「勝手にセレモニー」高橋由佳利(りぼん 1981年4~8月号)
「りぼん」からもうひとつ、大好きだった連載を。
映画監督の父親とうまくいかず、自分自身にも行き詰っている女子高生の二詩子(ふじこ)さん。
謎の後援者のもと名門女学院に転入してみると、お嬢様のはずの生徒たちは、教師にかくれてバイトしながら自主映画作りに燃えていた・・・。
とにかく生き生きしている。
お嬢様たちのまぶしいこと。映画作りの楽しそうなこと。
彼女たちに感化されて変わっていく二詩子さんの気持ちに、同感です。
これだけのキャラたちなんだから、できればあと一回分くらい多く連載してもらいたかったなあ。
作者本人だって、とくにラストのほう、もっとページ数や大ゴマをいっぱい使って描きたかっただろうと推測。もちろん筋立ての面白さをそこなうものではありませんが。
女子校もの、女子寮ものに弱い私です。自分自身も中学からどっぷり女子校育ちの筋金いり。
ちょうどこのころ、氷室冴子さんの「クララ白書」「アグネス白書」も流行っていて、寮生活にすごくあこがれました。
そして大学では、なんと女子寮に入っちゃいました。
いえ、たまたま付属の大学が自宅から遠かったため、大学敷地内にある寮に必然的に入るしかなかったんですが・・・。
でも臆病な私が迷うことなく寮に行けたのは、マンガや小説のパワーのおかげだと思います。
ちなみにリアル寮生活は、大学生ともなるとみなさん自立しているため、高校生みたいに濃厚な関係は皆無でありました。
ちょっと残念(笑)。でもそれなりに楽しかったですけどね。
こちらは「倫敦階段をおりて」という読み切り。
雑誌から切り取ったものなので、年月があらわれてますね~。いったい何十年前なのか(苦笑)。
でもこれほど時がたってから読み返してみても、変わらず魅力的なお話でした。
何が魅力って、カラッとしたユーモア感覚、ドライな読み心地、これがとても気持ちいい。
主役の性格がカラッとしているわけではなく、むしろネガティブで切ない事情やコンプレックスもいろいろあるんです。
それなのに、仕上がりはカラッと陽性。湿気がない。
だから主役に共感しつつも、楽しく前向きに読めちゃう。
これは高橋さんのどの作品にも共通の、得難い個性ですね。
ウェットな悩みをウェットに描くのは、きっとかんたんなんですよ。それをドライに表現できるのは、心が強いからじゃないでしょうか。
以前の記事で「昔のマンガは切なくて読み返せない」なんて書いた私が、平気で読み返せるのもそのおかげ。
つまり切なくない。もちろん、ほめ言葉ですよ。
高橋さんはその後、なんとトルコのかたとご結婚、ご出産。
その体験談をエッセイにして大人気になりました。いまは日本にいらっしゃるようで、ブログによるとご主人はトルコ料理店を営んでいるみたいです。
なるほど・・・あの湿気のなさが、もしかして大陸的な恋愛を引きつけたのかなあ、なんて、勝手に思ったりしています。