コラム(388): 極端と危機を煽る論理
人は極端な意見を聞かされると意外にもその論理引きずられます。しかも、その論理に「正義」が粉飾されると人びとは熱狂しています。しかし、それを冷めた目で見るとその論理の裏に、ある種、別の意図が隠されているように思えてなりません。
ワクチン狂騒曲
コロナ禍のワクチン接種に対しても、これに反対する人の中に極端な意見があるのをよく目にします。反対するのは個人の意思ですから構わないと思いますが、その思いが主義主張となって他の人の行動にまで干渉しようとする人もよく見かけます。
私もワクチン接種反対派と見られているので、そのような呼びかけが来るのですが、意見が極端すぎて共感できないことが多いのです。むしろ逆に、それを強く主張する背後には何があるのだろうかと考えてしまいます。
先日、カナダでは、コロナ対策への規制に抗議するトラック運転手が米国との国境の橋を封鎖し、最終的に排除されましたが、両国の通商に重大な支障を与えました。そのありさまを見るうちにトラック運転手を唆して騒動に発展させて一番利益を受けたのは一体誰なんだろうと考えることがありました。
実際、日本でもワクチン狂騒曲の前は「PCR検査」一色だったと覚えておられると思います。メディアや御用コメンテーターたちはこぞってPCR検査を主張しましたが、最終的な狙いは政府批判につなげることでした。とくに、テレビ朝日のモーニングショーはまさに倒閣目的のために利用していたことが思い出されます。
結局、人は危機感を煽られると妙に共感しやすいものですが、前述のように、人びとに危機感を煽ることによってなにがしかの利益を得ようとする人たちが一方にいることは忘れてはならないと思います。
余談になりますが、先日、菅直人氏が橋下徹氏にヒトラー呼ばわりをして居直っている事象がありました。これなども彼が維新に対する危機感に自分の正義を加えて発言して維新つぶしを狙ったものだと言えます。しかも、菅直人氏のプライドの高さゆえに、考え方を修正することも橋下氏への謝罪もなしえず、世間の顰蹙を買うだけの事件でした。極端な論理、危機を煽る論理には、本人をもダメ人間にしてしまう諸刃の剣であることも考慮すべきです。
煽られているウクライナ危機
現在、世界中の人びとが抱いている危機感は、ロシアがウクライナに攻め込むかどうかということです。しかも、アメリカをはじめ各国首脳もメディアも今にも戦端が開かれるような情報を繰り返すばかりです。
しかし、前稿の「避けられない文明の衝突」という観点は別にして、したたかなプーチン大統領がウクライナに直ちに侵攻するとは思えません。むしろ、ウクライナ問題を口実に、ロシアの天然ガス輸入に頼る欧州、とりわけドイツなどを揺さぶって天然ガスを高く買い取らせ、ロシア経済の立て直しを図ろうと考えているように見えます。
また、これに便乗するかのように原油価格が高騰しています。ニューヨーク市場では、国際的な指標となる先物価格が一時およそ7年5カ月ぶりに1バレル = 95ドルを超えたようですが、産油国もロシアに見習って供給を出し渋り、原油価格の吊り上げを目論んでいるように見えます。ロシアと産油国の利害は一致しているようです。
さらに、ウクライナ危機に喜んでいるのはアメリカの軍需産業とその周辺の産業です。重厚長大なロシアの兵器は人びとに目に見える恐怖心を与えることはできても時代遅れで、そのことはロシアも認識しているはずです。むしろ、現代の兵器の主流は、無人爆撃機やロボット兵器、AI(人工知能)の活用などハイテク兵器で、それは主にアメリカが開発しています。
実際、オバマ政権の8年間、ドローンによる攻撃は1878回、トランプ政権は最初の2年だけでそれを上回る2243回の攻撃を、アフガニスタンやパキスタン、ソマリアなどで行っていました。
したがって、ウクライナ危機は、アメリカにとって危機に乗じて旧西側諸国に最新兵器を売り込むチャンスであるため、軍需産業に強く支持されるバイデン大統領は危機を煽ることをやめません。利害得失の観点から見ると、人の好い日本は、アメリカの軍需産業にとって絶好のカモと見られているのかもしれません。
一方、ロシアにとってもウクライナ危機は反米諸国に旧式の重厚長大な兵器を売却できるメリットがあります。また、ソ連時代のように反米の盟主の地位をえることもできる可能性もあります。ウクライナ危機の最中、ブラジルのボルソナロ大統領がロシア訪問をしましたが、国際情勢は魑魅魍魎が跋扈している感があります。
結局、国際情勢の変化の奥にはそれぞれの国の利害得失がなんであるか見極める必要があると思います。とくに、危機が語られる場合には、それに乗じて利益を得ようとする集団が必ず存在することは確かです。
極端の論理、危機を煽る論理の裏に「利害得失」を見極める、その上で、現象に対して柔軟に対応していくことが何よりも大切になると思います。
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