※前回の藤枝の記事はこちら(34節・熊本戦、2-0)
※前回の清水の記事はこちら(31節・町田戦、3-2)
<藤枝スタメン> ※()内は前節のスタメン
- 特別指定の浅倉が35節(町田戦、0-0)で初出場、そこから途中出場を続けてこの日もベンチ入り。
<清水スタメン>
上位カテゴリであるJ1で、理想をかなぐり捨てた神戸が首位を走っている事もあり、一種のブームとなりつつある現実主義。
ことJ2の舞台においては、現在最もそれをなぞっているのが藤枝でしょうか。
常時高いボール支配率を維持していた過去はいざ知らず、というのは早計ですが、前回観た熊本戦では守備意識の向上で相手の攻撃を封じた事で結果に繋げ。
そこからもプレスの位置を下げた守備重視の戦いは続き、町田・ヴェルディといった上位相手にも負けずに進軍。
そしてこの日の「三国決戦」では、その総決算の戦いが繰り広げられました。
そんな藤枝がボール支配率を落としていくのを余所に、リーグトップに躍り出ている相手の清水。
失点数もリーグ最少と、全てが強力といわんばかりの相手に対し、この日も自陣で守備を固める事を第一とした戦いを貫きます。
前半3分に中山から榎本が奪ってカウンターに繋げ、矢村のダイレクトのスルーパスで抜け出した横山が、左ポケットを突いたのち得意のカットインシュートを放って(GK権田セーブ)先制攻撃。
しかし強敵かつ「三国」のライバルである清水故に、熊本戦とは裏腹に球際での激しさを一層際立たせる藤枝。
そうまでしないと止められない相手なのは確かですが、その意識から最後尾は降りる清水選手に対し食い付き気味となり。
サンタナに対し川島が、乾に対し水野が、という具合に前に出て激しく規制を掛けんとします。
逆にこうした相手の性質を利用しての攻撃を見せたい清水。
8分には高橋縦パス→カルリーニョスフリックでサンタナに渡り、キープする所を川島に倒されるも中山が繋ぎ、カルリーニョスがドリブルで左ポケットを突く好機に。
しかし鈴木翔のスライディングをかわした所を、残した鈴木翔の腕に引っ掛かる形で倒れてしまい撃てず、反則の笛も鳴らずと消化不良に終わります。
以降じっくりとボール保持から攻め込む清水ですが、その弱点も露わになっていた藤枝の組織的守備を見て、中央からの崩しに意識を振ったでしょうか。
単純なクロス攻勢は抑制され、コーナーキックでもショートコーナーからの崩しを選択する事が多く。
その結果遠目からのフィニッシュが多くなり、13分のホナウドのミドルシュート(西矢が頭でブロック)など威力は十分だったものの、崩しきれずに時間は進んでいきます。
攻めあぐみの危惧がチラつくなか、21分に自陣でのパスミスを榎本に拾われて攻守交替すると、拾った横山のボールキープに対し乾が反則を犯してしまい。
これで左ハーフレーンからのフリーキックを得た藤枝、かなり遠目という事でキッカー横山は放り込みを選択し、クリアボールをカルリーニョスが拾うも矢村が奪い返し、そのままミドルシュート。(GK権田キャッチ)
清水のミスも絡む事で、この日の藤枝のシンプルさが際立つ流れとなり。
続く22分にも小笠原のボール奪取から、鈴木翔縦パス→横山受けて左ポケットへスルーパス→走り込んだアンデルソンシュートでゴールを襲うも、鈴木義が決死のブロックで防ぎ。
流れを奪われる格好となった清水は28分、GK北村のロングフィードを回収した鈴木義が素早く縦パスを送り。
受けた乾のパスをカルリーニョスが入れ替わって前を向き、そのままエリア内へ流れてシュートと、ボックス内でのフィニッシュに辿り着きましたが枠外に。
藤枝のようなシンプルな運びで好機を生み出した事で、再び攻勢に入ります。
31分に再び鈴木義→乾というホットラインから、右へ展開ののち原が右ポケット奥を突いてクロス。
ブロックされた跳ね返りを同じく右ポケットで乾が拾い、そのままシュートにいきましたがディフェンスに入った川島を蹴ってしまう格好となり(反則)モノに出来ません。
以降はボール支配するものの、それ故のお決まりのパターンともいえるフィニッシュに辿り着けない状態を強いられる清水。
終盤には再びパスミスが目立つようになるなど、折角得た流れも一過性に過ぎず、固定させる事が出来なかったのが結果的に響いたでしょうか。
逆に言えばそれだけ、前回対戦時の大勝(15節、5-0)を忘れさせるような藤枝の変節ぶりが効いていたと言える展開。
かくして前半はスコアレスで終え、共に交代は無く後半開始を迎えます。
清水にとっては仕切り直したい状況で、打った手は3バック(3-4-2-1)への変更でした。
右センターバックと化した原が最終ラインに残り、右ウイングバックとなった中山がワイドに開くという変化で、目線を変えにいったでしょうか。
しかし藤枝と同一フォーメーションのミラーゲームとなった事がややこしい事態を招いてしまい。
秋葉忠宏監督自身は「個人の能力では負けるはずが無い」という考えの下での選択だったと思われますが、それを補うように球際でのバトルを強めていたこの日の藤枝。
その意識がより生きる状況を自ら献上してしまう事となり、以降もペースを握る事はままならずとなります。
後半2分、西矢のパスカットからここも素早く攻めんとする藤枝。
アンデルソンの矢村へのスルーパスは遮断されるも、拾って再び縦パス攻勢に入った末に久富縦パス→横山ポストプレイでシュートチャンス。
そして後方から矢村が走り込んでシュートしましたが枠を捉えられず。
