彼と一緒に巨大な大観覧車の非常階段を雨が降るなか登っている。
これは壮大なゲームで、僕らは眠ることなく早朝から登ることに決めたんだ。
鉄の階段は雨で濡れているから滑らないように気をつけなくちゃ。
それにしてもなんて大きな観覧車だろう?
大きすぎて全体像さえ見えない。
チケットはもう買ってある。
僕らは一番乗りだった。
ここまで車で来たっけ。
周りは海か広い湖だよ。
透明に近い色。
空も白くて遠いようで近いね。
透明な秩序の世界だよ。
でも何を失ったんだろう?
預言を失ったんだ。
そうだ僕ら、預言を食べちゃったんだ。
夢を食べるバクみたいにね。
何もここから消えることなんてないさ。
ここから僕らが消えてしまうことも?
そうだよ、だって、ここはスタート地点。
始めるために今ここに僕らいるはずなんだ。
でもなんのゲームか、まだ知らないだけ。
彼らは僕らを観てる。
試されているんだ。
僕らが何を選んでどう進むのか。
どのドアを開けてどこへ逃げるのか。
この観覧車だって、僕らがここに来るまではなかったはずなんだ。
何も知らされていないゲームを僕ら始めようとしたんだから。
あの角を右に曲がっただけで全然違う世界があった。
外に非常口は用意されていた。
振り向いてご覧。
誰もいないはずだよ。
振り向くと、きっと目眩を起こして落下するよ!
でも、霧が深くて、前もよく見えないな。
もうすぐだよ。
観覧車は今も回り続けてる。
誰かを心配させ続けるんだ。
気づかないうちに、もういるよ。
誰かを不安にさせ続けるんだ。
誰かを憂鬱にさせ続けるんだ。
誰かを孤独にさせ続けるんだ。
もうゲームは始まってしまったからね。
僕らは当分、観覧車のなかで暮らすんだ。
一人で乗り込まなくちゃいけないって誰が決めたの?
さあ、ガラスの向こうにいる人たちじゃないかな。
ほら、僕らに指図している。
でも二人で乗っている人もいるし、三人で乗っている人もいるよ。
そう見えるだけだよ、多分彼らは一人なんだ。
大丈夫。できるだけ近くに乗り込めるようにするから。
互いに見える席に座るようにするよ。
幾つも層になったガラスが僕らを隔てているだけ。
でも隣の席のチケットは売り切れてた。
誰が買ったんだろう。
やっと着いた。
ここで待っていたらやってくるよ。
乗り込むときは足下に気をつけるんだよ。
傘は?この赤い傘はどうするの?
もう必要ないから、消えてしまうと想うよ。
やって来た!
さあ早く乗って。
急いで乗り込む。
ドアが閉まる。
ガラスのドア。
赤い傘、赤い傘だけ見える。
傘を飛ばした。
微笑んでる。睫毛が水滴を弾く。
微笑みながら、透明な海に溶けて行った。
一体、彼は誰だったんだろう?
ガラスの窓の外、たぶんぜんぶ揃ってる。
けれど不確かだ。
全部がここにあるはずなのに。
不鮮明だ。
まだ隣には誰も乗ってこない。
待ち望んでる!
知っている。
誰かがやって来ることを。
Deerhunter - Cover Me (Slowly) / Agoraphobia
これは壮大なゲームで、僕らは眠ることなく早朝から登ることに決めたんだ。
鉄の階段は雨で濡れているから滑らないように気をつけなくちゃ。
それにしてもなんて大きな観覧車だろう?
大きすぎて全体像さえ見えない。
チケットはもう買ってある。
僕らは一番乗りだった。
ここまで車で来たっけ。
周りは海か広い湖だよ。
透明に近い色。
空も白くて遠いようで近いね。
透明な秩序の世界だよ。
でも何を失ったんだろう?
預言を失ったんだ。
そうだ僕ら、預言を食べちゃったんだ。
夢を食べるバクみたいにね。
何もここから消えることなんてないさ。
ここから僕らが消えてしまうことも?
そうだよ、だって、ここはスタート地点。
始めるために今ここに僕らいるはずなんだ。
でもなんのゲームか、まだ知らないだけ。
彼らは僕らを観てる。
試されているんだ。
僕らが何を選んでどう進むのか。
どのドアを開けてどこへ逃げるのか。
この観覧車だって、僕らがここに来るまではなかったはずなんだ。
何も知らされていないゲームを僕ら始めようとしたんだから。
あの角を右に曲がっただけで全然違う世界があった。
外に非常口は用意されていた。
振り向いてご覧。
誰もいないはずだよ。
振り向くと、きっと目眩を起こして落下するよ!
でも、霧が深くて、前もよく見えないな。
もうすぐだよ。
観覧車は今も回り続けてる。
誰かを心配させ続けるんだ。
気づかないうちに、もういるよ。
誰かを不安にさせ続けるんだ。
誰かを憂鬱にさせ続けるんだ。
誰かを孤独にさせ続けるんだ。
もうゲームは始まってしまったからね。
僕らは当分、観覧車のなかで暮らすんだ。
一人で乗り込まなくちゃいけないって誰が決めたの?
さあ、ガラスの向こうにいる人たちじゃないかな。
ほら、僕らに指図している。
でも二人で乗っている人もいるし、三人で乗っている人もいるよ。
そう見えるだけだよ、多分彼らは一人なんだ。
大丈夫。できるだけ近くに乗り込めるようにするから。
互いに見える席に座るようにするよ。
幾つも層になったガラスが僕らを隔てているだけ。
でも隣の席のチケットは売り切れてた。
誰が買ったんだろう。
やっと着いた。
ここで待っていたらやってくるよ。
乗り込むときは足下に気をつけるんだよ。
傘は?この赤い傘はどうするの?
もう必要ないから、消えてしまうと想うよ。
やって来た!
さあ早く乗って。
急いで乗り込む。
ドアが閉まる。
ガラスのドア。
赤い傘、赤い傘だけ見える。
傘を飛ばした。
微笑んでる。睫毛が水滴を弾く。
微笑みながら、透明な海に溶けて行った。
一体、彼は誰だったんだろう?
ガラスの窓の外、たぶんぜんぶ揃ってる。
けれど不確かだ。
全部がここにあるはずなのに。
不鮮明だ。
まだ隣には誰も乗ってこない。
待ち望んでる!
知っている。
誰かがやって来ることを。
Deerhunter - Cover Me (Slowly) / Agoraphobia