接近遭遇
グリコ事件で終わらなかったのは 犯人の検挙に至らない事は当然として、同一犯と推察される
事件、そして文屋(新聞記者 報道関係)に警察を愚弄する文を送り続け、それを大々的に
取り上げている新聞等の媒体、「あほなけいさつえ」で始まる多少なりとも庶民が警察に対して
思っていることと同じ揶揄する表現があり「義賊」などと言う意見や或いは劇場型犯罪という
言葉を生み出した最初の事件でもある。
犯人は 用意周到で単独犯説と複数犯説が警察内部でも別れた時期もあった。
とっては犯人確保は勿論だが人質が殺害
されてしむことが最大の汚点となるからだ。獏として姿を掴めぬ犯人しかも身代金要求の電話は
子供の声を使って吹きこまれたもので声紋鑑定のしようがなかった。
勿論発信先を割り出す事は可能なのだが、時間がかかる為駆けつけた公衆電話はもぬけの
殻である。
鑑識がその電話ボックスのありとあらゆる場所から指紋を採取したものの、丁寧に拭き取られていて
また下足痕(げそこん、靴の痕跡)さえも採取できなかった。かろうじて採取できたものは、いずれもが
古いものや不鮮明なものばかりであった。
犯人が何人なのかすらわからぬままであるものの、身代金の要求があった事で合同捜査本部は
にわかに慌ただしさを増した。
アホなけいさつへ 挑戦状を送りつける大胆さがあるのはこの慎重な痕跡を残さぬ手口からくる
絶対に捕まらないという自信が見え隠れしていた。
しかし、合同捜査本部長である澤田警部から報道関係者には一切秘匿にせよという言明があった
犯人の失敗があった。それは公衆電話の釣り銭口にかすかに残された指紋だった。
不鮮明だが指紋のスペシャリストが過去の犯罪者リストと照合を試みていたものだ。
*この記事は2016年にかきました