伸晃はフォトグラファーだ。今回の撮影は、芥川賞受賞作家の小説に出てくる
舞台を作家が訪ねるという企画だった。編集者とライターと作家自身で、殺人事件の
舞台となった場所を訪ねた。車の中で作家は雄弁に語った。
ー小説というのはだねぇ~後ろから書いていくものなのだ。結論をだしておいて
そこに至るまでを書いていくから幾らでも書けるのさ。おちを考えればいい。と
そして 作家の出身地である景勝地に着いた。断崖の下には青い海と白波があり
風がやたらと強いところだった。早速伸晃は作家の写真の準備に入った。
作家はひとりで頂き近くに立った。全身と背景がわかるアングルを写そうとの事
ー先生もう少し後ろにお願いします。えーもう半歩、あと1歩、目線くださいー
その時にふいに強い風が吹いた。その後にファインダーを見たら先生がいない
そう、風に飛ばされて崖から下に落ちたのだ。なるほど落下せい・・先生・
あー落下した先生、略して 落花生・・・!あーどうします!小説の通りに
なりましたがと慌てて崖の頂から先生を探したら、偶然にも岩の出っ張りにいた。
ー助けてくれ
そう叫ぶ声が聞こえたが、だれも助けない、威張りやがってなんて声がとか。
らっかせい!と・・・・せんせい らっかせい
おわり