※前回の仙台の記事はこちら(11節・藤枝戦、2-3)
※前回の山形の記事はこちら(13節・岡山戦、0-2)
<仙台スタメン> ※()内は前節のスタメン
- ベンチ外が続いていた真瀬が8試合ぶりのスタメン。
- 遠藤は以前離脱中。
- その他故障の疑いは、ホヨンジュン(8試合連続ベンチ外)・キムテヒョン(2試合連続ベンチ外)辺りか。
<山形スタメン>
- 前節(藤枝戦、3-2)出場停止だった野田はベンチに留まる。
「Jリーグ30周年マッチ」の盛り上げ策の一環であるダービーマッチ。
東北の地では当然ながら「みちのくダービー」が組まれ、他方の秋田・いわきも同様に「東北ダービー」が組まれました。
ひょんな事から、今季途中から山形の指揮を執っている渡邉晋監督。
これにより仙台・山形双方で監督経験を持つ事となり、その心境の複雑ぶりはいかほどであったか外野からは決して判らず。
仙台は自身が約6年に渡ってJ1で監督を務めたクラブであり。
現在J2とはいえ、長年上位カテゴリで磨かれた実力が自身に対し牙を剥く、そんな試合展開だったでしょうか。
入りから攻め込む仙台に対し山形ディフェンスは果敢にアタックを仕掛けていきますが、巧みにダイレクトパスでいなされたり、反則で止めるしかない状況を強いられ。
前半3分にスローインを受けた氣田が直ぐさま西村に倒され、右サイドからのフリーキックに。
ここから、キッカー鎌田のクロスを直接GK後藤雅が抑えにいくも、触れず流れた所に大外で小出がボレーシュート。
枠を捉えられず終わりましたが、この好機が両チームの地力の差を表していたでしょうか。
その後山形は最後方からビルドアップを試みるも、仙台のプレッシングの前に自陣でボールを失うシーンが続発。
そこからショートカウンターに持ち込まれ、何とかシュートは撃たせなかったものの、攻撃も守備も前途多難な立ち上がりを強いられます。
しかし9分のチアゴの敵陣でのパスカットを成功させ、ビルドアップとハイプレスの2つが持ち味のチーム故に、得意手を1つ生み出した事で流れを奪い。
仙台陣内へと押し込み、スローインからパスワークで攻めたのが13分。
シュートには持ち込めずも、続く攻撃ではエアバトルを制し、右サイドでイサカがボールを持って奥を突いたのちカットイン。
ディフェンスに遭うも繋ぎ、代わって田中がエリア内へカットインを仕掛け、放たれたシュートは右ゴールポストを直撃。
決定機を迎えた事で、ここから互角の展開に持ち込みたい状況となりました。
その後、仙台はパスワーク中心で攻め上がるもシュートは撃てず。(11分にコーナーキックから鎌田がネットを揺らすもオフサイドで無効に)
逆に山形は14分にチアゴシュート(ブロック)→南ミドルシュート(枠外)の連撃など、着実にフィニッシュに繋げ。
対照的な流れで、シュートを放てる分山形に流れがあるといったここまで。
それでも次第に実力差が表れる展開となり。
23分には左→右への展開から、真瀬のスルーパスは山田寛には繋がらずも、拾った小野をそのままコーナー付近へと追い込んだ末に縦パスをカットして攻撃継続する仙台。
ここからもシュートには繋がらなかったものの、力の差がこうした「圧力に屈する」ような絵図を生み出していた感があり。
これを受けた山形、次第に裏狙いのロングボールへと傾倒していき、その結果攻撃機会を得れず。
こうして仙台が攻撃し続ける土壌が生まれましたが、そのビルドアップの形は、右サイドの真瀬が高目の位置を取る姿勢で一貫しており。
残りの3人が3枚の最終ラインを作るという形で固定。
始めは山形・イサカの推進力を警戒しての事かと思われましたが、仙台の攻撃時間が長くなると、そんな懸念はどこ吹く風となります。
逆に押し込まれた山形が、(小野が上がれずに)常時仙台と同じ右肩上がりの形からのビルドアップを強いられるようになり。
そして32分、その右サイドで山形のビルドアップに圧を掛け、敵陣深めでのボール奪取に成功した仙台。
