※前回の藤枝の記事はこちら(41節・徳島戦、0-0)
※前回のいわきの記事はこちら(41節・山形戦、1-3)
※前回対戦時の記事はこちら(1節、いわき 2-3 藤枝)
<藤枝スタメン> ※()内は前節のスタメン
- 前節退場(警告2度)となった中川創が出場停止。
- 前節負傷交代した横山はベンチ外に。
<いわきスタメン>
- 前節出場停止だった遠藤・下田がスタメン復帰。
- 谷村が累積警告により出場停止。
- 開幕節以降ずっとベンチ外だった宮崎(負傷離脱は2か月程度との事だったが)がベンチ入り。また坂元が22節以来のベンチ入りと、昇降格の無い最終節らしい人選に。
開幕節⇒最終節という組み合わせの一環のカード。
それが昇格組同士という、意図的なものを選んだ日程くんの意味合いを存分に味わう事となりました。
初のJ2故に、「既存のクラブに良い所を見せる」「自分達のJ2での立ち位置を推し量る」事をしなければならない序盤戦。
それにも拘らず、開幕節でこの2クラブがぶつかる事となり。
これは恐らく推測ですが、怒涛の勢いで下部リーグから駆け上がってきたいわきの方が、ダークホースとして何かと注目を浴びる存在に。
対する藤枝は前年のJ3で最終節で昇格決定したとあり、いくら特徴的なサッカーをするといえど、壁にぶつかるという予想が多かったはず。(自分もそうでした)
しかしその対戦では、前年いわきに勝てなかったという成績も手伝い、藤枝が反骨精神を発揮するかの如き勝利を挙げました。
これで勢いに乗った藤枝は、序盤は「超攻撃エンターテイメントサッカー」の神髄を発揮し、勝利を積み重ねて旋風を巻き起こし。
一方躓く事となったいわきは、その後持ち直したかに見えたものの、J2の厳しさを嫌というほど味わう結果となりました。
こうして明暗が分かれた前半戦ですが、無事に残留を決めて最終節での対決を迎え。
後半は、J3で貫いてきたスタイルの調整を余儀なくされた両クラブ。
既に低迷していたいわきは、監督交代も敢行した末にボールポゼッションをある程度取り入れ、また頻繁にフォーメーション変更を行うなど奥深さを発揮。
一方夏の移籍で戦力低下を余儀なくされた藤枝は、「超攻撃」一辺倒を改め、リトリート・カウンターの指向を強く押し出して窮地を乗り切り。
上位カテゴリでは信念のみでは戦えない、という事を如実に示す経緯を描きましたが、かくして1年間の戦いを経て進化したのはどちらか。
いわきより一足早く残留を決めた藤枝は、前節で「超攻撃的」の色合いを再び強め。(しかし中川創の退場で本領発揮には至らず)
それに対し、前節で敗戦ながらも辛々と残留決定に至ったいわき。
この日採った策は、その藤枝との3-4-2-1でのミラーマッチというものでした。
やはり開幕節の結果を強く意識していたのか、マンツーマンの色を強めて藤枝の持ち味を消す作戦に出て来た感があり。
そんないわきの守備に対し、繋ぐ事が出来ずアバウトな蹴り出しを余儀なくされる藤枝。
しかし前半5分、ゴールキックでのロングフィードが一気にいわき最終ラインの裏を取り、走り込んだ矢村がGKと一対一に。
それでも左にかわさんとした所を、前に出たGK田中謙が抑えて防ぎます。
出遅れる藤枝を尻目に、いわきは本来のスタイルである縦に速い攻撃を繰り返すという具合に、こちらも残留争いを制した事で肩の荷が下りたようであり。
しかし13分GKからの繋ぎによる攻撃……とはいっても次の瞬間、山下ロングパス→近藤胸で落としと一気に運んだものでしたが。
それでも下田の左→右のサイドチェンジを受けた加瀬がクロスと、藤枝ディフェンスの薄い部分を取っていく流れを経て、最後は近藤慶がヘディングシュート。
ゴール左へと突き刺さり、先制点を齎したのはこの日11試合ぶりの出場となった近藤慶と、最終節らしいメンバー選択が奏功します。
ちなみに得点自体も8節・大分戦以来の2点目と、期待に中々応えられなかった特別指定の近藤慶、正式入団する翌年はブレイクできるでしょうか。
いわきのプレッシングの前に、リズムを掴めない藤枝。
リードされた後は、GK北村がエリア外に位置取ってのビルドアップと、本来のスタイルを発揮せんとしますが状況は厳しく。
開幕節の4-4-2とは違い、3-4-2-1故に後ろにも硬さが加わったいわき。
あの時のような、プレッシングをいなした末に裏へのロングパスで崩すという事はほぼ不可能となり。
30分に初めてといってもいい、細かい繋ぎでアタッキングサードを突く好機。
