コラム(374): 改憲の時はいま
立憲共産党や反体制メディアにとって総選挙の結果は最も憂慮すべき事態となりました。改憲勢力がその要件の3分の2を超えてしまったからです。
改憲勢力が3分の2になった
衆議院定数の3分の2は310です。今回の総選挙では、自民261、公明32の与党に、日本維新の会41、国民民主11を加えれば、4党の合計は345となります。ちなみに参議院の3分の2は164で、現時点の自民109,公明28,維新15に国民民主12を加えるとちょうど164になります。
これで、菅義偉内閣のときに成立させた改正国民投票法の手続きに従って国民投票を行えば改憲が可能となりました。事実、岸田文雄首相(自民党総裁)は11月1日の記者会見で「党是である改憲に向け精力的に取り組む」、翌2日には、日本維新の会の松井一郎代表が「国会で来夏の参院選までに憲法改正原案をまとめて改正を発議し、国民投票を参院選の投票と同じ日に実施するべきだ」とそれぞれ述べています。
これに強い危機感を抱いているのが護憲勢力です。中国政府の機関紙化した琉球新報の社説には「日米軍事同盟を強化すれば相手国との緊張を高め、安全保障のジレンマに陥る(中略)平和憲法の原則の実践こそ求められる」とあるように、改憲への機運の高まりを強く警戒しています。
自民党への疑念
自民党にとって、改憲に本腰を入れて取り組むべきときが来ています。しかし、自民党が意外にも腰が重いのも事実です。なぜなら、自民党の国会議員は、憲法改正の大義のために立候補した人は稀で、実際は地域や組織の利益集団のために活動する存在だからです。
実際、先般の総裁選では憲法改正をメインに打ち出した高市早苗現政調会長の議員票は114で全議員380のちょうど30%でした。これは、自民党国会議員が大義よりも利益を優先する集団であることを証明しています。したがって、好機到来にも関わらず、党執行部が改憲を強く推し進めるかということに疑問が残ります。むしろ、これまでのような解釈改憲でお茶を濁すかもしれないとの懸念が残ります。
解釈改憲論の歴史的意義
解釈改憲とういのは、憲法を正式手続きによって改正するのでなく,その条文解釈を変更することで実質的改憲を実行しようとすることです。
解釈改憲には護憲派からによるものと改憲派からによるものとの二つの流れがあります。
この理由は日本国憲法の条文の曖昧さに起因しています。日本国憲法はGHQの将校団から押し付けられた代物であることはもはや周知の事実ですが、その思想の根幹にはGHQ将校団の社会主義思想へのあこがれが色濃く反映されているため、護憲派は憲法解釈で革命的状況を作り出そうとし、日本を守ろうとする側はこれを阻止するためにかれらの憲法解釈を否定するところから生じたものです。
護憲派の憲法解釈を突き詰めると、外国の勢力を手引きして日本革命を起こすのには大変都合がいいものです。
例えば、「自衛隊は違憲」とすることで、当時のソ連が日本に侵略しやすいように防衛力の削減を目論みした。日米安保条約の反対運動もその一貫です。最近でも、「安保法制は違憲」として集団的自衛権の妨害をはかることで中国の日本侵略の手引きを目論んでいたわけです。護憲という言葉は、実は日本国民を愚弄する代物なのです。
これに対し日本を守る側から、国家存亡の危機を回避するための憲法解釈が提起されました。
これを提起したのは私の師匠の伊藤哲夫先生です。社会党の村山富市氏が自社さ連立政権で首相になった1994年、「自衛隊は合憲」と認めるに至ったのは、伊藤先生のおかげといっても過言ではありません。伊藤先生は1973年にはこの考え方をまとめ、学生の私どもに教育してくださいましたが、そのときのことは今でもよく覚えています。
ちなみに、護憲派の解釈改憲と改憲派の解釈改憲の違いを憲法1条の天皇の規定で見ればそこに大きな差があることがわかります。護憲的解釈改憲で読めば「象徴にすぎない天皇」となるのですが、改憲的解釈改憲では「象徴であらせられる天皇」となります。まさに解釈の仕方で条文の読み方が大きく変わるのです。
解釈改憲の意義を踏まえ憲法改正へ
公布から70年以上経過した日本国憲法はいまだに一度も改正されたことのない世界でも珍しい憲法です。
しかも、今日、露骨な覇権主義で東アジアを呑み込もうとする中国や新型コロナウイルスという、いままでに経験したことない危機に際して、従来の解釈改憲でこれらを乗り越えることができるのかという疑問がでてくるのは当然だと思います。国家の安全と国民の命は諸外国にゆだねるのではなく、自らが守っていかねばならないからです。
護憲の名のもとに諸外国に生命を預けようとする人たちはさておいて、自分の国のことは自分たちで考え、守り、よりよい明日の国づくりをする、という当たり前のことを私たちは実行していかなければならないと思います。
改憲的解釈改憲の歴史的な意義を踏まえ、憲法改正の時がいままさに訪れたことを喜び、新しい時代を築くために勇気をもって踏み出していく好機を逃してはなりません。
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