拾った鎌田がカットインで右ポケットへ切り込んでマイナスのクロス、これはブロックされたものの、拾い直した鎌田が再び繋ぎ直し。
これをニアサイドで氣田がシュート、ゴールネットを揺らし先制点に辿り着いた仙台。
試合展開同様に、スコアでもリードを奪いました。
反撃に出たい山形、とにかく仙台の圧力への対処が望まれる状況。
それでも仙台もそのチーム力通りの成績は残せていない状態(4勝5分5敗)で、やや迷いが出てしまっていたか。
37分、山形のパスワークに対して4-4-2ブロックで構える姿勢を見せるも、最終ラインへの戻しを受けてのプレッシングが曖昧に。
そして相良が中途半端に前に出た隙を突いて西村が右へ縦パスを通し、そこから前進していく山形、スルーパスに走り込んだ山田拓のグラウンダーでのクロス。
これをチアゴがニアに入り込んで合わせましたが、GK林がこのシュートをセーブして同点ならず。
再びの決定機に、まだ山形にゴールへの道筋がある状態。
仙台はそれを断たんと、長らくポゼッションを続ける時間を作ったのが40~42分。
真瀬を最前線に残した上でボールを上下動させるという、追加点の脅威を与えたうえで山形のプレッシングをいなし続けます。
そして最後にスルーパスが真瀬に送られたものの、入れられたマイナスのクロスはカットされ実らず。
アディショナルタイム、イサカのクロスをニアサイドでキャッチした林が勢い余ってゴールラインを割ってしまい、山形の右コーナーキック。
ここからショートコーナー→クロスは跳ね返されるも、2度目の小野のクロスを熊本が合わせヘディングシュート。
しかしゴール左へと際どく外れてしまい。
決定機の数では上回った山形でしたが、結局0-1のまま前半終了を迎えました。
ハーフタイムで動いてきた山形。
山田拓→小西へと交代し、藤田が右サイドバックへ回るという最近のトレンドの布陣を採ります。
その入りの後半1分、右サイドから縦に速い運びを経てチアゴがエリア内右角を突くシーンを作り。
そこでのボールキープを経て裏へと短く出し、走り込んだイサカがシュートしますが右サイドネット外。
いきなりゴールに迫った山形に対し、仙台は前半と同様にパスワーク重視で山形のプレッシングをいなし、攻撃機会を増やしていく立ち回り。
それ故に前半と大きくは変わらない展開で、いかに山形が決定機を増やしてその中でゴールを奪えるか。
そんな展望を考えさせられていた所、8分に小西が足を痛めて倒れ込む事態が発生します。
長らく足を抑え、ややもすると筋肉系トラブルが疑われるなか自力で立ち上がりピッチ外へ。
数的不利の最中に山形はチアゴが焦ってロングシュートを狙う(枠外)シーンも生まれましたが、幸い無事にピッチに復帰する小西。
これを切欠に同点を目指すものの、13分にカウンターに持ち込む仙台、スルーパスに左奥へ走り込んだ内田を西村が倒してしまい反則・警告。
このFKからの攻撃を防ぎ、何とか反則でカウンターを止める形となった山形。
以降仙台の攻撃に対し反則を犯すシーンが膨れ上がり、反則でしか止められない、というような流れに突入してしまいます。
言わば再び「圧力に屈する」かの如き展開。
そして自身の攻撃も、再び裏狙いを繰り返しては繋がらずという前半同様の苦しい展開を強いられる山形。
状況打開のため、17分に再度交代。
イサカ・加藤大→横山・藤本へと2枚替えし、CFに入った藤本によりチアゴが本来の左サイドハーフに回り。
その後の最初の攻撃機会は20分で、後方から左斜めへの縦パスを小野スルー→チアゴフリックで裏へと出したものの、走り込んだ小野には繋がらず。
采配・サッカー双方で変化を付けに掛かります。
逆に試合そのものは支配しているものの、シュート数が膨らまない仙台。
24分に敵陣でサイドを振るパスワークのなか、エヴェルトンが左右に動いて双方で絡む攻撃。
そして右から真瀬のクロスが上がり、GK後藤雅に弾かれた所をエヴェルトンが中央でダイレクトで中へ送り。
