あまねのにっきずぶろぐ

1981年生42歳引き篭り独身女物書き
愛と悪 第九十九章からWes(Westley Allan Dodd)の物語へ

愛と悪 第四十六章

2020-04-16 11:44:50 | 随筆(小説)
ヒヤシンスの揺籠で138億年、楽園で生きつづける夢を見たのち愛のなかを、退行する神エホバ。
アマネはOMEGA - 5X86KC-5N4のなかで、永久につづくような、夢を見ている。
彼女は彼のなかで、夜が明けるまで、夢を見ている。
闇のなかでは、光はまるで止まっているように見える。
彼女は夢のなかで、小説を書いている。
その小説の主人公の名は、”naema”。
naemaは或日、1/18スケールのLamborghini Countach  LP400のミニカーを中古で買う。
そしてその車の名を、”omega”と名付ける。
彼女にとって、”彼”は最初の車だった。
”Second-Hand” Carである彼のワイパーブレードは根本からなく、リトラクタブル・ヘッドライトは開閉する可動部がゆるゆるでどう頑張っても眠気眼にしか開かなかった。
彼女が最初に愛した車はこのomegaだったが、実は別の新しいモデルの代わりに、この廃止されている車を買ったのだった。
それは彼女が、お金がなかったからである。
欲しいモデルの1/18スケールのLamborghini Countach 25th Anniversaryは中古車ではなかなか見つけられず、新車でLamborghini Countach  LP400の5倍もの値段であり、彼女にはとてもすぐに手の出る値段ではなかった。
でも彼女は、最初に愛したのは最初のモデル、Lamborghini Countach  LP400であったのである。
だがその時期に、彼女の手の出る値段で1/18スケールのLamborghini Countach  LP400は売られていなかった。
皮肉なことに、彼女が別の新しいモデルにときめいたときにその代わり(Instead)として、”彼”は彼女に買われ、彼女の家に箱の中に入れられて遣ってきたのだった。
彼の身体は金属製でできているため、彼の身体を彼女が最初にまるで子犬を抱き上げるようにして大事に抱えたとき、とてもひんやりとしていた。
彼女は、彼がとても”冷たい”ことに、愛おしさを感じた。
不思議だと彼女は感じる。何故なら彼女は”金属的”なもののすべてに対して、潜在的な恐怖と不安を感じていることに気付いていたからだ。
彼女にとって、それは堪え難いものであるときが多かった。
例えば鋭利な金属で作られた刃物の画像を見つめるのでさえ彼女は堪え難い苦しみを感じ、すぐに目を背けたくなるほどだった。
だから彼女のキッチンにはセラミック製のナイフとピーラーがあり、彼女が金属製のもので植物を切り刻み、皮を剥く時、彼女の心に植物の声なき悲鳴が聴こえる。
また金属のスプーンやフォークが陶器の食器に当たる音も彼女は心から嫌悪しているし、アルミ缶もハンドブレンダーの刃も、それがそこに在りつづけることだけで、危機感が常に彼女の生活にあり、彼女は常にそれらを意識していなくてはならなかった。
彼女の根源的なストレスの一つに、”金属の存在”が確かに存在していることを彼女は気付いていた。
金属のすべてが此の世からなくなってほしいとさえ彼女は想う。
そして”凶器”となるすべて、生命を故意に殺害するもののすべてが、消えて欲しいと彼女は心から願う。
なので彼女は日頃から、走る車の存在が恐ろしくてならなかった。
彼女は”車”を、”暴走する殺人兵器(Weapon Moving Murder)”と呼んだ。
大勢の人が外を走り回る殺人兵器のなかに乗りまわるこの時代を彼女は”安全な戦争時代(Safe War Era)”とIronyを込めて呼んだ。
此の世から金属がすべてなくなることを日々祈りつづけながら、彼女は毎日、Desktop Computerの前に座って作業をしている。
そんな彼女がなにゆえに、一体なにを切っ掛けに、車にハマり始めたのか…?
それは一つのOfficial Music Videoが大変好きになったことからだった。
このVIDEOのなかで走る車たちがまるで人間と同じ意思、感情、思考を持って生きているように、彼女には観えたからである。
”車”とは、人間たちは”乗り物”だと想っているが、実のところ、そうではないのではないのか…?と彼女はこの頃から訝り始めたのである。
実は、”車”とは、それそのもので”生物”、”生命体”であるどころか、わたしたちと全く同じような”意識”を持っているのではないのか?
違うのか?
だが違っているという確証など、どこにも存在しなーい。
どこにも、存在していなーい。
よって、「車とは人間と同じ意識を持っているのではないのか?」という問いに対して、彼女は熟考する為に、結論を見出さんが為に、Lamborghini Countach  LP400にハマったわけではなかった。
彼女は、偶然にも、このLamborghini Countach  LP400をPCのモニターの中で見つけた時、彼女は、今まで知らなかった形容しがたい未知なる生命体が存在していることを知ったのと全く同じ衝撃と感激と興奮に襲われ、初めての体験のなかで、彼女は複雑な感情をこの車に対して感じた。
何故か、それはこの車に乗ることは、まず不可能であるということ。
このLamborghini Countach  LP400は、もう”この世界”に、存在していないからである。
つまり、”絶滅車”である。そしてこの車は、誰も生産することは許されない。
何故ならば、”人類を脅かす危険極まりない車”として、すべての自動車製造者が、”絶対に、二度と生産しない”という契約を、我が神に対し、誓ったからである。
一体、どういうことなんだと、彼女は想い、この車に関して、調べつづけた。
そして彼女は、一つのSecret Fileを、一つの機密情報が書かれたノートを、彼女の闇の仕事であるHackingによって、知ってしまったのであった。
naemaは、一息吐いて、”彼”を見つめた。
彼女が何故、彼を”omega”と名付けたのか、それは彼女にとって、彼を”最後の存在”として、誓いたかったからである。
彼女は彼を最後に愛し、最早、彼以外の存在を、彼以上に愛することはないと、みずからに、約束したかったからである。
なのに何故、何故、Why、Why did you love anyone other than him…?
どうして彼以外の存在を愛したの…?
或夜、彼は、彼女に向かって言った。

