「わたり鳥は北へ」河あきら(別冊マーガレット1974年11月号)
人生ではじめて感動したマンガが何だったのか、覚えてる。そのときの衝撃が、いまも記憶に残ってる。
まちがいなく、これ。私はたぶん小学校の高学年でした。
つまんない毎日を送っていたつまんない女子高生のあさみちゃんが、ヤクザの世界に足をつっこみかけたお調子もんの次郎くんと、ふとしたことから逃避行。
意気投合して、でも真っ当な道に戻ろうとして、次郎くんの故郷をめざすんだけど・・・。
もう・・・切ない。
前回の記事に書いたように、いまになって読み返すと・・・なんてかわいそうな話なの!?
こんなに良い子たちが、なんで幸せになれないの!? ほとんど義憤すら覚えますよ、もう!
この子たちの親だってどんなに悲しむことか。もうもう!
いえ、実はちゃんと読み返したわけじゃなく、パラパラめくっただけなんですけどね。それでも、次郎くんの最後の台詞が私の切なさのツボを直撃し、悶絶ものでした(涙)。
でも、その台詞があるから名作なんですよね・・・作者の河あきらさん、すごいです。
今回、河さんのウィキを調べて知りましたが、これを含めた5作品はBAD・AGEシリーズって呼ばれているそうです。
「赤き血のしるし」
「ゆがんだ太陽」
「太陽への道」
「さびたナイフ」
「赤き~」だけ未読ですが、それ以外はほぼリアルタイムで読みました。
私の記憶では「わすれな草」というのもこの系列だと思うんだけど、ちがうのかな。
どれも無軌道な若者、無理解な大人、葛藤、反抗、犯罪・・・とまあ、いまの少女マンガじゃまずお目にかかれない、濃厚かつ反社会的な要素が満載。
そして全体的にシリアスで大人のムード。別世界をのぞき見るような、危なくかっこいい感じ。
そんな中で「わたり鳥」は、主役カップルが身近で、とても感情移入しやすかった。
次郎くんのキャラが軽くてコメディタッチな描写もあり、彼といっしょにいることを選ぶアザミ(と彼に呼ばれていた)に、とても共感できました。
ずいぶん昔の作品ではありますが、たぶん、いまの若者たちにだって共感できる部分があるんじゃないかな。
だからこの話、時代設定を変えればテレビの2時間ドラマにすごく向いていると思うんですよね。
上手な役者じゃなくていいから、売り出し中の初々しいアイドルたちでやるの。そのほうが、かえって痛々しい感じが出る気がする。夏のスペシャルドラマ、みたいな企画でどう?
どこかのテレビ局で考えてくれないかなあ。
こちらは同時収録されていたコメディで、いま読んでも好きな話です。
河あきらさんのコメディで有名なのは「いらかの波」だと思いますが、シリアスとコメディ、両方を描き分けられるのがまた魅力的でした。
これらの作品、再販されていない気がしますが、もったいないですよね。
たしかに「典型的な昭和」な部分が多い作品ではありますが、ほら、映画界では石原裕次郎やら小林旭やらの作品っていまも見られるでしょ?
マンガの世界だって、それと同じようにしてもらいたいものです。
つづきます