これも跳ね返されるも、またも拾ってミドルシュートを放ったエヴェルトン。(枠外)
中盤の展開力で優位性を示すように、フィニッシュにも絡みを見せます。
しかし27分に内田が足を攣らせてしまい、これを機にカードを切る仙台。
内田・山田寛→秋山・中山へと2枚替え。
尚も33分に相良・郷家→中島・フォギーニョへと2枚替えを敢行します。
中盤はボランチ4人というような顔ぶれとなるも、ポジションの変更は無く。
仙台の交代策が交わった事により、ぶつ切り傾向が強かった25~35分。
当然さしたるフィニッシュは生まれず。
そしてさらに混迷を生んだのが、36分に熊本が足を痛めて交代を余儀なくされた事でしょうか。
これにより最後のカードを切る山形、前節出場停止だった野田を投入。
その後の38分、野田の縦パスがフォギーニョにカットされると、拾った中山に対し食い付いてしまう野田。
戻しからのスルーパスでそのスペースを突かれかかるという具合に、巧く入れずとなり。
同点への運気は高まらない、そんな予感を孕ませるシーンとなりましたが、サッカー並びにスポーツは最後まで判らず。
40分右サイドでスルーパスの連続で前進していく山形、右ポケットを取った横山はバックパスを選択し、小西が手前からクロス。
これを國分がフリックで浮かせると、その奥に居た藤本はバイシクルでシュート。
しっかりとミートされたボールがワンバウンドでゴールに突き刺さり。
その絵柄は起死回生という言葉しかない、藤本の同点弾となりました。
この得点を機に今までの展開が嘘のように、一気呵成に押し込む山形。
41分には二匹目のドジョウを狙ったか、藤本の右からのクロスをバイシクルでシュートにいったチアゴ。(空振り)
どんどん縦に速い攻撃を繰り出していき、45分には再び右ポケットを取った横山が今度はシュートを選択。
しかし力んだかふかしてしまい勝ち越しはならず。
このまま突入したATですが、山形は既にベクトルを前に向ききっていた感があり。
仙台が反転攻勢に転じると、それを止めるための陣容はあまりに薄かったでしょうか。(43分に仙台は氣田→梁へと交代、中島がFWへ回る)
真瀬のスルーパスを右奥で受けたフォギーニョがカットイン、右ポケットを突いてのマイナスのクロスから、中島が放ったシュートはゴールバーを直撃。
尚も繋いで再び中島が中央からシュートするもゴール上に外れと、一度の攻撃のなか連続でモノに出来なかった中島。
その後も、真瀬のシュートをGK後藤雅がセーブ、フォギーニョのシュートはふかして枠外とエリア内で決定的なシーンを連続で作られ。
その間に何度かカウンターを仕掛けた山形でしたが、それが却ってオープンという表現が生易しいぐらいの、フルオープン状態を呼び起こしていた感があり。
そしてこの展開を待っていたかのように、最後に笑ったのは仙台でした。
再び右サイド奥を突き、真瀬がカットインからクロスを入れると、中島は今度はワントラップからのシュート。
先程の反省かコントロール重視の軌道を描き、ゴール左へと突き刺し。
歓喜の勝ち越しゴールに沸き上がる仙台のホーム・ユアテックスタジアム仙台。
それでも諦めない山形。
野田・西村双方を前線に上げて攻め上がり、最後に野田のスルーパスで右ポケットを突き、横山のグラウンダーでのクロスをニアサイドで藤田が合わせ。
しかし右サイドネット外に終わり、最後までオープンだったものの競り負ける事となりました。
2-1で仙台勝利というリザルトもさる事ながら、試合終盤の展開はまさにダービーマッチ故の熱狂ぶりが齎したもので、Jリーグ側の目論見通りといった今節。
しかし対決しながらも根は同じ釜の飯を食う立場なのは、目論見通りにさせてはいけないという思いで合致している事からも窺え。
一言では言い表せない、伝統のダービーマッチの奥深さが示された一日だったでしょうか。
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