赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

Ⅲ.アメリカでいま起きていること――米国の反ユダヤ主義② 

2024-01-08 00:00:00 | 政治見解



Ⅲ.アメリカでいま起きていること――米国の反ユダヤ主義② :240108情報

昨日からの続きです。国際政治学者の解説をご覧ください)


それから12月5日にアメリカの下院の教育労働委員会で有名な大学の学長3人が呼ばれて質問を受けました。その理由は大学のキャンパスで親パレスチナ・反イスラエルの抗議デモが酷すぎるということでした。

しかし、親パレスチナでも反イスラエルでも、それは政治的立場からすれば良いのですけど、そうではなくてユダヤ人差別の観点から、反ユダヤ主義(antisemitism)のユダヤ人は殺しても良いといった言論が横行していて酷いから、このヒアリング公聴会が開かれたのです。

ハーバード大学のクローディン・ゲイ学長、ペンシルベニア大学のエリザベス・マギル学長、マサチューセッツ工科大学(MIT)のサリー・コンブルース学長の3人が証言しました。それで大学キャンパスにおける反ユダヤ主義(antisemitism)に対する大学の対応について質問したということです。

主に質問したのはエリス・ステファニクという女性の下院議員でしたが、彼女もトランプ派の人であります。この人が「ユダヤ人虐殺を意味する呼びかけは、大学キャンパスにおける行動規範に違反しているのではないでしょうか」ということを、この3人の学長に尋ねたところ、その質問に対して「そうです」と答えた学長は1人もいませんでした。

これはユダヤ人を「殺せ」という意味合いで言っているわけではないのでが、"from river to the sea, Palestine will be free"というのはイスラエルに流れているヨルダン川から海まで、そこにおいてユダヤ人を駆逐しろという意味で使われている言葉です。

イスラエル国家を地図から抹殺しろと言っているのと同じことだという、いわゆる日本語でいうシュプレヒコールといいますか、そのような叫びを学生団体が大学キャンパスでやっています。こういったことがおかしいのではないかと「ユダヤ人虐殺を意味するような呼びかけは、大学キャンパスにおける行動規範に違反すると思いませんか?」と尋ねたら、違反すると答えた学長が1人もいませんでした。

そういったことを言うことが、必ずしもキャンパス内での嫌がらせやいじめに対する規範に反するわけではないと、学長たち3人が口を揃えて言ったそうです。この3人とも事前に打ち合わせしたような感じで、同じような答え方をしていました。ペンシルベニア大学のマギル学長にいたっては、ユダヤ人虐殺を求めるような過激派のシュプレヒコールを非難しなかったばかりか「実際に大量虐殺にならない限り違反ではない」ということまで示唆したのです。

これはおかしいだろうということになり、全米で批判が巻き起こっています。これはユダヤ人たちの問題だけではなく、まともな人だったら完全におかしいでしょう。今までの大学だと人が集まるセミナーやシンポジウムをやるというと、保守派の集会に対しては平気で言論弾圧をされてきたのです。

そういうところに極左団体が殴り込みをかける、あるいは暴力事件が起きそうだから保守系の団体は中止してくださいという形で全てやめさせられていました。

実際に会場開催もできなくなる一方で、BLMのような過激な左翼系や極左リベラルの集会の言論についてはノータッチです。実際上、一流のリベラルな大学では言論自由の原則が守られていないダブルスタンダード、左翼系はいいけど保守系は駄目ということをやっていました。そういった偽善が露見してきたというレベルにまで来ています。

そういうことがあったので、ヘッジファンドの億万長者であるビル・アックマンというユダヤ系の人がいます。ハマスの暴力をサポートして、イスラエルを非難する書簡に署名した反イスラエル・親パレスチナの34団体がハーバード大学にあるそうです。このビル・アックマンはハーバード大学の卒業生ですけど大学に対して「学生たちの名簿を公開せよ」と要求しました。

さらには「テロリストをサポートするような学生の就職を企業は拒絶すべきである」という声明を彼は出しています。要するに学生の名前を公表して、彼らを企業は採用すべきではないと呼びかけるということを言ったのです。大学の学長たちや運営する側は、言論の自由といっても極左の方に対しては甘く、保守系の方に対しては非常に厳しく弾圧する立場にありました。こういうダブルスタンダードがやっていた偽善が発覚してきたということです。

そして、ユダヤ系の人たちも今まで仲良くして黒人差別も反対し、実際パレスチナの人たちに同情的なユダヤ人というのも沢山います。彼らは自分たちが非難されるとは思ってなかったのです。

こういった運動で酷いところだと私が思う部分は、今のイスラエルのネタニヤフ政権・政府がやっていることには反対するユダヤ人も国内外を問わず沢山います。国の外側のアメリカにいるユダヤ人の中でも、ネタニヤフ政権のやり方に反対だと言っている人たちもいるのです。

しかし、こういった極左団体の人たちはハマス支持であって、その区別をつけません。ユダヤ人も長い歴史の中で、キリスト教徒ともイスラム教徒とも同じ国に住んできました。中東でも住み続けてきた歴史もあり、共存してきたのです。

しかし、そういうことを一切忘れて、左翼過激派の人たちは「ユダヤ人を全部殺せ」と言っている今のネタニヤフ政権のやり方に対して反対しているユダヤ人も十把一絡げにして、その政策・政権というものをユダヤ人全体に広げて、ユダヤ民族そのものを抹殺・差別するということを肯定してしまっています。

こういった親パレスチナの団体が、今のネタニヤフ政権のやっていることを非難するのは理解できます。しかし、それがユダヤ人差別に繋がるという話はおかしいです。ユダヤ人の中にも今の政策や戦争のやり方に反対している人たちが沢山います。そういった人たちと連携して「今すぐ戦争をやめよう」と声を挙げるなら理解できますが、パレスチナは支持するけどハマスの無制限の暴力には反対すると言ってくれないと困るのです。

そういう親パレスチナの考え方であれば私も理解できますけど、この人たちの言っていることはハマスの非道徳的な暴力を肯定して、ユダヤ人の中にも「すぐ和平・訂正すべきである」と言っている人たちもいます。それと現在のネタニヤフ政権を同一視してイスラエル国民全体、あるいはユダヤ民族全体を差別し、ユダヤ人全員を抹殺してもいいような言論を展開するのはおかしいでしょう。今までそういうことをやってきたアメリカの民主党の中にあった矛盾というものが、曝け出されてきました。


(つづく)



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