回り舞台
春の日を浴びて、お婆は子供たちと縄跳びに興じていた。
「これが修業なんですか」
女の声に振り向くと、手足を縛られた女がジャリ石の上に正座している。背筋を伸ばし痛みに耐えていた。
女の視線を辿ると、手足に重い鉛の固まりをつけられた十歳位の男の子が、這いずっていた。口を塞がれ母を呼ぶ声も出ない。眉をしかめ、必死に前に進もうとしている。
「あの子が何処まで進めたらいいのですか」
女が叫んだ。
女の傍らでどうする事も出来ずに見ていたお婆は、太股に小さな痛みを感じていた。
男の子が、立ち木に縋り立ち上がった。ささくれた木の皮が手に刺さり、赤く糸を引いて流れた。
「手助けは駄目ですか」
たまりかねた女の声が震えた。
ふらふらと立ち続けていた男の子が、鉛の重みに耐えかねて、もんどりうって倒れた。
「しっかりおしっ」
女がたまりかねて転がると、男の子の方に回転していった。
お婆は、後を追おうとしたが、自分の太股に、着物の上から刺さっている大きなトゲに気づいた。トゲは、少しずつ皮膚に食い込み、痛みを増していった「おかぁさん」と男の子が叫んだような気がした。女は転がりながらお婆に助けを乞うた。
だが、お婆の太股に食い込むトゲを見ると、「あなたも同じですか」と言った。
「おばばぁ、早く跳んでよう」
汗を飛ばしながら子供たちが呼んでいる。
太股のトゲの痛みも忘れてお婆は跳んだ。
陽が山に隠れるまで跳んだ。