コラム(389):ウクライナ危機は日本の危機
ウクライナは米欧に見捨てられる?
ウクライナ情勢が緊迫化しています。ロシアのプーチン大統領はウクライナ東部のドネツク州とルガンスク州の一部を実効支配する親ロシア派の武装勢力を一方的に独立国家として認める大統領令に署名し、これにより「ウクライナではなくなった」とみなす2つの地域に軍を派遣するよう命令を出した模様です。
この動きに対し、アメリカのバイデン大統領は「これはロシアのウクライナ侵攻の始まりだ」と断言し、ロシアに対する制裁を発表しました。
その内容は、ロシアが欧米から資金を調達できないようにするため同国のソブリン債(政府や政府機関が発行または保証を行っている債券)に制裁を科し、さらに、ロシア政府系の開発対外経済銀行(VEB)や同国の「エリート層」にも制裁を科すというものです。
これに同調して、英国は、ロシアの銀行5行と富豪3人の国内資産を凍結。対象となる個人は、英国への入国や、英国の個人・団体との取引が禁止されるほか、EUもウクライナ東部の親ロシア派支配地域の独立を承認するようプーチン氏に要請したロシア下院議員351人に対し、資産凍結やビザ(査証)の発給制限を科し、27の個人・団体も制裁対象とすることを発表しています。
ロシアのウクライナ侵攻の動きは現段階ではまだ限定的なものですのでこれが大きな戦争になるのかどうかは未知数ですが、仮にプーチン氏が軍を引くことにでもなれば、かつてのキューバ危機後、フルシチョフ失脚という忌まわしい記憶がよみがえるため、簡単には軍を引かせることのできない状況でもあります。最終的には、プーチン氏にとっても落としどころが難しい状況であると言えます。
一方、欧米諸国も苦渋の選択を迫られています。その第一は、経済制裁が歴史的に見てあまり効果がないことをわかっているのですがこれ以外にロシアに圧力をかける方策がないことです。しかも、軍事力は行使したくない。ソ連崩壊以降、有名無実化したNATOにはロシアに対抗する力はありません。
なお、軍事的対決は欧米もロシアも避けたいとの思惑は一致していますので、最終的には欧米側がNATOの枠組みに入りたがっているウクライナを見捨て、ロシアに属国化させるしか最終的な方法はありえないと思います。要は、ウクライナは欧米諸国とロシア間の思惑に翻弄されて、自主独立の夢はかなわなかったわけです。
中国がロシアの論理を使うとき、台湾と沖縄に危機がくる
さて、ウクライナ情勢は日本にとって、アジアの各国にとって他人事ではありません。中国が、米ロ関係の動向をじっと見て、とりわけアメリカがロシアに対する軍事力の行使がないことを判断すれば、まず台湾侵攻、次に沖縄侵攻(※1)に移ることは誰にも簡単にわかることです。
(※1)本年2月4日、立憲民主党の屋良朝博元衆院議員(昨年10月の総選挙で落選)は、自身のフェイスブックに、(「北京五輪の開会式を見て)独立したらスッキリするねぇ」と投稿している。歴史を見ればすぐわかることだが、自国が他国に侵略されるときには必ず内側で手引きする人間が存在する。
特に、中国はロシアの論理である「独立を宣言した親ロシア派を守るため」を使って、「台湾は中国の一部であり、中国人民を保護する」という口実をつけていまにも台湾に侵攻してきそうです。それほど、この論理はいつも戦争や侵略に都合よくつかわれている常套句なのです。
現、蔡英文政権は反中政権ですが、それ以前は親中政権であったため、中国は彼らの保護を口実に攻め込みたかったのですが、いつも米軍が立ちはだかっていました。っ中国は容易に台湾に攻め込めない状況でした。
しかし、ウクライナ問題でアメリカがロシアに対する軍事力を行使しない状況があれば、NATOは有名無実の軍事同盟で、それと同じように日米安保もクアッド(日米豪印戦略対話)も発動しないと読むのは当然のこととなり、中国の台湾侵攻も現実のものとなりそうです。
また、アメリカの現状の力では、軍事同盟を結んだとしても同盟国を守る気力があるかは本当のところわかりません。だから日本政府も米大統領がかわるたびに、日米安保条約第5条(米国が日本を守る義務を負うことを定めた条文)の尖閣を含めた適用を何度も確認しなければならないのです。
北京冬季パラリンピックが終わる3月13日以降、ウクライナをめぐる米欧とロシアの対峙には注目しなければなりません。そのなかでもアメリカがロシアへも軍事的圧力を放棄する形でウクライナの支配権をロシア側に奪われた場合、「アメリカ、恐れるに足らず」と中国が一挙に勢いづきます。
ウクライナ問題を契機にして、国を守るということはどういうことなのか、いま一度真剣に考えてみることが大切なことではないでしょうか。
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