それでもいわきディフェンスに遭いこぼれた所を拾うというトランジションを突く格好で、榎本が左サイドをドリブル。
クロスはブロックされるも、中央で拾った水野が速水に反則を受け、直接フリーキックのチャンス。
中央~左ハーフレーンの中間辺りという横位置で、シュートを放ったのは中川風でしたが、落とせずに上へと外れて終わります。
いわきのプレッシャーのなか繋ぎを図るものの、前節八面六臂の活躍をしていたアンデルソンが、その影響で冴えず。
下田のタイトな寄せに難儀しており、反則にも見えるアタックにも主審の笛は鳴らずと、やや精神的にまいっていた感が伺えました。
それでも37分にはコーナーキックからの流れで、小笠原の左からのクロスをフリック気味にヘディングシュートを放ったアンデルソン。(GK田中謙セーブ)
この30分台は藤枝の独壇場という流れで、いわきの攻撃機会は皆無。
着実に反撃の機運が高まっていただけに、あのワンシーンが文字通り勝負を分ける事となってしまいます。
その問題のシーンは40分で、いわきのロングボールからの流れで、こぼれ球となった所にスライディングで確保しにいったアンデルソン。
しかしそこには同じく拾いにいった下田の姿があり、後ろから激しくなぎ倒す結果となってしまい、たまらず反則の笛が鳴り響き。
そして直ぐさま赤いカードをアンデルソンに付き出した主審。(吉田哲朗氏)
下田の脚よりも先にボールに触れていただけに、アンデルソンそして藤枝にとってはまさかという一発退場の判定に。
しかし審判も人間であり、度重なるアンデルソンvs下田のやり合いを経ての流れだけに、その激しいスライディングが報復行為と取られた可能性も無きにしも非ずであり。
ピッチ脇では須藤大輔監督はじめスタッフが激しく4審に対し異議を唱えるも判定は変わらず、これで2戦連続で10人での戦いを強いられる事となりました。
前節よろしく、矢村・中川風の2トップにして4-3-2という布陣を採る藤枝。
しかし徳島とは違い、いわきの縦への推進力とフィニッシュ数は熾烈を極める事となり。
その後一方的に攻められ続け、アディショナルタイムには右サイドを細かく繋いで前進ののち、戻しを経て下田がエリア内へ縦パスと中央から崩し。
そして山口ポストプレイ→宮本キープからシュートと決定打を放つも、水野がブロックして凌ぎ。
何とか前半は1点差を保って終了させます。
前節は交代をできるだけ引っ張った藤枝ですが、ビハインドという状況もあり、ハーフタイムの段階で西矢→大曽根へと交代。
水野を実質アンカーとし、その左右に攻撃的な選手を配置する策を採りました。
追い掛ける立場な以上、10人になってもボールポゼッションによる攻めは必須であり。
しかし後半3分、宮本が右ハーフレーン深めでボール奪取していわきのショートカウンターと、早くも暗雲が立ち込めます。(その後溜めてクロスも近藤慶には合わず)
早いうちに追加点を挙げたいいわきも、5分に藤枝のFKを妨害した加瀬が警告を受けるなど良くない流れに。
その直後に藤枝は、敵陣深めでの左スローインから、ディフェンスに遭いながらも矢村がカットインに持ち込んでミドルシュート。
GK田中謙にキャッチされるも、前節同様、劣勢のなかの一刺しという流れを作らんとします。
しかし懸念されたビルドアップでそれが台無しに。
7分、GK北村から左へと展開して運ばんとするも、ドリブルが詰まらされた大曽根のバックパスを中央でカットしてそのままエリア内を突いたのは山口。
そして横パスを送り、フリーの近藤慶が悠々とシュートをネットに突き刺します。
ショートカウンターをしっかりとモノにする本領を発揮し、2点差としたいわき。
どうやら後半の藤枝は、中川風が1.5列目という感じの立ち位置になり、守備時は水野の脇に入って4-4-1に。
攻撃時も、自陣に降りて縦パスを受ける出口役を務める等、彼の動きで苦境を打開せんとした感があり。
しかしパスを受けた後のドリブルが奪われる等、結局好循環を作る事が出来なかった中川風。
その後は榎本と入れ替わり、左SHというような立ち位置になります。
何とか一糸を繋ぎたい藤枝、13分に小笠原のパスカットからカウンター、スルーパスを受けた矢村が右ポケットへ切り込み。
そして切り返しを図った所速水に倒されると、反則の笛が鳴りPKを獲得します。
先程の退場のシーンとは比べ物にならない軽度な倒れ方でしたが、速水のアタックがしっかりと足にいってしまったため言い訳は利かず。
