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「永遠の0」読了。

2012-05-17 | Weblog
百田尚樹さんの「永遠の0(ゼロ)」
全く前知識なしに読ませていただいた。

人生の目的を失った青年が
特攻で死んだ「実の祖父=宮部久蔵」の人物像に迫ろうとし、

数々の関係者による様々な角度からの証言で、
徐々にひとりの男の姿が浮かび上がってくる。

~「臆病なエースパイロット」~

軍人らしくない優しげな彼は
しかし、誰よりも譲れない想いを持っていた。
「生きて帰れ、死ぬなよ」

実在の人物も登場する戦記風でもあり、
すべての証言者の人間ドラマでもある。

彼らは
彼ら自身の当時の戦闘や軍隊暮らしについて語っているのだが
人生の一時期に出会うだけの宮部が、
ずしりと存在感を増していく。

これは、僕だけなのかどうかわからないが
僕が感情移入したのは、
主人公である宮部の孫にではなく、宮部にでもなく
それぞれの証言者に、であった。

戦争はまっぴらごめんだが
自分も宮部に会いたいと思ってしまうのだ。

証言者の中でも
特に、彼を心底「憎んでいる」と語る元ヤクザの男には
心をぐっと掴まれた。

彼は「特攻で死んだ」と
最初のほうで語られているにも関わらず

読んでいるうちに
「宮部は、もしかしたら本当は生きているのではないか、  
~生きていてくれ!」とも思えてくる。

・・・そして、
最終章では。

胸を何度も衝かれるような
驚愕と感動が待っている。

バラバラに思えた、これまでの様々な証言が、
堰を切ったようにつながっていく。

それぞれの証言の中で輝いていた宮部のエピソードが
胸いっぱいに星座を形作る。


彼はなぜ、
どんな思いで特攻に飛び立ったのか
すべての答えがそこにある。


これ以上は、
ここに書いてはいけないと思う。


戦争を知らない世代が抱きがちな「疑問」についても語られる。

僕が子供のころに比べ、戦争の語り部が少なくなった今
もっともっと多くのかたに読んでほしい作品だと思う。