没しつづける海の波に流され、わたしの湊へ降り立った小さな木の葉。エホバ。
わたしは今でも、彼のことを想い、悲しみの果てに連れ去られるのです。
愛しい彼が、殺されるまえに見た夢のなかにわたしは現れ、彼に向かって手を差し伸べ、わたしはこう言うのです。
「わたしと共に、逃げましょう。あなたの罪は、赦された。もう…もうあなたは実際に経験しなくとも良いのです。未来に生きるわたしたちすべてが、あなたの経験を追体験し、罪は贖われた。わたしたちは無数の次元に同時に生きていて、自分の本当に望む世界へ、自由に移動することができる。あなたはもう、この先起こり得ることを経験せずとも、先へ進むことができるようになった。わたしはあなたを救いに、未来から遣って来た。此処から、わたしと一緒に逃げましょう。」
彼は夢のなかで、わたしの前で、座り込んで項垂れている。
そして乾いた口元を開いて、息のような声で答える。
「その世界は…真に素晴らしく、ぼくはまるで、何も知らない幼なごのように、夕陽に反射されたぼくらの家の前で、愛する家族と共に、ぼくは微笑んでいる。でも…今ぼくは、ぼくは、今、みずからの罪を、みずからの手によって、報わなければならない。ぼくの罪は、だれにも、代わりに贖うことはできない。ぼくはもうすぐ、醜い肉塊と化すが、魂は、きっと、安らかでいるだろう。神が、行くべき処へ、ぼくを導いてくださいます。何も心配しないでください。無事に成就することを、どうか祈ってください。」
彼のまえには、いつの間にかイエスが立っている。
そしてわたしの目にまえに二人のメシアがいることをわたしは知るが、イエスは、彼を見つめ、涙を流されている。
イエスは、終りのない涙を、ひとりで流されている。
まるですべての存在が、いつの日かこの彼と同じ言葉をイエスに向かって言う日を、知っているかのように。
どれくらいの時間、イエスは彼のまえで泣いていただろう。
しかしやっと、イエスは彼に向かって言った。
「あなたの真に望む死と、あなたの真に求む受難をあなたに与えん。」
そして、イエスは天へと、寂しげな後ろ姿で帰られた。
わたしは夢から醒め、この悲しみに、神に感謝を捧げた。
エホバよ。果てのない世界を創造されたわたしの愛、エホバよ。
あなたはすべてを悲しみ、すべてを求められる。
すべてが永遠で在る為に。