コラム(363):
アフガンの混乱から学ぶ国際的な支援の在り方
アメリカとタリバンの合意(米軍の撤収とタリバンの米軍攻撃中止)を契機に、タリバンは予想外の速さでアフガニスタン全土を掌握しました。大量の政治難民が出てくるだけでなく、タリバン政権の背後には中国の影がちらついていることから、国際社会は事態の推移を深刻に受け止めています。
NATO(北大西洋条約機構)諸国は、これまでの約20年間アフガニスタン国軍の装備を拡充したにもかかわらず、アフガン国軍はタリバンに抵抗も示さず、国民を置き去りにして逃げ出しました。
結果的に、軍事的支援は時の政権と軍幹部の権力と利益を拡大させ、彼らを腐敗に向かわせただけで国民を守るためではありませんでした。攻撃にさらされている友好的な政権を助けることと、国民の命を守る意思のない政権に軍事援助を与えることとは別問題なのです。
同様に経済援助も、被援助国の自立を促すものでなければ意味がありません。決して依存する体質や政治家たちの欲望の温床になってはいけないのです。
被援助国の政権が国民に支持されているうちはいいのですが、反対勢力が政権に就いた時には援助していた国そのものが否定されることがあります。
アメリカは、かつてケネディ大統領が中南米への開発援助(進歩のための同盟)を提案しましたが、結果は反米国家を量産しただけでした。また南ベトナムはでは当時の政権の腐敗を促進させただけでなく、アメリカを泥沼の戦争に引きずりこみました。
さらに、アメリカの石油利権のもとで庇護されていたイランのパフラヴィー王朝は、イスラム教シーア派による革命で倒され、いまではイランが反米国家の代表となっています。しかも、9.11アメリカ同時多発テロを起こしたウサマ・ビンラディンと、イラク戦争でアメリカと戦ったフセイン大統領は、アメリカから武器の援助を受けて勢力を拡大してきたという経緯があります。
アメリカが支援した国家が反米になっているところを見ると、軍事支援や経済支援が逆効果になっていることがわかります。
日本の対外支援でも、韓国への経済援助が反日意識を高めるきっかけとなっていることはご承知の通りです。日韓基本条約後の5億ドルの経済支援をはじめ、その後のODAが韓国の対日依存に火をつけました。また、日中国交正常化以降のODAが中国を軍事大国にするきっかけを与えただけでなく、江沢民政権以降の反日政策を苛烈なものにさせてしまいました。
援助の相手国もそうですが、日本の政治家も与野党を問わずODA利権に群がっていました。現在に至っても欲望に操られている政治家も多く存在する理由です。
ところで、欧米諸国は中国とタリバンの急接近を懸念していますが、以前から反米という一点で密接な関係が築かれていました。
現在では、アフガンを掌握したタリバンにとって中国の軍事的、経済的支援をたのみにしたいという思惑と、中国にとってはアフガンの豊富な地下資源を手に入れたいという思惑が一致しています。
しかし、前述のように、依存と欲得の関係である以上、実際には不幸な結果を生むことになりそうです。
日本の役割とは
国際社会では有効とみられている軍事的、経済的な援助は双方にとって厄介な結末をもたらしています。
食糧援助が実際には必要とする人には届かない理由は、援助する側には権力が生じ、援助される側は依存により国力を弱められているからです。
つまり、依存を高めるような援助や、援助を通して被援助国を支配下に置こうとする傲慢な考え方を排して、被援助国の政府や国民を自立に導くための人材育成、技術や技能、知識の移転を主眼にする考え方にシフトしていくことが大切です。
こうした観点から日本は、地球上のすべての人びとがより豊かになっていくように導いていく、ここに日本の新しい国際貢献の在り方を見出す必要があるように思います。これが本当の意味で国際紛争を解決させる方策ではないでしょうか。
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