムの「ご挨拶」で坂本廣博叡山学院院長が述べておられますが、叡山学院は、延暦25年(806)に、伝教大師が朝廷から年分度者2名を賜ったことから始まる教育機関です。天台宗における最高機関と位置づけられています。天台教学を学ぶとともに、声明・法儀・書道など、僧侶として必要な技法を取得する場でもあります。とくに、声明に関しては、各学年とも週3時限の講義・実習があります。
一方の種智院大学は、弘法大師空海が天長5年(829)に創立した綜藝種智院が始まりです。声明については、オール真言の大学といわれるだけあって、古義真言宗諸派に伝わる南山進流ばかりではなく、長谷寺が本山の真言宗豊山派流、智積院を本山とする真言宗智山派流までも含めて授業で教えています。
第一部は種智院大学が真言声明による「心経会」を、第二部は叡山学院が天台声明による「四箇法要」を披露しました。
叡山学院の「四箇法要」では「唄・散華・梵音・錫杖」の四つの曲目が演唱されました。法要の主要部分に先立って、道場を莊嚴(しょうごん)するためのもので、天平勝寶4年(752)4月9日の大仏開眼供養で行われたことが知られています。鑑真和上直々の声明であるとともに、唐の体系だった声明を慈覚大師円仁が日本に伝えたのでした。「呂曲」「律曲」「ユリ」「塩唄(えんばい)」「モロ上がり」「モロ下がり」に特徴があるといわれます。
齊川文泰叡山学院教授がブログラムの解説文で「天台声明とは佛教の儀式音楽であり、西洋のキリスト教儀式音楽であるグレゴリア聖歌やミサの各曲と竝ぶ東洋を代表する宗教音楽です」と指摘されていますが、今回もまた、私は天台声明の芸術性の高さに魅了されました。また、新型コロナウイルスを吹き飛ばすような迫力がありました。わざわざ会津から出かけた意味があったと思います。齊川教授をはじめとして、関係者の皆さんには深く感謝申し上げます。
合掌
(上)が叡山学院による「四箇法要」、(下)が種智院大学による「心経会」