優緋のブログ

HN変えましたので、ブログ名も変えました。

帰ってきた!!

2006-09-13 00:51:35 | おもいつくまま
それは午後三時半頃のこと…

「今栃木にいるから。
仙台まで後70キロらしいから一時間ちょっとで着くと思う。」

えっ、これから帰ってくるって???
バイクで?
おい、おい、こっちは雨降ってんですけど・・・。
慌てて切った電話をかけなおす。

「ねえ、雨降ってんだけど、大丈夫なの?
ちゃんと支度してきたわけ?」

「いや、帰るつもりで出てきたんじゃなくて、東京は昼ごろから天気回復したからちょっと走るかなって首都高走ってたら東北道に入っちゃって、で、そのまま帰ってみるかなって来ちゃったわけ。
そしたら途中から雲行きがおかしくなってきて、だからもう結構濡れてるわ。」

「とにかく気をつけて来なさいよ。お風呂沸かしておくから。」
「はい。」

なんと無謀な…。
まだ免許取りたて、10日ぐらいしかたってないというのに。
私など、もう車を運転するようになって18年たつというのに、まだ高速といったら車のほとんど通らない道央道しか走ったことがない。

若いってこういうことなのかしら…
男の子は女とは違うのねぇ・・・

五時過ぎ「さみー、ずぶぬれだー」と言いながら無事到着。
トイレと風呂へ直行。やれやれ。

弟達は大好きな兄の突然の帰還に興奮!!
「ねえ、休みなの?いつまでいるの?」
「明日の昼には帰るの。あさっては仕事!」
「えー、僕達が学校から帰るまでいないの?」と長男にまとわり着く。

「腹減ったー」と言う子供達に慌ててご飯を食べさせつつ、ずぶぬれの上着から下着まで洗濯。
さて、洗ったもののこの天気では明日の昼までには到底乾かないぞ。
我が家には乾燥機などないし、エアコンをドライにしても無理だな。
仕方ない、コインランドリーへ行くか。

「すんません。自分で払うから。」と言う長男を連れコインランドリーへ。
ジーンズの上着とズボンだから時間かかるなと思ったけれども、20分で大体いい具合になったので持ち帰る。

「でも、明日も天気悪いよ。大丈夫?」
「ざあざあ降りで、バイク置いていって新幹線で戻ることになったら最悪だなぁ。まあ、様子見て昼には出るよ。」
「母さん、明日仕事だよ。寝過ごして暗い時間にならないようにしなさいよ。危ないから。」
「うん、大丈夫。」

と言うわけで、晩御飯を食べ一晩泊まって東京へ戻っていった。
昼休みにメールをしたときは「もう出ました。すでにずぶぬれです。帰れるかなー」と泣きの返事。

でも、なんとかコケもせず夕方帰り着いた様で一安心。
まったく、「怖くてまだ右折できない」初心者が仙台まで来てしまうなんて!!
顔が見られて嬉しいような、でもまたすぐ帰ってしまって淋しい、ちょっと胃の痛くなる一日でした。



「松風の家」

2006-09-11 09:46:50 | 読書
宮尾登美子作 文春文庫

千利休を祖とする「後之伴家」。
その明治初期から大正期にかけての衰亡と復興期における人間模様を描いている。

私も独身のころに2年ほど茶道をかじったことがあり、ほんの少しの間、家元につながる師匠から稽古をつけていただいたことがあった。

私が覗いたその世界はほんの入り口だったが、その奥深さは垣間見た気がする。
しかし、現在その組織は全国規模で、茶道人口は一体どれほどいるものなのか見当もつかないし、カルチャーセンターへ行けばどこでも講座はあり、東京の実家の近所にはそこここに茶道教室もあった。

となれば、お家元の存在は確たるもので、そんなその日の米の算段にも苦慮しなければならない苦難の時代があったとは、この小説を読むまで考えもしなかった。

確かに幕末から明治にかけては日本中が大いに揺れ、それまでの価値基準が崩れ去り、富裕な家が没落したり、新興の財閥が現れたりという変革の時代であった。
となれば、大名や公家相手に伝統の家職を守ってきた「後之伴家」もそれから無縁でいられるはずもなく、それにあいまって家督相続のいざこざ、家元の出奔となればその苦難は想像を絶する。

