酔眼独語 

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石破防衛相辞任論の愚

2008-02-23 05:54:27 | Weblog
 イージス護衛艦「あたご」がマグロ延縄漁船「清徳丸」に激突、漁船の乗組員2人が行方不明となった事故で、石破茂防衛相の責任を問い、辞任を求める声が高まっている。

 これまでの情報を整理して考察すると、事故の原因があたご側にあったのはほぼ確定的である。防衛省の説明によると、ワッチが清徳丸と見られる灯火を視認したのは衝突の12分前だ。双方の速度と位置関係から推定すると、両船の距離は少なくとも4キロはあったと考えていい。

 この距離なら旋回して回避することは十分可能だった。しかし、あたごは自動操舵を解除せず直進し、衝突1分前になってプロペラを全力逆転させたが間に合うはずもない。

 漁協側は、30分前以上前にレーダー上にあたごが映っていたという。当然あたごのレーダーにも漁船群が映し出されていたはずである。イージス艦の水上レーダーは、複数の対象映像から衝突確率が最も高い船影を選び出し、衝突まであと何分かを
表示できるようになっている。

 潜水艦映画でソナー要員が「衝突まで後40秒!」などと悲鳴をあげるシーンがあるが、あれがレーダー上に出てくると考えればいいのだろう。イージス艦の装置ではベストの回避動作を選び出すこともできるという。

 そういうハイテク装置が稼動した形跡はいまのところない。つまり、あたごのレーダー要員はレーダーを(良く)見ていなかったことになる。ワッチも目視情報をブリッジに伝えていなかった可能性が高い。

 戦闘艦の動作としてはお粗末極まりない。これでは100戦100敗疑いなしだ。

 と、ここまではこれまでのおさらいである。

 さてそこで、石破の首を取るべきかどうか。

 いずれ事故の詳細が明らかになれば、石破は自ら身を退くだろう。20年前の「なだしお」事故の際の瓦防衛長官がこの選択をしている。

 野党が辞任論を叫んでいるのは、もちろん国会対策である。08年度予算の年度内成立を確実にするための猶予時間は、実質あと5日しかない。石破問題で攻め立てて、予算案の衆院通過を3月以降に引き延ばし、政権にダメージを与える-というのが民主党の基本戦略だろう。

 国会を戦場と見立てれば、敵の嫌がることを次々と繰り出す戦法はあり得る。だが、国会は戦場である一方、与野党が国家の針路について意見を戦わせ、可能な限り有効な施策で妥協を図る場でもある。

 経済の減速がより鮮明となり、雇用や暮らしの不安が高まっている。こうしたことに有効な手を打つことこそいま最も求められていることではないか。

 どうもこの国の政治は、何か起きるとたちまち視野狭窄に陥りプライオリティーも何もなくなる傾向が強い(出来事中心主義のマスコミの影響も大きいのだが…)。

 もう少し大人の議論をしてもらいたい。同時並行で物事が進められない国会や政党では困ってしまう。政局と政治課題を分けて考えた方が、迫力も出るし説得力もあると思うのだが。

 

  
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