冬坊、8歳。
さすがに、以前みたいにしょっちゅう泣いたりはしなくなってきた。
はずだけど。
先日の夕方、お風呂の時間なのに、姿が見えない冬坊。
階段をのぞくと、踊り場でひとり涙している、彼の姿が。
わけをたずねても、答えない。お風呂に入っても、メソメソしているだけで言おうとはしない。
お友達に意地悪でもされたんだろうか。何か嫌なことがあったんだろうか。
ついに来たか、と思いましたね。
何が来たかといえば、「息子がひとりで泣いていて、親には理由を絶対言わないという状況」が。
というのも、前にマンガでそういうシーンを読みまして。
青沼貴子(昔「ママはぽよぽよザウルスがお好き」で育児マンガを世に知らしめたマンガ家さん)の「かわいいころを過ぎても」。
息子さんの成長過程を描いた実録マンガで、とっても面白かったんですが、その中のワンエピソードが、涙のシーン。
しかも、大きくなった息子さんに、なぜ親に言わなかったのかとたずねたら、「うっとうしかったから」という返事がきたという後日談つき・・・。
それを読んで、私もキモに命じました。
いつか我が家にも、同じ状況がくるにちがいない。そのときは絶対に、しつこく理由をきくのはやめよう、と。
ああ、ついにその日が来たのね。冬坊ももう3年生。大人の階段を登り始めているんだわ・・・。
でもどうしよう。もしも、いじめられていたりしたら・・・。
しかし、冬坊の大人の階段は、まだだった。しばらくすると、自分から白状した。
「書写の教科書がみつからない・・・」
は?? 教科書?
明日の時間割をそろえていたら、教科書がないことに気づき、ショックで泣いていたらしい。
早く言ってよ、そんなこと・・・。
てか、泣くほどのこと? 担任の先生、そこまで怖い人には見えないんだけど。
冬坊にきくと、そんなに怒られるわけでもないらしい。
しかし、真面目な冬坊は、トイレに入っているときも泣いていた。
何やら聞こえてくるので、ドアに近づいてみると、中からはこんな声が。
「・・・どこいっちゃったんだろう・・・ヒック・・・ヒック・・・」
これがいじめられて泣いているんだったら、かわいそうで耐えられないところだけど・・・教科書・・・。
ごめんなさい、冬坊。
人の不幸を聞いておいてなんですが、母は思わず心の中で叫びましたよ。
か、かわいい・・・!
おうちにないなら、絶対学校にあるよ、と家族でなだめすかして、翌朝、冬坊を送り出しました。
結局、教室の棚の上にありました。
授業の前に発見して、難局をのりきった冬坊。
なにごともなかったかのように、元気に帰宅したのでした。
めでたし、めでたし。