伝統を受け継ぐ家に住むものの暮らしとはまことに厳しく、粥をすすり、水を飲んで暮らしていても誇り高く、またたとえ客が来なくとも、稽古を付ける相手がなくとも自身の修行は怠りなく、たとえそれが子どもであっても厳しく容赦はしない。
それが趣味として茶を嗜むものと、それを家業として生活しているものの違いであり、まして外から嫁として来る女性にとっては大変な苦難であったろうと思う。

物語の終盤、仙台が舞台として登場する。
家元が窮状を打破すべく、京都を出て東京へと打って出た時に出会った仙台の茶道教授の娘を、時期家元の結婚相手として白羽の矢を立てたのだ。

その娘には淡い恋の相手がおり、相手の大学生と将来の約束も互いには交わしているが、相手の家から「一度で縁付けぬ家の娘」と言われ悲恋に終わる。
そして、結局家元の申し出を受け、娘は時期家元夫人として京都へ嫁ぐことになる。


個人の意思だけではままならぬ、「家」を守るということの重みがあった時代に懸命に生きた人たちの強靭な精神力を見る思いがした。

21世紀希望の人権展

2006-09-05 21:05:10 | おもいつくまま
詳しい内容は
http://www2.sokanet.jp/html/tenji/kibo/
をご覧ください。


たくさんの展示物の中で私を惹きつけたものは、

・ヘレン・レラーの直筆のメモ
「暗闇と静寂しかないところで、太陽や花や音楽を楽しむことができるのは、人間には人智では及ばない感覚があることを証明している。」

綺麗なブロック体の文字で書かれていました。
目が見えないのに字が書けるということだけでも驚きでしたが、「太陽や花や音楽を楽し」んで生活をしていたとは…。
人間の能力というものは計り知れません。
サリバン先生の死後に書かれた日記帳も展示されていました。


・「…介護施設における不必要な子ども扱いや拘束、身体的・肉体的虐待など、高齢者の人格が傷つけられている。…」
“年をとると子供に帰る”というのは誤解のようです。
気をつけないといけません。


・全盲のイラストレーター エム ナマエ さんのイラストと文章
とても明るい色調のかわいらしいイラストでした。

「たとえ病気でも 今生きている身体を
   たたえてあげよう 抱きしめてあげよう」

「目が見えるから 見えないことがある
   知っているから 考えないことがある」




車のこと、お酒のこと

2006-09-03 14:54:38 | おもいつくまま
こちらにあめさんの記事が掲載されています。
http://blogs.yahoo.co.jp/amefrisabosabo/18361785.html

どうぞ興味を持たれた方は訪問なさってください。
ここでは、私の普段感じている事を少し書かせていただきます。

東京にいる長男がつい先日二輪の免許を取りました。
昨日ちょうど納車だったそうです。

バイク店から宿舎まで乗って帰るのに、15分くらいしかかからないところ40分もかかったと。
右折ができずに直進して左折して戻り、なんてことを繰り返し、10回近くエンストさせてやっとたどり着いた…と。
「お母さん、東京に道は怖いよ。」

自動車と違い初めての公道。
しかも東京のど真ん中。
さぞ怖かったことでしょう。
でもその怖さを忘れないでほしい。

いずれ彼も自動車の免許も取ることになるでしょう。
二輪にせよ四輪にせよ、車というものは便利だけれども危険で凶器にもなりうるということを、肌身で感じたその怖さを忘れないで欲しいと思います。

私も仙台に来てから必要に迫られて免許を取り18年になります。
4回ほど事故にも遭いました。
自分が突っ込んでしまったこともありますが、突っ込まれたことがほとんど。

いずれもちょっとした判断の遅れや、勘違い、急いでいるからこれ位いいだろうという甘さが原因でした。
私がもう少し機敏に反応できていれば避けられた事故もあります。
でも、どんなにこちらが注意をしていても避けられない事故もあるのです。

私は自分の運転能力(運動能力)に自信がないので、飲酒運転はしたことがありません。
教習所の先生の「たった一杯のビールでも、判断能力は落ちる。」との言葉を忘れたことはありません。
でも、周りの人が飲酒運転をしようとしているのを止められなかったことは残念ながら何度もあります。