このPKをキッカー矢村がゴール左に強く蹴り込み、GK田中謙のセーブも及ばずゴール、1点差に詰め寄ります。
キックオフの前に両ベンチが動き、藤枝は小笠原・中川風→前田・平尾。
一方のいわきは近藤慶・加瀬→河村・永井で、これにて下田がアンカー・宮本と山下がシャドーとなる3-3-2-2(3-1-4-2)へシフトします。
初出場となった特別指定の前田、投入されていきなりの16分に出足の良いパスカットから攻め上がり、大曽根とのワンツーを経てクロス(誰にも合わず)と活きの良さを見せ。
この前田の存在を槍としながら、いわきの布陣変更も物ともせず攻め上がる藤枝。
矢村1トップの色を強めながら、中盤では水野がバランサーとなり、他の3人を攻め込ませる役に努めます。
守備時では一列下がって5バックとなるシーンも作るなど、数的不利による破綻を防ぐ陰の立役者と化する水野。
それでも相手を上回るのは厳しく、フィニッシュに辿り着けない時間が続き。
そんな中で26分、再びこぼれ球に対し鈴木と山下がスライディング同士激しく接触するシーンが描かれ。
今度は山下の反則となりますが、これに対し「カードじゃないのか」という異議を激しく唱える鈴木。
それを受けて主審はカードを突き出し、その絵図から放送では鈴木の異議による警告と出たものの、記録ではしっかり山下への警告となっており。
なお鈴木の異議は一発レッドを求めてのもので、それに従うようにベンチでの紛糾は止まずと、アンデルソンの退場劇がやはり尾を引いているようでした。
(ちなみにこうした間違いは後に修正され表記するDAZNですがこの日は無し、最後という事で仕事もいい加減になったか?)
28分に自陣での久富のカットから攻め上がる藤枝、ミドルパスを受けて右からクロスを入れたのは例によって前田。
ディフェンスに当たりこぼれた所を矢村がシュートしましたが、ブロックに阻まれ決まらず。
こうした細いながらも作られる糸口を作り続けたい所。
32分、再び双方の交代カードが交錯。
藤枝は水野を退かせて岩渕良を投入。
一方いわきは再度布陣変更を絡め、速水→宮崎へと交代し4-4-2へシフトします。
右サイドバックに宮本が入り、下田・山下のドイスボランチに。(2トップは有馬・宮崎)
後方で支えてきた水野が退いたのが影響したかは不明ですが、ここから崩れてしまう藤枝。
35分、またもアタッキングサード中央で山口のパスカットに遭うと、今度はそのままミドルシュートを放つ山口。
ゴール左上に突き刺さり、この時間帯で奈落に突き落とすかのような追加点が生まれます。
その直後の36分にも、中盤で有馬がパスカットしてドリブルで持ち込むいわき。
反則で止めた川島が警告を受けるその姿は、決壊寸前という状況を如実に表す事となり。
そして38分、左サイドでの四角形を作ってのパスワークで揺さぶるいわき、宮崎のカットインから状況を動かし。
こぼれ球を拾った山下がエリア内を突いた事で混戦となり、クリアを有馬がブロックして尚も狭い局面での攻防。
その末の有馬のシュートこそ岩渕良がスライディングで阻止しましたが、拾った鈴木のクリアを永井がブロック、その跳ね返りが直接ゴールに吸い込まれ。
懸命の守備を、力でねじ伏せるといういわきらしい攻めの4点目となりました。
これで余裕も生まれたいわき、41分に芳賀・坂元を投入(山口・有馬と交代)と、経験の浅い選手の育成?モードに。
意地を見せたい藤枝、45分にGK北村からの攻撃、坂本に倒されながらも久富へパスを繋ぐ北村。
ここから左右をくまなく使いながらのパスワークで前進していき、大曽根のエリア内へのパスはカットされるも、その後のクリアを大曽根がブロックして継続。
そしてエリア内で拾い直し、シュートにまで繋げる大曽根、見事にゴールネットを揺らす事に成功。
最後の最後で今季初ゴール(並びにプロ初ゴール)を挙げ、一矢報いました。
結局このまま試合は2-4のまま動かず、試合終了の時を迎え。
いわきが開幕節の借りを返す勝利で、双方シーズンの幕は閉じられました。
町田のどんな手段も辞さないような大補強による優勝、清水・磐田の血で血を争うような自動昇格争いなど、何処と無くギスギスとした今季のJ2リーグ。
それとは距離を置くように、独自の戦いを続けた昇格組の2クラブが無事J2残留を果たして終えたのは、一種の清涼剤というべきでしょうか。
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