共同通信が20日、気になるニュースを伝えている。政府が、反米急先鋒のベネズエラと組んで原油開発を行うというのだ。
《政府は二十日、従来の原油と異なるタール状原油の開発で、有力産油国のベネズエラと連携する方針を固めた。独立行政法人の石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と国営ベネズエラ石油が、オリノコ川流域の油田探査協力の覚書を八月にも締結する方向で調整している。
日本政府が注目するのは、「非在来型」と呼ばれる原油。通常の原油は地下に液状でたまっているが、砂や岩に染み込んでいたり、タール状で存在したりする。開発コストは一バレル当たり四十-六十ドル程度と通常の原油に比べ数倍かかるが、最近の原油価格高騰で採算が合うようになり、事業化が徐々に進んでいる。
ベネズエラを東西に横切るオリノコ川流域には、粘性の高い超重質油の「オリノコタール」が約二千四百億バレル眠っているとされる。通常の原油で世界最大のサウジアラビアに匹敵する埋蔵量だ。
経済産業省幹部らが八月にもベネズエラを訪問し、最終交渉する。JOGMECは探査協力から始め、技術支援などを通じて、将来の油田権益獲得につなげる》
大手紙はこの件について何も報じていない。共同加盟社ではないため配信はない。経産省のディープスロートは、共同にだけ耳打ちしたのだろうか。共同加盟社の日経と産経も無視しているのはなぜなのか。
この記事自体がかなり怪しい。福田政権がチャベスと本気で手を組むとは思えない。アメリカの怒りが怖いからだ。
反米チャベス政権が、オリノコ川流域の超重質油開発事業を国有化したのは2007年5月のことだ。米エクソンや英BPなどメジャー7社が手掛けていたのを強引に取り上げたのである。
「アメリカ帝国主義との戦い」をスローガンに掲げるチャベス政権と「ブッシュ大統領の忠犬」日本が共同事業を行う。画期的といえば画期的である。原油の中東依存度が90%以上にもなるわが国が、調達先を広げることは資源安保にもつながる。
日本が独自に資源確保に動くのを最も警戒しているのがアメリカである。かつて、田中角栄がイギリスやフランスとの間で原油や核燃料の調達話を進めようとして、「アメリカの虎の尾を踏んだ」と評されたことがある。ロッキード事件での失脚は、そのためだとさえ言われる。その日本が、よりによってチャベスと提携!。アメリカが許すはずがない。
世界有数の埋蔵量との触れ込みで始まったイラン・アザデガン油田開発事業は一体どうなったのか。アメリカの対イラン政策に阻まれ、日本の権益はほぼゼロになってしまったではないか。ベネズエラはアメリカの鼻先である。先行きは見えていると考えるのが常識だろう。
ベネズエラの超重質油の埋蔵量は約2400億バレル、確認済みの通常原油埋蔵量790億バレルと合わせれば、サウジを抜いて世界最大の原油埋蔵量を持つことになる。
福田政権が本気でオリノコ川開発をやる気ならたいした度胸だ。勢いに乗じてロシアやカナダとの資源開発ももっと加速してもらいたい。イランやイラクでの油田開発事業も再開したらいい。でも、そんなことがあり得るのか。
この話を共同にリークした経産省の官僚はどういう立場なのか。計画を潰しにかかったのか、観測気球か、独自の資源外交をあおる気か。いずれにしてもきな臭い。
続報を期待したい。