飲酒運転に限らず、日本は”お酒”に対して甘いという風潮があると思います。
“お酒を断ることができない”“飲めない人に無理強いをする”“未成年に平気で飲ませる”等々。
“イッキ飲み”が問題になったこともありますね。

みんなの意識が「お酒は飲みたい時に、飲める時にだけ。飲めない時は我慢しなければいけないし、断っても失礼ではない。」というところまで高まらなければこういう悲惨な事故はこれからも起ってしまうでしょう。


連作「お昼の校内放送」第21回

2006-09-01 18:06:21 | 冬のソナタ
「ジンスク、これ今日かけてもらうレコード。
それから原稿はこれね。
ここのところで曲を入れて欲しいの。
よろしくね。」

「オッケー。
それにしても、こんなレコード、レコード棚の中にあった?
私初めて見る様な気がするわ。
ユジンが持ってきたの?」

「ううん、借りたのよ、ジュンサンから。」

「へぇ~え。」
「なによ。意味深な顔して。」
「ジュンサンと付き合ってるの?」
「そんなんじゃないわよ。
この間『今度の放送で使う曲を探しているから何かいいのないかしら』って相談したの。そうしたら何枚かレコードを持ってきてくれて、そのうちの一枚よ。
よかったらくれるっていってたから、終わったらレコードの棚に入れておいて。」

「了解。」
「なによ、にやにやして。やーね、ジンスクったら。
ほら、時間だわ。はじめましょ。」
ユジンは逃げるように、そそくさとブースの中に入っていった。

「皆さん、こんにちは。
お昼の校内放送の時間です。
今日の放送は、私チョン・ユジンとコン・ジンスクでお送りいたします。」

「そろそろ初雪の季節となりました。
皆さんは初雪の日にはどうされますか?

やはりお友達や恋人と過ごすのでしょうか。

それとも、一人静かに雪を踏みしめながらそぞろ歩く、窓越しに雪を眺めながら本を読む、ちょっと淋しい感じもするけれど、時にはそんなふうに初雪を迎えてみるのもいいかもしれませんね。」

「それではここで音楽をお送りいたします。
私の最近のお気に入りの一曲です。

皆さんはお聞きになったことがあるでしょうか?
もし初めてだったら、どうぞ曲名を当ててみてください。
当てたあなたはきっと感性の鋭い方ですね。

知っている方はどうぞ秘密にしていてくださいね。
では、どうぞ。」


いつもとは違った曲の紹介に、教室では、みんながおしゃべりをやめて聞き耳を立てていた。

音楽が流れ始めると、サンヒョクは“あっ”という顔をし、小声でヨングクに話しかけた。
「この曲は新進気鋭の作曲家の作品で、クラシックやピアノ曲のファンの間ではかなり知られてきている作品だけど…。一般にはまだそれほど知られていない曲だよ。」
「サンヒョク知っているのか?」
「あぁ、聞いたことがある。確か作曲者はまだ大学生だよ。」
「そんな曲、何でユジンが知っているんだ?ユジンはポップな曲を使うことが多いのに。」とヨングクは不思議そうな顔をした。

サンヒョクも自分の知らないユジンを見せられたようで、美しい旋律を聞きながらも心が翳ってゆくのだった。

そのころ、ジュンサンはいつものように屋上でパンを食べた後寝転びながら放送を聴きいていた。
そして音楽が流れ始めると口の端を少し上げて笑みを浮かべ
「もう、屋上で過ごすのは寒いな。教室へ戻るか。」
そう独り言をいうと、ジュンサンは本を持って立ち上がった。


音楽が始まると、ユジンはブースの中から出てきて、お弁当を広げ始めた。
ジンスクは”お先に”という顔をしてすでに食べ始めている。
「あ、ユジンの玉子焼きおいしそう。一つもらっていいかな。」
「いいわよ。」
「さんきゅ。じゃ、私のから変わりに何かとって。はい。」

