
今年米が届いた。私が喫茶店を経営していた頃から購入していた農家の0氏が、半俵(はんたら)を二袋に分けて、振り分けのように揺らしながら届けてくれた。
農家の0氏は我が店の常連さんだった。いつも職場の大先輩のT氏と一緒に来てカウンターを陣取っていた。二人は某会社の機械の設計士。掛け合い漫才のように、会話が弾んでいた。T氏家も0氏家の米を買っていた。
0氏は、T氏から購入依頼を受けると、大先輩の年齢を考えて半俵を二袋に分けて届けていた。T氏は、その二つを両手に提げて、「まぁだまだ、大丈夫なんだから」と車まで運んで見せた。T氏は既に亡くなっている。今、あの頃のT氏と同じ年ごろとなった0氏。あの頃のT氏と同じように体を左右に揺らしながら歩く。それを見ている私も、顔の皺が増えた。
「一袋ずつ運んでくれれば」と、毎回言うが、0氏はその度に、「運動のためだから」と言う。老いた身体をまだ鍛えたいらしい。我が家の玄関内まで運んでくれると、たまには、あの頃の思い出話もあったりするが、5分から10分程度の会話を楽しんで帰って行った。
0氏家の米には、地域の名前が付いている。T氏は0氏の苗字を付けて呼んでいた。私も同様に呼んでいる。
早速新米を頂くことに。今年米の白米飯は相変わらずの香しさで、真っ白で艶々。ふっくらと焚き上げる水加減も最高の出来栄え。我が家の嫁様の料理が光る食卓になった。
0氏家の所有田んぼは一町五反ほど。息子さん二人が居るので、この先も購入できるだろうと思ってはいるが、0氏の少し前屈みになった姿を見ると、どうぞいつまでも元気で居てねと言わずにはいられない。そして、自分も元気で居たいものだと思う。
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