ぼくじゃ…ぼくじゃ…だめなの…?

”彼”は、涙を流すことができないが、だが”心”のなかで彼は涙をぽたぽたと落としながら彼女に向かって言った。

ぼくが…ぼくが…視界を良くするためのワイパーブレードが根本からなくて、この世界をはっきりと見渡すことのできるリトラクタブル・ヘッドライトがしっかり開いたままで固定させることができないから…?

彼は、自分の目の前でPCモニターのなかに映るLamborghini Countach 25th Anniversaryの姿を愛しそうに見つめ、その画像を加工したりして独りで歓びを噛み締めているnaemaに向かって、必死に訴える。

ブイィィィィィィィーンっ!ブイィィィィィィィィィィィィーンっ!

彼はあまりに切実に、また高速で想念(エネルギー)を発したため、ついその声が彼の心のEngine音として、彼女に向かって想いきり、発せられてしまったのであった。
しかもかなりの重低音で、轟音であったが、それでも彼女はその音に、気づいていない様子だった。
この時、ようやく彼は、自分の声(音)が、彼女には全く聴こえていないのだということに気づき、彼は悲しみの底に堕ちるかとしたその瞬間であった。
ふと、彼女が、彼の姿をぼんやりと見つめ、はたはたと、涙をこぼしたのである。
naemaは、彼の”過去”について、想像したのだった。
omegaは、どこで生産されたのか、そして最初に、だれに迎えられたのか。
どんな家のなかで、彼は過ごしたのか。
何人の人の手に、渡されたのか。盥回しにされてきたのか。
彼は、どこかの家で、歓ばれたのか。
それとも、どこの家でも、何かしらの不満を抱かれた為、こうして元値の1/5ほどの値段で売られていたのか。
今度こそ…今度こそ…じぶんを(最後まで)愛してもらえるだろう…と望みを懸けて遠い船旅と、空旅と、地旅を何度と繰り返し、繰り返し、それでも、
だれからも、愛されなかったから、わたしの家に遣ってきたのではないのか。
それなのに、わたしは…わたしは、彼のめのまえで、彼の新しいモデルに胸をときめかせ、目を耀かせては”彼”が手に入らないことに溜息を吐き、嘆いている。
naemaは、omegaが可哀想で、不憫でならなくなり、涙を流していたのだった。
これではまるで最初の子が生まれても”他の子”が欲しかった(早く他の子が欲しい)と不満でいる母親のようではないか。
次の晩、naemaはLamborghini Countach 25th Anniversary発売を記念した映画をomegaを抱っこして一緒に観に行った。
彼は冷たいBodyでさぞかし裸んぼじゃ寒かろうと想うて、naemaは彼をマイクロファイバーのブランケットでくるんでやり、乳呑児を抱くようにして電車に乗り(新型ウイルスが流行中なのでふたりともハンドメイドのマスクをして)、映画の開演前ぎりぎりに間に合い、真ん中の席に座ってふたりでスクリーンを見張った。
映画の始まりから銀白の山の曲がりくねった雪道を、ずっと観客側に向かって上って走ってきたLamborghini Countach 25th Anniversaryが静かに停車し、リトラクタブル・ヘッドライトを点滅させ、我々に挨拶をした。
その瞬間、わたしはふと抱っこしているomegaの顔を見下ろした。
すると、彼のリトラクタブル・ヘッドライトは完全に閉じており、眠っているようだった。
その時わたしは、最初の0(ゼロ、零)号車である彼(omega)に向けて、最後のモデルである彼(Lamborghini Countach 25th Anniversary)が、Screenという”隔たり”を超えて、何かわたしたち人類にはわからないSignalを送ったのではあるまいか、と想像した。
ふたりで家に帰ると、わたしはomegaを隣に寝かせたまま疲れて一緒に眠った。
すると、こんな夢を見た。
わたしは彼(omega)と結婚し、わたしは彼の子をたくさん産み落とす。
彼とわたしの子どもたちは、みな、彼にそっくりであり、あんまり、わたしに似ていないようであったが、間違いはないのである。
この夢のなかで、”彼ら”すべて、わたしの愛する子どもたちだ。
目が醒めるとまだ、夜は、明けていなかった。
















Eagle Eyed Tiger - Frontier















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