「へえ~。とっても素敵な曲だね。『初めて』っていうんだ。みんな当てられるかな。」
「ふふふ。どうかしらね。でも、いい曲でしょ。」

「ジュンサンがこういう曲を聴くとはね。
はじめはとっても怖い人かと思ったけれど、案外優しいところがあるのかな。」

「ジュンサンは怖くはないわ。
ちょっととっつきにくいところがあるだけで、本当は淋しがりやなんだと思う。
そんな気がする。」

「ユジン…。ジュンサンが好きなんでしょ。」
「うん。…好きよ。」
今度は照れずにジンスクの目をまっすぐに見て素直に答えた。

「そっかー。がんばってね。」
〈サンヒョクが気の毒だけど、しょうがないよね。
好きっていう気持ちだけはどうしようもないもの…。〉

「ありがとう、ジンスク。
あら、急いで食べなきゃ。曲がもうすぐ終わるわ。」
慌てて口を拭くとユジンはブースの中に戻ってゆき、何事もなかったように放送を再開した。


「いかがでしたでしょうか。皆さん曲名はわかりましたか?
いきなりは難しいですよね。
ではここでヒントをお出ししましょう。
知っている方はまだ教えてはだめですよ。

次の三つの中に答えがあります。さてどれでしょう。
一番 『ときめき』
二番 『初めて』
三番 『戸惑い』


ジュンサンが教室に戻ると、皆が「一番かな」「俺は三番だと思うな」などとざわめいていた。

チェリンはジュンサンを見つけると、
「ねえ、ジュンサン、放送聞いてた?
あなたは何番だと思う?
私はね、一番の『ときめき』だと思うのよ。
乙女が恋る人のことを想う時のあの“ときめき”。
激しくはないけれど、清らかで純粋ででも強い想い。
そんな感じじゃなかった?」

「チェリンらしいな。
俺は半分くらいしか聞いてなかったから…。
どうかな…。」
そう言うとジュンサンは席について数学の本を開いてしまった。
話に乗ってこないジュンサンに、チェリンは諦めてみんなの輪に戻っていくしかない。


「さあ、皆さん意見はまとまりましたか?
では、正解をお教えしましよう。
答えは二番の『初めて』でした。

初めて何かをした時の、初めて何かに出会った時の、そんな戸惑いやためらいやときめきがよく表現されている作品だと思いますが、いかがでしょうか。
そういう意味で言えば、どの答えも正解かもしれませんね。」

「それではここで詩の朗読をお送りします。
題名は今日の曲にちなんで『初めて』です。」


もう一歩
そのもう一歩を踏み出せば
違う世界が見えてくる
きっときっと見えてくる

今日は昨日の続きだけれど
明日は今日の続きだけれど
今、このときを輝かせる
そうすることもできるんだ

初めて出会うその風景
どんな出会いが待っている?
本当にうまくいくかしら?

それはやってみなければわからない
うまくいかないかもしれない
失敗したらどうしよう
そんな弱気が足を留まらせる

『初めて』には
ほんの少しの勇気があればいい

そうすれば昨日と違う私になれる
心ときめく未来をつかめる



これで今日の放送を終わります。
担当はチョン・ユジン、コン・ジンスクでした。
では、またあした。」



「チョン・ユジン!」
「はい!」
放課後、廊下でカガメルに呼び止められたユジンはドキッとした。
〈なんか怒られることしたっけ?昨日の掃除がまずかったのかしら?〉

「いやぁ、今日の放送はなかなかよかった。格調高くてな。
あの詩は自作か?」
「あ、はい。下手な詩で申し訳ありません。」
「いや、上手下手じゃないんだ。よかったぞ。
詩は文化だからな。
文化は継承していかなくてはいけない。
有名な作品を朗読するのもいいが、これからは自分達で作った詩も発表していくといい。
部長のキム・サンヒョクにも言っておこう。」

上機嫌で立ち去るカガメルの背中を見ながら、ユジンは「ふぅ~」とため息をついた。
〈あぁ、びっくりした。また何か怒られるのかと思った。
カガメルは詩が好きなのね。
どおりで詩の朗読の練習をよくさせられる筈だわ。
…今日の詩、ジュンサン聞いてくれたかしら。〉

ユジンは、何かにためらっているような焼却場でのジュンサンを思い出していた。


ためらいて 悩む君が背 押さんとす
        吾のみが知る 笑顔見んとて

もしかして それであなたが 傷ついて
         血を流したら 私も泣こう

憎くても 会えるのならば いいじゃない
        私は父に もう会えないの

その命 与えてくれた 人ならば
       憎まずにどうか 愛して欲しい