7分にも川島が前に出てロングパスをカットし、久富のミドルパスで素早くエリア内を突いた末に矢村がボレーシュート。(枠外)
5分の清水の攻撃で、ホナウドのミドルシュートをGK北村がセーブと危ういシーンはあったものの、着実に好循環を固める藤枝。
そして9分、ここも敵陣でアンデルソンがボール奪取と球際で勝利し、幾度もフィニッシュを放っている矢村へとパス。
その流れに乗るかのように、遠目から果敢に放たれた矢村のシュートがGK権田のセービングを破ってゴールに突き刺さります。
清水とは裏腹に、良い流れの中でしっかりと決める事で先制点を挙げました。
ビハインドとなってしまった清水、12分に中山→北爪へと交代。
流れを引き戻さんとしますが、前半とは一転して藤枝がハイプレスを掛けるようになった事でビルドアップの段階でも苦戦を強いられます。
何とかそれをかわし、降りて来るFWへと縦パスを届けようとするも、サンタナやカルリーニョスのそのトラップ際を狙われ奪われるシーンが目立ち。
必然的に相手の寄せが早くなる、ミラーゲームの難しさを痛感する事となります。
有効打はむしろカウンターの方で、15分の藤枝のCKから展開し、北爪の右サイドの持ち運びからのスルーパスでアタッキングサードへ。
走り込んだホナウドがエリア内へ横パスを通し、受けた原のグラウンダーのクロスをサンタナが収めてシュートと、ポイントゲッターのフィニッシュに繋げましたが横山のブロックに阻まれ。
21分に鈴木翔がサンタナのチャージで痛んだというタイミングで、再び動く清水ベンチ。
鈴木義を退かせる選択を採り、サイドバック色の強い吉田を投入して左CBに。(同時に山原→岸本へと交代)
WBを採用したという事は、一重にサイド奥を突いてクロス攻撃に持ち込みたい思惑だったのでしょうが、思うようにならない事でサイドに適正のある選手を増やす手だったでしょうか。(鈴木義のアクシデントで無ければ)
しかしその効果が出る前に、最悪の絵図が生まれる事となります。
25分の藤枝、自陣で西矢が落としたボールを、すかさず鈴木翔がラフに裏へと送り。
そこに走り込む横山の前で北爪が蓋をしたものの、あろう事かヘッドでGKに戻さんとした所を突かれ、落ち際をダイレクトで横山がシュートに持っていき。
その結果、ループの軌道となったシュートがGK権田を越え、ゴールに吸い込まれてしまいます。
安易にGKに戻す事すら許されない、この日の藤枝の寄せの速さを思い知る事となりました。
逆に藤枝サイドにとっては最良の結果であり、勝利に前進した事でゴール裏サポーターの前でひとしきり喜ぶ選手達。
痛恨の失点となった清水、キックオフでは(バックパスを挟んでの)乾のセンターサークルからの前進という半ばムキになったような攻めを繰り出し。(右に展開するも北爪のスルーパスが合わず)
直後に最後の交代を敢行し、乾・カルリーニョス→神谷・オセフンへと2枚替え。
藤枝が一度も交代しないうちに、全てのカードを使いきる事となりました。
ターゲットを増やした事でクロス攻撃に舵を切ると思われましたが、以降もサイド奥を突く事はままならない清水。
リトリート意識を高める藤枝のブロック間を何とか通さんとする攻撃を繰り返すという具合に、ベンチの意識とピッチ内の事象が乖離したような状態に陥ります。
その中でまだ可能性があったと思われるのは、浮き球のパスをオセフンが収めてからの攻撃でしたが、藤枝の守りが薄いうちに前を向けないというシーンが数多で活かせずに終わり。
裏抜けタイプの選手が前線に居ないのもそれに拍車を掛けたようであり。
清水が勝負手を出し尽くし、かつ機能しないと解った藤枝サイド。
粘った末に38分に最初の交代(水野・矢村→新井・岩渕)と、その間にリードも奪い理想的な展開といえたでしょう。
42分に、2点目のシーン宜しく久富のダイレクトのロングパスで敵陣に運ぶと、今度はセカンドボールを拾ってからの敵陣でポゼッションを高める攻めで、相手から時間と余裕を奪う立ち回り。
そしてその直後に2度目の交代を敢行、特別指定の浅倉を投入します。(横山と交代)
迎えたアディショナルタイム、清水の最終ラインからのビルドアップに対し、果敢に2度追い・3度追いを掛ける浅倉。
それをいなして何とか右奥へと運び、ようやくクロスへと持ち込んだのを機に、やりたかったであろうクロス攻勢に持ち込めるようになります。
しかし決定的に時間が足りないのは明白で、その後フィニッシュに持ち込む事は無く。
藤枝はATの最中に残っていたカードを使い、久富・榎本→中川創・永田へと2枚替え。
これにて中川創がワイドに張る(右WB)という、ややもするとミスマッチのような布陣になりましたが、既に残り時間を守りきる体勢で良く。
結局最後の清水の攻撃もクロスにまで辿り着けず、左サイドで奪われて矢印を反転されると、試合終了を告げる笛が鳴り。
藤枝はまさにやりきったという形で、静岡勢に対し歓喜の初勝利を挙げる事となりました。
一方で14戦無敗が途切れる格好となった清水。
ラスト5戦に持ち越された昇格争いを繰り広げるにあたり不安を感じざるを得ない内容ですが、何か手を打つには遅過ぎの感もあり。
それでもスタッフ陣は建て直しを図るのか、あえて無策の策でいくのか勝負の分かれ目となるでしょうか。
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