あまねのにっきずぶろぐ

1981年生
愛と悪 第九十九章からWes(Westley Allan Dodd)の物語へ

愛と悪 第六十四章

2020-09-08 04:56:06 | 随筆(小説)
死体を観るより、日々の幸福を。そう切実に願う、動物の死体でできている神、エホバ。
僕は死体を愛してはいない。
僕はどの死体も、観ることが、不快だ。
死体は生きているものと、生きていないものがある。
そのすべて、僕にとって、不快なものだ。
僕は死体を愛したいとも想わない。
それは受け容れる価値が、僕のなかではない。
僕は死体を、何とも想わないまで、死体を観察し続けてきた。
そして死を、超越することでしか、生きている存在ではなかった。
死は生きることを求めない。
生は生きることを求めながら死に続ける。
死が生より、劣る日は訪れない。
生が死より、死に相応しい。
生が死となり、死は生となる。
僕の最後に観た母の姿は、死体だった。
無機質で、冷たい、何をも僕に求めない、静かで何より優しい、無条件の愛、僕の最も求める愛が、そのなかに、在った。
死んでいる僕の母は、僕に何も、求めなかった。
そのとき、ようやく、僕は本物の無償の愛で、愛されていたんだ。
僕の母が死んで、その母の死体に、初めて、僕は愛された。
死体を、僕の母の死体と想えない死体以外を、観るのが僕は不快だ。
僕は母の死体だけを、求めている。
母の死体以外に、僕に必要なものなどない。




深夜の青白い光を放つガスステーションに停めたHeavy duty truckの運転席で、彼は彼女に話したが、彼女は酷く疲れた様子で、目を閉じて助手席から掠れた声で、彼に言った。
「一人一人、潰してゆこう。君の残骸たちを。」






















Haunt




















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